ナタリー PowerPush - 竹達彩奈
幼少期から歌手デビューまで あやち伝説徹底検証
アニメ「けいおん!」の“あずにゃん”こと中野梓役、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」のヒロイン高坂桐乃役など数々の人気アニメで主要キャラを務める声優の竹達彩奈が、沖井礼二の作詞・作曲・編曲(小林俊太郎とのNEW OLD STOCK名義)によるシングル「Sinfonia! Sinfonia!!!」で2012年4月にソロデビューを果たした。そして9月12日には早くも2ndシングル「♪の国のアリス」が登場。今作では末光篤が作詞・作曲・編曲を手がけ、鈴木俊介(G)、ミト(B / クラムボン)、柏倉隆史(Dr / toe)というそうそうたる布陣がバックを務めている。
ナタリーでは“声優アーティスト”竹達彩奈の素顔に迫るべく、これまでのキャリアに迫るロングインタビューを敢行。幼少期のエピソードから、声優として生きることを決意した中学生時代、そして歌手 / アーティストという新たな道を歩み始めた現在に至るまでのヒストリーをたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 佐藤類
“ナンパ”な子供時代
──子供の頃はどんな性格でしたか? 活発に駆け回る子だったか、家でおとなしくしている子だったか、どちらかと言うと……。
うーん、おとなしいほうだったと思います。
──では、覚えている中で一番古い記憶はどんなものですか? 周りの風景とか、自分の行動とか。
なんだろう。最初に住んでたおうちの階段の……絨毯が緑だったこと(笑)。あと寝室の天井に穴が空いてたこと。
──穴?
あ、天井が抜けちゃってるとかじゃなくて(笑)、一面チャッチャッチャッって穴が空いてる、そういうデザインの天井だったんです。あとは家の周りをアンパンマンの絵が描いてある子供用の車に乗って一生懸命ペダルを漕いでたこととかですかねー。自分で「ブーッ、ブーッ」って言いながら。4歳ぐらいのときにマンションに引っ越したんですけど……あ、その引っ越しのときのことはすごく覚えてます! 部屋の下見に行ったとき、おじさんがからかって私をゲタ箱の上に置いてっちゃったんですよ。ガチで置いてけぼりにされちゃって(笑)。
──あはははは(笑)。誰もいないマンションの玄関に(笑)。
怖くなって「ぶわああああ」って泣いてたら、すぐにおじさんが助けにきてくれましたけど。
──外を出歩いた記憶よりも、やっぱり家の半径数mの記憶が多い?
そうですね。幼稚園の頃はまだ外よりも園内で遊んでることが多かったです。外を駆け回る楽しさを知ったのは小学生になってからかなあ。その頃は人見知りも全然なかったから、近所では誰に対しても自分から「遊ぼうよ」ってナンパしてました。
──ナンパして(笑)。
はい。いや、男の子はナンパしなかったですけど(笑)。マンションにも同い年ぐらいの子がいっぱいいたので「ねえ、名前なんて言うの?」「おままごとしよう!」って自分から積極的に声をかけてましたね。「私あやなって言うんだけどさ、何号室に住んでんの?」みたいな。それでその子のお家にリカちゃん人形を持っていって遊んだり。マンション中の女の子が全員友達でしたから。
──めちゃめちゃ積極的な(笑)。確か末っ子なんですよね?
はい。上にお兄ちゃんが2人います。
──だからいわゆる末っ子体質というか、常に誰かの後ろに付いていくようなタイプだったんじゃないかと思ってました。でも今「その頃は人見知りじゃなかった」とおっしゃいましたけど、後で人見知りになっちゃうんですか?
なっちゃったんですよねー。
何か始めないと気が済まなかった
──どのタイミングで変わったんですか?
中学校に上がってからですね。小学生の頃はどこのクラスにも友達がいるぐらい誰とでも普通にしゃべれたし、「名前なんて言うの? 遊ぼうよ。今鬼ごっこしてるんだけど人数足りなくてさ」みたいな。
──そうやって話しかけてくれる存在は、引っ込み思案な子にとってはありがたいですよね。
ちっちゃい頃にひとりでおとなしく遊んでたのが寂しかったのか、小学校に上がってからググンと積極的になって。幼稚園まではおうちで「ひとりラピュタごっこ」をしたりとか、ひとりの世界にいることが多かったので。
──今「ラピュタ」の名前が出てきましたが、竹達さんはガチのアニメ好き、ゲーム好きとしても知られていますよね。そのルーツが「天空の城ラピュタ」ですか?
