ナタリー PowerPush - レキシ

レキシが歴史に名を刻む!“日本史ポップス”の集大成

SUPER BUTTER DOGの解散後、キーボーディストの池田貴史が本格始動させたソロプロジェクト、レキシ。もともと日本史に造詣の深い池田が、各時代の文化や偉人たちの物語を独自解釈し、ソウルやファンクをベースにしたダンスミュージックにそれを乗せることでまったく新しいポップミュージックを発明してしまった。音楽的なダイナミズムと爆笑必至の歌詞世界が、池田の優れたエンタテインメント精神によって有機的な融合を果たしたのだ。

2007年にリリースした1stアルバム「レキシ」は、リスナーのみならず多くのアーティストも魅了。そして、待望の2ndアルバム「レキツ」が本当にすごいことになっている。前作を絶賛し、自ら参加を申し出た超豪華客演陣が名を連ね、歌詞の底知れぬおかしみはより強力に、音楽的にはさらに多彩かつポップに。感動的かつどこまでも愉快な傑作がここに誕生した。日本に暮らす全音楽リスナー必聴!

取材・文/三宅正一 インタビュー撮影/中西求

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レキシネームをつける条件は「作品に参加する」

──アルバム最高です。爆笑しながら感動しました。

インタビュー風景

ああ、本望です!

──前作から音楽的にも、日本史解釈的にも(笑)、さらにパワーアップしていて。どの曲も最高にポップですよね。

そうですね。前作よりももっと音楽的にしようと思いましたね。足軽先生(いとうせいこう)と話しているときに「次のアルバムのテーマは愛なんじゃない?」っていう話も出たりして。より人間的に、人の感情を突き詰めた感じも出したいなと思いましたね。

──客演陣もよくぞこれだけのメンツが集まったなあと思うんですけど。レキシがアーティストたちの遊び場にもなっていますよね。

そうなんです! 前作を聴いて、ライブを観てくれたいろんなアーティストが「参加したい!」って言ってくれて。MC末裔(ANI/スチャダラパー)とMC四天王(Bose/スチャダラパー)なんかは最たる例で、ライブの打ち上げのときに申し出てくれて。うれしかったですね。俺、自分で初めて買った邦楽のCDが「スチャダラ大作戦」なんですよ。だから、俺にとっての「歴史上の人物」でもあるんですよね。基本的に年上のアーティストの方は「何面白そうなことやってんの?」とか「俺も歴史好きだから今度一緒にやってあげてもいいよ?」みたいな(笑)。でも、みんながワイワイ楽しんでくれるのはいいですね。それはレキシだけに限らず、僕の音楽制作のモットーでもあるので。あと、MC母上(Mummy-D/RHYMESTER)とマウス小僧JIROKICHI(堂島孝平)なんかは前作のときも参加してもらおうと思っていたんですけど、タイミングが合わなかったりして。ちなみに、最初にだいたいみんな「レキシネームが欲しい」って言うんです。

──そこから始まるんだ(笑)。

レキシネームをつけるひとつの条件として、何かしら作品に参加してもらわないと、ということで。ちょい先輩くらいだったら気軽に「じゃあ参加してください」って言えるんですけど、たまに大御所の人から「レキシネームくれ」って言われるのが一番困ります。気軽に「参加してください」とも言えないし(笑)。

レキシの言い出しっぺはシャカッチ

──池田さん自身の前作の手応えはどうだったんですか?

正直、ここまでいろんな人に喜んでもらえるとは思ってなかったんですけど(笑)。レキシが始まったのはもう10年以上前のことなんですね。当時から音源を作ったりはしていて、ライブもしてました。そのときからライブをやったら反響はあったんです。なので、ちゃんと作品を出したら面白いだろうなとは思っていたんですけど、最初から遊びの延長という感じもあったのでなかなか本格的に動き出すことはなくて。

──当時はSUPER BUTTER DOGを最優先にという意識もあっただろうし。

そうそう。1回バタードッグのライブのアンコールでレキシをやって、メンバーに封印されたことがあるんですよ。「逆にバタードッグがレキシの一部って思われるからやめろ」って(笑)。でも、それくらいインパクトがあったわけですね。実はね、レキシの言い出しっぺもシャカッチなんですよ。

──正体が謎の(笑)。

話の流れからいって、バレバレですけどね(笑)。「トラックに乗っけて日本史のことを歌おうよ」って言い出したのはシャカッチで。俺が横で歴史についてのうんちくを言ってるのがウザかったんでしょうね。そのはけ口を作ってくれたみたいな(笑)。

──そもそも、池田さんは幼少期から日本史に興味があったんですか?

インタビュー風景

そうですね、小学生のときから。最初は「学研まんが」でしたね。勉強というよりも、ひとつの物語として歴史を捉えて、登場人物たちに興味を抱いたのが大きかったですね。聖徳太子しかり、足利尊氏しかり。

──歴史に残る人物って自ずとキャラが濃いし。

そうそう、だからマンガの主人公のような感じで偉人たちを捉えていって。そのあとより歴史に深く興味を持つじゃないですか。で、マンガではない文字ばかりの日本史の本を親に買ってもらったんですけど、すぐ挫折しましたね(笑)。子供心には全然面白くなくて。高校生くらいになると字だけでも興味を持てるようになったんですけど。

ニューアルバム「レキツ」 / 2011年3月16日発売 / cutting edge / ※初回生産限定盤:手書きジャケット封入

  • [CD+DVD]3800円(税込) / CTCR-14718/B / Amazon.co.jpへ
  • [CD]2800円(税込) / CTCR-14719 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. そうだレキシーランド行こう feat. MC末裔・MC四天王
  2. きらきら武士 feat. Deyonná
  3. ペリーダンシング feat. シャカッチ
  4. どげんか遷都物語 feat. 織田信ナニ?
  5. ほととぎす feat. 聖徳ふとこ
  6. かくれキリシタンゴ ~Believe~ feat. MC母上
  7. レキシ ト ア・ソ・ボ
  8. 妹子なぅ feat. マウス小僧JIROKICHI
  9. 狩りから稲作へ feat. 足軽先生・東インド貿易会社マン
  10. 歴史と遊ぼう
レキツアー
~皆で遺跡を巡りたかった~
  • 2011年5月4日(水・祝)
    東京都 新代田FEVER
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2011年5月8日(日)
    大阪府 梅田Shangri-La
    OPEN 17:30 / START 18:00
  • 2011年5月14日(土)
    東京都 新代田FEVER
    OPEN 17:30 / START 18:00

チケット一般発売日:2011年4月2日(土)

レキシ

1974年2月15日生まれ、福井県鯖江市出身の男性アーティスト・池田貴史のソロプロジェクト。1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、ハイクオリティなプレイとエンタテインメント性あふれるパフォーマンスで人気を博す。2004年からは中村一義が結成したバンド、100sのメンバーとしても活躍。2007年にレキシとしての1stアルバム「レキシ」をリリース。豪華ゲスト陣とともに、日本史の登場人物や史実をポップミュージックに乗せて歌うスタイルで大いに注目を集めた。2011年3月、約4年ぶりのフルアルバム「レキツ」を発表。5月には初のワンマンライブを行う。