ナタリーPowerPush - Violent is Savanna

ViS×片寄明人がたっぷり語る ロック&ポップでひねくれたアルバムの魅力

ちょっとぐらいいびつなところがあってもいい

──アルバムにはいろんなタイプの曲が収録されていますが、曲順はどうやって決めたんですか?

星花 最初はどうしようか悩んだけど、最終的には「これしかない!」って流れになって。みんなでファミレスでミーティングしたときに、それぞれが考えた曲順を照らし合わせたら全員ほぼ一緒だったんですよ。で、「これが納得いかない」「あっちのほうがいいね」って少しだけ並び替えて、1時間もしないうち決定しました。

川合 非常にピースフルな感じで決まりましたね。

小野 最初からこうなることが決まってたかのように、すごく自然な曲順になりました。

──確かにすごく聴きやすいですし、アルバムが1周終わるとまた最初から聴きたくなる流れというか。

片寄 マスタリングも良かったのかもね。今回はグレッグ・カルビに頼んだんですよ。

──すごい大御所のエンジニアですよね。

インタビュー風景

片寄 僕以外に島田さんやショーキチさんがプロデュースした曲もあるし、それぞれレコーディングした時期も違うし、自然な流れを出すのは難しかったけど、本当に違和感なく揃えてくれたなって思います。このジャンルの女性ボーカルバンドって音が軽いイメージが僕にはあったんだけど、このアルバムは厚みがあってまったく軽くない。音が固まりとなってスピーカーから飛び出す感じがうまく表現できたのは、とても良かったと思います。

──それと、全体的にライブ感の強い仕上がりだと思います。そのへんは意識したんでしょうか。

片寄 この御時世、1曲通して演奏しないで細切れにテイクをつないでる人たちも多いけど、僕はバンドに関してはそういうスタイルが好きじゃなくて非常にオーソドックスなやり方で。Pro Toolsを使ってはいるけど、Violent is Savannaは全員でレコーディングスタジオに入って「せーの!」で合わせて録るスタイルだから、ライブ感がうまく出てるのかもしれないですね。僕は音楽っていうのは、ただ演奏を揃えりゃいいってもんじゃない、ちょっとぐらいいびつなところがあってもいいと思ってるので、そこはいい形で表現できたんじゃないかな。

「星花ちゃんの感覚っていいとこ突くんだよね」

──歌詞にもこの1年半のいろんな思いが詰まってると思います。星花さん、改めて振り返ってみるとどうですか?

星花 まだ北海道にいた頃は音楽の知識もあまりないし、楽器も歌も上手じゃなくて。自分の感覚や感情を信じて続けてきたんですけど、最初に「OH LOVE YOU」を録音した頃に一度、その自信がなくなっちゃったんです。みんなのポテンシャルが高くてついていけなくて、どうしたらいいのかわからなくなった。でも、この1年半の間に片寄さんから「星花ちゃんの感覚っていいとこ突くんだよね」って言ってもらえたことで「あ、うちの感覚ってまだ信用できるんだっ」て思うようになって、それからはレコーディングをするのが楽しくなりましたね。

片寄 彼女は本当に感性が良いんですよ。僕を含め男衆がどっちがいいかって悩んだときに、星花ちゃんは直感でスパッと決める。それが後々冷静になってみると正しいことが多くて、今回のレコーディングで何度も助けられましたね。

星花 本当にそう言ってもらってなかったら、たぶん私、塞ぎこんだままでしたよ。小娘だからか、うちの意見を真剣に捉えてくれる人ってなかなかいなくて。でも、片寄さんはきちんと「そういうふうに感じるんだね」って読み取ってくれて、ちゃんと信頼してくれたことがすごくうれしかった。そこから自分でも心を開けるようになったし、この1年半で片寄さんに私のことを知ってもらえたと思います。

レコーディング後半は歌詞を書くのが楽しかった

──片寄さんは、星花さんと最初に会ったときの印象って覚えてます?

