音楽ナタリー PowerPush - SuG

武瑠が掲げる原点回帰の「パンクス '14」

メンバー全員均等にという現状に窮屈さを感じる

武瑠(Vo)

──SuGが「Lollipop Kingdom」以降にやってることって「脱・それまでのSuG」であると同時に、「脱ヴィジュアル系」でもあったと思うんです。でもそういうアクション自体が、実はすごくヴィジュアル系的なものでもあるわけで。

ああ、それは超思いますね。変な話ですけど、自分が好きだった人たちってヴィジュアル系ってことに誇りを持たないでやってた人たちばかりなんですよ。夏にフランスで競演したDEAD ENDのMORRIEさんも言ってたんですけど、「昔はヴィジュアル系っていうのは差別的な言葉で、そう言われたくなくてがんばってたのに、今の後輩たちはヴィジュアル系ですって胸を張っていて、そこが不思議だなって感じる」って。それは自分たちも体感したからわかるんですけど、「俺たちヴィジュアル系です」と言えばシーンに支持されやすいし、周りが優しいんですよ。でも結局先輩たちで残っている人たちは誰だろうって思ったら、みんなヴィジュアル系って言われるのがイヤだと言いながら外に向けて戦いまくってた人たちだけで。俺はヴィジュアル系が好きなわけではなくて、あの先輩たちが好きなだけ。その結果としてSuGがヴィジュアル系って言われるんだったら、それはそれとして別にどうでもいいなって感じですね。

──なるほど。

そういう意味では、今のファンが考えるヴィジュアル系っていう小さい枠じゃなくて、もっと外側の人たちがイメージするヴィジュアル系シーンの代表みたいな、そういう後継者が出てこないとシーン自体が終わっちゃうんじゃないかと思っていて。

──それこそ武瑠くんがリスペクトするHYDEさんや清春さんのような?

うん。アイコンみたいな人が1人いて、シーンを作っていくような。あの、今のヴィジュアル系バンドってメンバー全員キャラが立っていて人気がないと無理みたいなことを言われていて。でも普通に考えたら、バンドやグループでボーカルや中心人物しか知らないなんてこと、よくあることだと思うんですよ。例えばアイドルだと、モー娘。を観て道重(さゆみ)さんしか知りませんとか。見方を変えると、ボーカルやフロントマンにバンドの顔が求められてるわけですよね。なのに民主主義的にメンバー全員均等にという現状に、俺は窮屈さを感じていて。そこをどんどんぶち壊して顔になっていかないとダメだなと思うんです。

これからバンドとファンが作っていくべき大きなテーマ

──過去に目を向けると、確かに時代を作ってきたバンドってメンバー個々のキャラは立っていたけど、中でもボーカリストの個性は突出していましたよね。そのぶん、露出量もほかのメンバーより多かったですし。

俺たちはメンバー全員そこは理解しているんですけど、露出量で言ったら俺はほかのメンバーよりも多い。それに対して「1人だけ出過ぎ」って不満をぶつけてくるファンも実際に多くて……でもそれで遠慮するような奴だったら、ボーカルなんてやめたほうがいい。だから今、俺が本当に伝えたいのは……俺以外のメンバーのファンでいることが一番うれしいんですけど、Chiyuくんが好き、まーたん(masato)が好きっていう人は、俺に出過ぎって言うんじゃなくて、その1回のメール、1回のツイートをほかの媒体に向けて「この人がカッコいい」とぶつけたほうがいいんじゃないかと思ってます。

武瑠(Vo)

──その1通の労力を前向きなことに使ってほしいと。

そう。誰々もすごいんですっていうプラスの熱量に変えてほしいと。俺のことが嫌いだったらそれはそれでいいんですけど、じゃなくてメンバーのことを愛してくれてるんだったらもっと応援してほしい。そこで愚痴っても何も変わらないよと。それはめっちゃ思いますね。これが、これからバンドとファンが作っていくべき大きなテーマだと思うんですよ。そういう関係をファンと一緒に築けたら、SuGは次のアルバムで大きく確変するんじゃないかなって思います。顔ファンがどうだって言ってる人もいるけど、もうどうでもいいんですよ。顔が好きですってファンがイヤだったら、ライブ以外の露出をやめればいいだけだし(笑)。だって俺、HYDEさんと清春さんの顔、好きですもん。カッコいいから、普通に同じ服を着たいと思うわけだし。何も悪いことじゃないですよ、そんなの。

──カッコいいからみんな憧れるわけであって。

フロントマンこそすべてがカッコよくなければいけないわけで。でも「私はもっといろんなところまで知ってるのに、顔だけで好きになったって言われるのがイヤだ」っていうファン心理もわかりますよ。だったら私はこういうのを観ていてこれを知っていて、カッコいいところがたくさんあるんだよってことを、周りに教えてあげてほしいですよね。

