ナタリー PowerPush - PLAGUES
8年ぶり活動再開! 深沼&後藤が明かすバンド秘話
リテイクアルバム「OUR RUSTY WAGON」
──ではいよいよ「OUR RUSTY WAGON」についても伺いたいんですが、今回は30曲すべて新録の“リテイク”ベストアルバムということで。
深沼 とにかく音を録り直したいっていうのがすごくあって。PLAGUESの最初のアルバムはアナログで録って、そのあとヨンパチっていう48chのデジタルテープになったり、32chのデジタルで録ってみたり、毎回フォーマットが違ったんですよ。エンジニアの人も大変だったろうなと思うけど。
──じゃあ当時から自分たちの音源には物足りなさを感じていた?
深沼 「なんでもっとこうならないんだろう?」みたいな気持ちは強かったよね。やっぱり当時は自分の技術も機材の完成度も中途半端だったから。今は経験を積んで、機材も良くなった分、自分が録りたかったPLAGUESのバンドサウンドをレコーディングできるようになったと思う。
──今回のレコーディングは、かなり突貫作業だったと聞きましたが。
深沼 1カ月で30曲全部録ってミックスまでしたからね。もうライブみたいな感じ。ほとんど1テイクか2テイクで。
──曲は覚えていました?
後藤 やっぱ覚えてますね。あと、その曲を当時レコーディングしてたときの自分の感情とか、ここのポイントはこうしたとか。あっ、同じことを当時も思ったかもとか、そういうとこまで。
深沼 歌詞は頭で考えてるから多少忘れてたりもするんだけど(笑)、演奏は肉体的だからね。やっぱり体で覚えてるよね。
──聴いてみて感じたんですが、当時より録音がいいだけじゃなく、演奏自体もよりソリッドに研ぎ澄まされて格段に良くなっていますよね。
深沼 あのね、やっぱり若いときは特にそうなんだけど、ちゃんとやろうとかよく見せようとか、思いついたアイデアを忠実に再現しようとか、いろんなことが渦巻きながら録ってるわけですよ。しかもすごいでかいスタジオで、よくわかんない人たちがいっぱい観に来てて、そういう中でやってた。でも今はある意味1対1で音楽に向き合ってるというか、曲が自分にすごく近い感じがあるよね。勢いを音に焼き付けるのがうまくなった。
後藤 やっぱりあの頃は若さゆえのね、複雑で繊細な気持ちが渦巻きすぎて。気持ちが強すぎて形にうまく音にできなかったっていうのはあるかもね。
深沼 だからアルバムごとに音も変わるし。そういうところも面白かったっていうか、そういうバンドだったんだろうなとは思うけど。
──今のは技術じゃなくて精神面の話ですよね。
深沼 うん。
──じゃあ技術面でのプレイヤーとしての成長みたいなものもあります?
深沼 んー、多少はあると思うんだけど、やっぱり技術じゃないと思うんだよなあ。だってやってることほとんど同じだもん。
後藤 うん、このアルバムを録って、やっぱ精神的なものなんだっていうのがよくわかったんだよね。今出せる最高の技術をここに詰め込もうなんて気持ちはこれっぽっちもなかったから。今ちょっと大人になって、普通にやって普通に録ってもいいんだってことがわかった。
──でもここまでアレンジを変えずにただ録り直すっていうのは、普通はなかなかできないことですよね。
後藤 普通はアレンジ変えるよね。
深沼 でも20代の頃の演奏をそのままやってもあんまり恥ずかしさもないし、アレンジもこれでいいじゃんって思うんですよ。20代のバンドとしてはがんばりすぎだったなあって。
後藤 そこらへんも考え抜かれてるっていうか考え過ぎっていうか(笑)。その考えに何かが追いついてなかった。
深沼 「もうちょっと若さを出せよ」みたいなとこはあると思う。今やってみて「これはさすがに青臭くて恥ずかしいな」ぐらいでよかったんだよね。そういうのを当時もっとやっとくべきだった(笑)。
──でもだからこそ今聴いても全然古くないし、恥ずかしくないんですよね。
深沼 あの頃から「10年後も絶対聴けるアルバムを作ろう」って言ってましたからね。今20年ぐらい経ってんですよね。だからそういう意味ではいいアルバムだなと思うし、いい曲だなとも思うし、反面今恥ずかしくて聴けないような部分があったほうがたぶん売れたのかなと思って。ははは(笑)。ほんっとに時代に関係なくカッコいいロックバンドっていうのをそのときに必死に作ってきたんだなと。今やり直してみて本当にそう思いますね。
DISC 1
- ヴィルヌーヴに憧れて
- ニューホライズン
- プルメリア・レイ
- ライド・ライド・ライド
- ワンダー・ワンダー
- スピン
- ブルーズ・フロム・ザ・バスルーム
- 最後のハイウェイの夢
- シトロエン幻想
- ファントムガルシア最後のレース
- ハイビスカス
- すれちがうだけ
- リアル・シング
- どうしようもない世界、寛容な僕ら
- スープ・アップ・バグ
DISC 2
- 凱旋門
- ハッピー・プレイス
- フローズン・ビーチ
- シルバー・チップス
- グッド・ムーン・ライジング
- 音速の箱庭
- ヘイ・ミスター・ドリーマー
- トゥモロウズ・ソロウ
- 1000マイルの彼方で
- グライダー
- まっぷたつの僕
- カリフォルニア・ソロウ・キング
- トランキライザー・ガン
- ワンダリン
- 錆びたワゴンは旅路の果てに
PLAGUES(ぷれいぐす)
深沼元昭(Vo,G)、岡本達也(B)、後藤敏昭(Dr)の3人により1990年に結成。1993年にインディーズより2枚のアルバムをリリースし、1994年にアルバム「シナモン・ホテル」でメジャーデビュー。1996年発売のメジャー3rdアルバム「センチメンタル・キック・ボクサー」がスマッシュヒットを記録する。翌1997年には日比谷野外大音楽堂ワンマンを含む全国16都市のツアーを成功させるが、その年の12月に岡本が突然バンドを脱退。その後は深沼と後藤の2人バンドとして活動を続けるも、2001年5月のインストアライブを最後にバンドとしての表立った活動を停止し、2002年2月に活動“休暇”を発表した。
約8年間の沈黙を経て、2010年春に突如活動再開を宣言。サポートベーシストに林幸治(TRICERATOPS)を迎え、5月に都内ライブハウスにて復活ライブを行った。また、このメンバーで当時の楽曲を再レコーディングしたベストアルバム「OUR RUSTY WAGON」を8月にリリースした。