片寄 最初は殻が硬いタイプの子だなと思いましたね。かと言って人見知りではないし人当たりもいいんだけど、心の奥底に閉じた部分を持っている子だなって。今でも覚えてるんだけど、「私には歌いたいことはありません」ってキッパリ言ったんだよね、彼女。そんなことを言うボーカリストに初めて会ったからびっくりして(笑)。でもね、そう言ってるこの人の奥には歌いたいことがちゃんとあって、それを何らかの理由で隠しているのが、僕にはなんとなくわかったんですよ。それをなんとか引き出せないかなと、事あるごとにいろいろディスカッションしていったら、自分の思っていることを曲の中でどんどん表現できるようになって。それに伴って歌も詞もどんどん良くなっていった印象があります。だから、最初にレコーディングした「OH LOVE YOU」から最後の「とんだLOVE SONG」まで、見る人が見れば進化の過程がわかると思いますよ。

インタビュー風景

星花 片寄さんに「you and me」(1stシングル「OH LOVE YOU」収録曲)の歌詞を最初に見せたとき、「星花ちゃんてさ、自分の思ってることを遠回しに書くよね」って言われたんですね。確かにそうだなと思ってこれまでに書いた歌詞を見直したら、自分は理解できるけど第三者が見ると伝わりにくいストーリーの流れや言葉のチョイスがすごく多くて。それがきっかけになって、「you and me」の歌詞は最終的にすごく素直でわかりやすいものにすることができたと思うんです。自分の内側を歌ったり書いたりするのってこういうことなんだなって、そこで初めてわかったんですよ。それ以来、歌詞を書くことがすごく楽しくなったし、迷いがほとんどなくなった。今回のアルバムの歌詞はすんなり書けたし、焦点を合わせやすかったです。

──それ以前は歌詞を書くのが大変だったんですか?

星花 そうですね。以前も楽しくはやってたんですけど、頭の中でうまく整理できなくて、一度書き上げた歌詞に改めて手を加えるのがすごく苦手で。特に「OH LOVE YOU」の頃は、歌入れギリギリまで書き直してました。

片寄 レコーディング後半は神がかったかのように、歌詞がポンポン出てきたもんね。

星花 だって、歌詞を書くのが本当に楽しかったですもん。

メジャー1stアルバム「SWING」 / 2011年4月6日発売 / cutting edge

  • CD+DVD盤 / 3200円(税込) / CTCR-14729/B / Amazon.co.jpへ
  • CD盤 / 3059円(税込) / CTCR-14730 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. OH LOVE YOU
  2. Like me.
  3. アワイロサクラチル
  4. 1408
  5. Showtime
  6. PARALLEL
  7. ランデヴー
  8. A.D.G.
  9. リフレインチューマー
  10. TOKYO
  11. とんだLove Song
DVD収録内容
  • 「OH LOVE YOU」ビデオクリップ
  • 「アワイロサクラチル」ビデオクリップ
  • 「OH LOVE YOU」メイキング映像
  • 「アワイロサクラチル」メイキング映像
1st Full Album「SWING」レコ発ツアー 「come out "SWING" ing tour」
  • 2011年4月19日(火)
    北海道 札幌cubegarden
  • 2011年4月27日(水)
    福岡県 福岡DRUM Be-1
  • 2011年4月28日(木)
    熊本県 熊本DRUM Be-9 V2
  • 2011年5月4日(水・祝)
    京都府 MOJO
  • 2011年5月5日(木・祝)
    大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
  • 2011年5月12日(木)
    岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2011年5月13日(金)
    広島県 広島Cave-Be
  • 2011年5月15日(日)
    愛知県 名古屋E.L.L
  • 2011年5月17日(火)
    宮城県 会場未定
  • 2011年5月18日(水)
    福島県 郡山CLUB #9
  • 2011年5月24日(火)
    東京都 原宿アストロホール
Violent is Savanna(ばいおれんといずさばんな)

星花(Vo)、小野貴博(G)、川合栄次(B)、工藤竜之介(Dr)からなる札幌出身の4ピースバンド。2004年に星花と川合を中心に結成され、同年「TEENS' MUSIC FESTIVAL 2004」北海道大会にて優勝し、渋谷公会堂(現・渋谷C.C.Lemonホール)で行われた全国大会に出場を果たす。2005年に工藤が加入し現メンバーとなり、以後地元・札幌を中心に精力的なライブ活動を続ける。2010年5月に北海道TSUTAYA限定1曲入りシングル「OH LOVE YOU」をリリース。オリコンインディーズチャートで全国2位を獲得したほか、北海道地区別オリコンウィークリーチャートでは4位を記録。同年10月に、同曲を含むシングル「OH LOVE YOU」でメジャーデビューを果たした。星花のキュートな歌声と独特の詞世界、絶妙なバンドアンサンブルが魅力。2011年1月には、iTunesが今年もっともブレイクが期待できる新人アーティスト10組を選出する「Japan Sound of 2011」に選ばれるなど、2011年飛躍が期待されるロックバンドである。