浮気者も全部SuGの次のアルバムのため

──それにしても、確かに武瑠くんはここ1、2年、1人でいろんなメディアに出る機会が増えましたよね。

そうですね。特に最近はかなり増えてます。中には「今これやるの? スケジュール的にしんどいなあ」ってときもあるんですけど、絶対にSuGに返ってくるものがあると信じてやってます。今年は「種蒔きのために、やれることはすべて挑戦する」というテーマを設けていて。一部のファンの中には俺が浮気者をやることがイヤだと思ってる人もいると思うんですけど、浮気者って名前でユニットを動かしたのも全部SuGの次のアルバムのためなんです。普通にソロをやるんだったら武瑠名義か、何か別のユニット名でやればいいし。浮気者って言葉にすべてが集約されてるんです、SuGがいるから浮気者なんだって。

──その浮気者としても、SuGの活動と並行して新曲を発表しましたが(参照:SuG武瑠、次の“浮気相手”はTeddyLoid)。

そうですね(笑)。実は「HELLYEAH」も完全にSuGのアルバムのために作った曲なんです。

武瑠(Vo)

──あ、そうだったんですね。ちょっと前に武瑠くんのブログに、この曲に関する小説の導入を掲載していましたが(参照:WE CRY OUT HELLYEAH|武瑠(SuG)オフィシャルブログ「MOViE」Powered by Ameba)。

あれは「HELLYEAH」と「CRY OUT」を掛け合わせた話で。とにかく復活から何もかも、すべてが次のアルバムに照準を合わせてるんですよ。ぶっちゃけアルバムを出しちゃったら、そのあとどうなるんだろうって思いますけど(笑)。まあアップデートしたあとにやりたいことを探せばいいか、もう。とりあえずアルバムが1つのゴールであって、マラソンに例えたらキツいけどそこまでは走り切ろうって気持ちで今はやってます。

──マラソンにしては序盤からめちゃくちゃなペースでしたが(笑)。

ペース配分考えずにめちゃくちゃでしたね(笑)。でも今、マラソンで言うと6、7割走って、息が上がってきてるところなのかな。フラフラし始めるタイミングですけど、来年のアルバム発売というゴールに向けて追い込みをかけていきたいと思います。

ニューシングル「CRY OUT」2014年11月19日発売 / ポニーキャニオン
初回限定盤A[CD+DVD] 1890円 / PCCA-04116
初回限定盤B[CD+DVD] 1890円 / PCCA-04117
通常盤[CD] 1000円 / PCCA-70415
初回限定盤A CD収録曲
  1. CRY OUT
  2. 39GalaxyZ -Rebirth version-
初回限定盤A DVD収録内容
  1. CRY OUT -Music Video-
  2. CRY OUT -Music Video Shooting OFFSHOT-
初回限定盤B CD収録曲
  1. CRY OUT
  2. heavy+electro+dance+punk -Rebirth version-
初回限定盤B DVD収録内容
  1. CRY OUT -Music Video Band Only Ver.-
  2. LIVE in Thailand
通常盤 CD収録曲
  1. CRY OUT
  2. Nevermind
ライブ情報
SuGフェス-2014 冬-
  • 2014年11月21日(金)東京都 渋谷CLUB QUATTRO
    <出演者>
    SuG / バンドじゃないもん! / 0.8秒と衝撃。 / jealkb
SuG TOUR 2014「WE CRY OUT HELLYEAH」
  • 2014年12月19日(金)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
  • 2014年12月20日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
  • 2014年12月22日(月)東京都 LIQUIDROOM
SuG(サグ)

2006年に結成された5人組ロックバンド。現在のメンバーは武瑠(Vo)、masato(G)、yuji(G)、Chiyu(B)、shinpei(Dr)。バンド名はスラング「Thug」に由来し、「周りの意見を気にせずに自分たちの思ったとおりに進む人たち」「悪友」という意味を持つ。結成当初より「HEAVY POSITIVE ROCK」というコンセプトを掲げ、前向きなメッセージを乗せたキャッチーな楽曲で人気を博す。2010年1月、シングル「gr8 story」でメジャーデビュー。メンバー全員が作曲を行い、作詞とそれに基づいた世界観、PV、衣装などのアートワーク全般を武瑠が手がける。また、武瑠は2012年1月には初の著書「TRiP」も刊行し話題を集めた。2012年10月に突然の活動休止を発表し、同年12月29日の国立代々木競技場第二体育館でのライブをもってバンド活動を休止。その後はメンバーそれぞれ独自の音楽活動を続けていたが2013年9月20日、東京・原宿でサプライズライブを行い活動再開を宣言。同年12月に国立代々木競技場第二体育館で復活ライブを行った。2014年に入ると2月に「MISSING」、7月に「B.A.B.Y.」とシングルを立て続けに発表。同年8月には多ジャンルにわたるアーティストをゲストに迎えた主催イベント「渋谷 SuG Fes 2014 夏」を3日間実施した。そして11月、復活後3作目のシングルとなる「CRY OUT」をリリース。