はい。最初に観たアニメが多分「ラピュタ」ですね。おうちにあったビデオテープを毎日のようにすり切れるまで観てました。それでパズーに一目惚れして(笑)、私はシータになりたいって思ったんです。「ひとりラピュタごっこ」ではパズーとシータのセリフを覚えてひとりで演じるんですよ。紫色の天然石を飛行石に見立てて、首にガムテープとかでペタッとくっつけて……うわあ恥ずかしい!!
──あははは(笑)。でもそれって完全に声優としてのルーツというか、原体験ですよね。
そうですねー。おままごととか「○○ごっこ」って、みんな小学校3年生ぐらいになると卒業し始めるんですけど、私は結構最後までやりたがってて(笑)。結局ひとりも一緒にやってくれる子がいなくなったので、あきらめてドッジボールとかしてました。みんなが「やらない」って言わなかったらずーっとやってましたね、きっと。
──小学校高学年~中学生は「自我の芽生え」が訪れるから、性格的に急変することってよくありますよね。人見知りが出てきたのはやっぱり自我の芽生えから?
小学生の頃まではクラス全体が仲良かったし、「あの子好き」とか「嫌い」みたいな感情もなかったんですよ。でも中学になると「自分はどう見られてるのかな」って気になるようになって、人と接するのが怖くなっちゃったんですよ。
──中学だと特に女子はグループ派閥とかできてくるから、人間関係がぐっと難しくなってきますよね。
「ひとりでいるのはダメなこと」みたいな雰囲気に、どうしても慣れなかったというか。今思い出すと恥ずかしい。その頃にアニメとかゲームに集中的にのめり込んで。子供の頃から好きでしたけど、オタク趣味が芽生えたのは中学生のときですね。そこで声優さんというお仕事を初めて意識したんです。それですぐに雑誌やネットとかで声優について調べているうちに、知れば知るほど興味を持っちゃって「よし、声優養成所に入ろう」みたいな。まさに中学2年生の頃ですけど、その頃が一番人生に対して不安が大きくて、何か始めないと気が済まなかったんです。
──実際すぐに行動に移されてますよね。
はい。それでお母さんに「養成所に行きたい!」ってお願いしたら「……は?」って。突然すぎて(笑)。「あんたまだ中学生でしょ」って言われたんですけど「私が入りたいところは中学生でも小学生でも入ってるから」って説得しました。「養成所は学費が高い」ってイメージがあったんですけど、意外と普通の習い事と変わんないぐらいだったので、お母さんも許してくれて。
──中学生の段階で仕事や将来について考えて、即行動に移すなんて。若いうちから社会に揉まれることを選択したんですね(笑)。
学校の授業やクラスメイトとの「あの子好き」「嫌い」みたいなやりとりなんて意味がないと思ってたんですよ。「私に必要なものはこれじゃない!」みたいな(笑)。今になって思えば、学校での暮らしで人との距離感とかを学んで、小さい失敗を繰り返しながら学んでいくのが普通なんですけどね。だから今「学校が嫌いなんだよね」っていう子たちに対して「いやいや、大事だよ?」って伝えてます(笑)。
──身をもって説得してる(笑)。
はい。あははははは(笑)。
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2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」 / 2012年9月12日発売 / PONY CANYON
CD収録曲
- ♪の国のアリス
- CANDY LOVE
- ♪の国のアリス(instrumental)
- CANDY LOVE(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- ♪の国のアリス(Music Video)
竹達彩奈(たけたつあやな)
埼玉県出身の声優アーティスト。2009年放送のテレビアニメ「けいおん!」中野梓役で大きな注目を集める。「けいおん!」から派生したユニット「放課後ティータイム」では数々のヒット曲を生み、2009年12月には神奈川・横浜アリーナ、2011年2月には埼玉・さいたまスーパーアリーナにてコンサートを行った。2012年4月には初の個人名義によるシングル「Sinfonia! Sinfonia!!!」でソロアーティストとしてデビュー。9月12日には2ndシングル「♪(おんぷ)の国のアリス」をリリースする。