RHYMESTERがニューアルバム「ダンサブル」をリリースした。
「Bitter Sweet & Beatiful」から約2年ぶりとなるフルアルバムは、オールドスクールのヒップホップのフレイバーが漂う躍動感のある1作。さらに前作から引き継がれた「美しく生きる」というメッセージも込められた内容となった。今回、音楽ナタリーでは待望のアルバムを作り上げた3人に話を聞いた。
取材・文 / 宮崎敬太 撮影 / 須田卓馬
今回は「楽しく生きようぜ」って感じ
──新作はタイトル通り、まさにダンサブルな内容ですね。
Mummy-D 前作「Bitter Sweet & Beautiful」を作ったあと、「ちょっと難しいアルバムを作っちゃったな」という思いがあったのね。だってこういう取材の場でも、言いたいことを3分の1くらいしか言語化できてなかったから。だから次は明快なアルバムにしたかったんだよ。肉体に訴えかけるような作品と言うか。去年の1月くらいにニューアルバム制作のキックオフミーティングをして、その話をしたら宇多さんからダンスというキーワードが出てきた。それで俺も“フィジカル”より、“ダンス”でまとめたほうがいいかもって思ったんだ。で、トラックをオファーする人たちにも「コンセプトはダンス」みたいなことを大体伝えた。
宇多丸 それで最初にできたのが、去年の主催フェス「人間交差点」に合わせて作った「スタイル・ウォーズ」だったのね。Dが“広義のダンス”とトラックメーカーのワタさん(DJ WATARAI)にテーマを伝えたら、すごく抜けのいいノリノリのヒップホップソングができてきた。しかもその次にできたのが「Back & Forth」だったから、俺たちも「あれ……次のアルバムのテーマはオールドスクールなのか?」とか思い始めちゃって(笑)。
Mummy-D 実は途中まではどうなるかわかんなかったよ。でも作っていくうちにやっぱり「ダンスでまとめよう」と言う話になった。
宇多丸 ちなみにタイトルについて言うと、「ダンサブル」っていうのは前作で言わんとしてたことを、陽性にノリノリで表現したんだよね。楽しく生きる術について歌ってると言うか。
──リリックにある「梯子酒」ってなんだろうと思ってたんですが、その説明で納得しました。
DJ JIN はははは(笑)。「梯子酒」は「心も踊る」ってことだよね。
宇多丸 そうそう。今回は「楽しく生きようぜ」って感じ。
Mummy-D メッセージを込めるにしても、軽やかに、アゲアゲで、フィジカルな方向にいきたい気分だったんだよね。そこが大事だった。
まだ肉体とマイクだけで追求できる技術がある
──トラックメーカーはどのように選んでいったんですか?
宇多丸 ワタさん(DJ WATARAI)や高樹さん(堀込高樹)、mabanuaはさっき言ってた「“広義のダンス”というテーマで作ってほしい」と声をかけてるけど、あとは広くトラックを募った中からいいものを都度都度採用していった感じ。
Mummy-D クレちゃん(KREVA)は「全然ダンサブルな曲がないじゃないですか!」って言ってたよね(笑)。
──確かに2017年に「ダンサブル」というタイトルのアルバムを作るなら、EDMやトラップのビートがあってもおかしくはないですよね。
宇多丸 ……実はEDMな方向性を探った瞬間もあるんだよ。
Mummy-D EDMというかトラップだね。でも、今回もらったビートは俺らに合わなかった(笑)。ヴァースは2パターンくらい作って、サビも死ぬほどいろんなのを試してみたんだけどね。トラップを排除しようってことじゃなかったんだよ。歌ってて楽しいし。ただダルい感じのラップをする気分ではなかった。
宇多丸 今回は“フィジカル”というテーマがあったからね。ラップという歌唱法のフィジカルな可能性をもっとも追求してたのはオールドスクール期で、掛け合いとか、コール&レスポンスとか、肉体とマイクでできることを追求してた。俺たちはその部分にまだまだやれることがあると思ったんだよ。例えば、「Back & Forth」はDJが2枚使いのスキルをアピールするように、2本のマイクでできることっていう技術的なアイデアから生まれた曲だし。
DJ JIN ラップの肉体性をより強く感じられるように、実は今回は王道のヒップホップのビートよりけっこう速い曲が多い。「ゆれろ」とかもテンポとしては遅いんだけど、実はスピードを感じるような作りになってる。
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「ゲットダウン」の影響は猛烈に強い
- RHYMESTER「ダンサブル」
- 2017年9月6日発売 / starplayers Records
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初回限定盤A [CD+Blu-ray]
4104円 / VIZL-1218 -
初回限定盤B [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1219 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64825
- CD収録曲
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- スタイル・ウォーズ [Produced by DJ WATARAI]
- Future Is Born feat. mabanua [Produced by mabanua]
- Back & Forth [Produced by ALI-KICK]
- 梯子酒 [Produced by SONPUB]
- Don't Worry Be Happy [Produced by DJ JIN]
- ゆれろ [Produced by LIBRO]
- 爆発的 feat. サイプレス上野 & HUNGER (GAGLE) [Produced by DJ JIN]
- Diamonds feat. KIRINJI [Produced by 堀込高樹(KIRINJI)]
- カミング・スーン [Produced by SHIMI from BUZZER BEATS & Yota Kobayashi(D.O.C.)]
- マイクの細道 [Produced by BACHLOGIC]
- 初回限定盤A付属Blu-ray、初回限定盤B付属DVD収録内容
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- KING OF STAGE VOL. 12「Bitter, Sweet & Beautiful」Release Tour 2015 東京<小箱セット>追加公演
- 「人間交差点」Live Version(#nkfes 2017 All Cast Special Digest)
ライブ情報
- King Of Stage Vol.13 ダンサブル Release Tour 2017
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- 2017年10月5日(木)神奈川県 CLUB CITTA'(公開リハーサル・ゲネプロ公演)
- 2017年10月13日(金)福岡県 DRUM LOGOS
- 2017年10月20日(金)大阪府 なんばHatch
- 2017年10月22日(日)東京都 Zepp Tokyo
- 2017年10月27日(金)静岡県 LiveHouse 浜松 窓枠
- 2017年10月29日(日)愛知県 名古屋ReNY limited
- 2017年11月3日(金・祝)秋田県 Club SWINDLE
- 2017年11月5日(日)宮城県 space Zero
- 2017年11月10日(金)岡山県 YEBISU YA PRO
- 2017年11月12日(日)香川県 高松MONSTER
- 2017年11月19日(日)熊本県 熊本B.9 V2
- 2017年11月21日(火)鹿児島県 SR HALL
- 2017年11月23日(木・祝)沖縄県 桜坂セントラル
- 2017年11月28日(火)北海道 札幌PENNY LANE24
- 2017年12月3日(日)茨城県 VOICE
- 2017年12月10日(日)千葉県 千葉LOOK
- 2017年12月17日(日)福島県 郡山CLUB #9
- 2017年12月22日(金)群馬県 高崎clubFLEEZ
- 2017年12月24日(日)石川県 Kanazawa AZ
- RHYMESTER(ライムスター)
- 宇多丸、Mummy-D、DJ JINからなるヒップホップグループ。別名「キング・オブ・ステージ」。1989年に結成され、1993年にアルバム「俺に言わせりゃ」でインディーズデビューを果たす。メンバー交代を経て1994年にDJ JINが加入し、現在の編成に。1998年発表のシングル「B-BOYイズム」、翌1999年発表の3rdアルバム「リスペクト」のヒットで日本のヒップホップシーンを代表する存在となった。2001年からは活動の場をメジャーへと移し、2007年には日本武道館公演「KING OF STAGE Vol.7」を大成功させた。その後、約2年の活動休止期間を経て「マニフェスト」「POP LIFE」「ダーティーサイエンス」という3枚のアルバムを発表する。2014年12月にレコード会社をビクターエンタテインメントへ移し、主宰レーベル「starplayers Records」を設立。2015年5月には東京・お台場野外特設会場で初の主催フェスティバル「人間交差点」を開催し、7月に移籍後初のアルバム「Bitter, Sweet & Beautiful」を発表した。2017年6月にドラマ「SR サイタマノラッパー~マイクの細道~」のオープニングテーマとして書き下ろした「マイクの細道」をシングルを、9月に2年ぶりとなるアルバム「ダンサブル」をリリース。