音楽ナタリー Power Push - PLAGUES
何歳になっても「好きなもんは好き」でいい 深沼元昭が語るバンドと人生
PLAGUESが約4年ぶりのオリジナルアルバム「Free will」をリリースした。今作は、深沼元昭(Vo, G)と後藤敏昭(Dr)のオリジナルメンバー2名にサポートメンバーの林幸治(B / TRICERATOPS)を加えた、2010年の活動再開以降の編成で制作。“PLAGUESらしさ”を聴く者に改めて印象付けるギターロックアルバムに仕上げられている。
今やプロデューサーやギタリストとして各方面から引っ張りだこの深沼にとって、そのキャリアの始まりと言えるPLAGUES。もうすぐデビューから24年を迎えるこのバンドの、自分の中での位置付けついて深沼に聞いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 西田周平
普通に弾けばちゃんとPLAGUESの音になる
──PLAGUESのオリジナルアルバムは約4年ぶりになるんですね。
そうですね。まあ「毎年いろいろ作ってたのにな」って思いのほうが強いですけど(笑)。
──確かに深沼さんはこの4年間でMellowheadとGHEEEのアルバムをリリースしてますし、PLAGUESも2013年に全曲新録のリテイクアルバム「SWAMP RIDING」を発表しています。さらに並行して佐野元春さんや浅井健一さんのバンドにもギタリストとして参加しているという。
佐野さんとはツアーも回ったし、浅井さんの作品ではエンジニアとしてミックスもやらせてもらったり。あとはchayのプロデュースとかもしてますね。
──そんな多忙な中、このタイミングでPLAGUESのニューアルバムを作ろうと思ったのは何かきっかけが?
いや、タイミングっていうか、いつも作ろうと思ってるんですよ。2010年に再始動して以来、制作もするしライブもするって気持ちは常に持ってるんで。だから「さあ、そろそろPLAGUESの新作を」と思って、気付いたら4年経ってたっていうだけなんです。
──現在の深沼さんの中でPLAGUESというバンドはどういう位置付けですか?
やっぱり自分がこのバンドで世に出たわけですからね。地元の友達とやり始めて、それでみんなで一緒にプロミュージシャンになった。そういう過程をずっと経てきたバンドだから、やっぱり特別です。あとPLAGUESが今までやってきたこととか、残してきたディスコグラフィとか、そういうのをたまに俯瞰で見るとやっぱり好きだなって思うし。
──制作に向かう姿勢もほかのプロジェクトとは違いますか?
曲についても演奏についても「PLAGUESはこうあってほしい」っていう気持ちが強く自分の中にあって、それを意識してるところはありますね。
──当時作ったPLAGUESのスタイルを、今の深沼さんがなぞっているということ?
いや、なんて言うのかな。再始動してリテイクアルバムを作ったときに思ったんだけど、当時の自分もいい曲作ってるし、わりとがんばっていい演奏してたし、PLAGUESというバンドを改めて好きになったところがあって。だから無理してなぞってるとかではなく、今でも普通にスッと弾けばちゃんとPLAGUESの音になる。そこにちゃんと中身が入ってるというか。PLAGUESのディスコグラフィにふさわしいアルバムを作っていくのが、自分の中で今すごく楽しいんですよね。
PLAGUESはそういうんじゃないなって
──アルバムの制作期間はどれくらいでしたか?
今回のアルバムは2カ月ぐらいでバーッと全曲書いたんです。
──えっ、それはほかの仕事が忙しすぎて?
いや、もっと前から少しずつ書き溜めてブラッシュアップしたりっていうのも、やろうと思えばできたんだけど、PLAGUESはそういうんじゃないなって思って。
──どういうことでしょう?
できようができまいが、とにかく期間を決めて集中して作る。プロ的な作り方をしないほうがいいんだなって。
──そういうやり方が作品のみずみずしさにつながる?
そう、それがわかった。事前に万全の準備をして緻密に作ることもできたんだけど、それをあえてやらない。そういう判断ができるようになったのは、逆に成長したところかな。バンドのアルバムはそういうんじゃねえから、って。
時代と関係ないことをやり続けてきた
──先ほど「普通に弾けばPLAGUESの音になる」という話がありましたが、1990年代も今も、PLAGUESのサウンドは基本的にあまり変わらないですよね。
それはやっぱりバンドですからね。
──深沼さんが並行してほかのプロジェクトをやっているから、PLAGUESをPLAGUESのままキープできているという面もありますか?
今はそういうところもあるでしょうね。
──1990年代当時はそうではなかった?
うん、当時は自分の全部がPLAGUESに向かってたから。自分のやれることを全部詰め込みたいし、とにかく先へ行きたいって気持ちばっかり強かった。多少は頭の中も混乱してただろうし、いろいろ葛藤はあったんじゃないかな。
──それでも音楽的には一貫したものをアウトプットしていたわけで、それはPLAGUESが発明したスタイルがそれだけ強固だったということなんでしょうか?
そうなのかな。不思議ですよね。
──歌詞の感じもずっと変わらないですし。
歌詞だって、歌うから自分で書くしかないかぐらいの気持ちだったんですけどね。
──結果、サウンドも歌詞も20年経ってもまったく古びていない。
あんまり時代と関係ないことをやり続けてきたってことでしょうね。90年代には「2000年を超えても古くならないものを作りたい」と思ってたし。
──それは逆に言えば2000年ぐらいの未来までしか見えてなかったということ?
そうそう(笑)。それがもう20年以上経って、今や2017年ですからね。
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DISC 1
- Fool on the freeway
- Knack
- Guiding star
- Bad gnome
- Free will
- 僕らは何度も
- Snow in the surf city
- 脈拍
- Buttonhole blues
- 名称未設定
- Goodbye doesn't mean we never be together again
- Wild goose chase
DISC 2(bonus disc)
- Guiding star(Acoustic)
- Fool on the freeway(Acoustic)
- Dream eater(Take2)
- Cinnamon hotel(独奏)
- 迷走(demo)
- Fool on the freeway(Instrumental)
- Knack(Instrumental)
- Guiding star(Instrumental)
- Bad gnome(Instrumental)
- Free will(Instrumental)
- 僕らは何度も(Instrumental)
- Snow in the surf city(Instrumental)
- 脈拍(Instrumental)
- Buttonhole blues(Instrumental)
- 名称未設定(Instrumental)
- Goodbye doesn't mean we never be together again(Instrumental)
- Wild goose chase(Instrumental)
PLAGUES "Free will" release one-man tour 2017
- 2017年3月4日(土)
愛知県 池下CLUB UPSET - 2017年3月5日(日)
大阪府 LIVE HOUSE Pangea - 2017年3月11日(土)
東京都 渋谷CLUB QUATTRO
PLAGUES(プレイグス)
深沼元昭(Vo, G)、岡本達也(B)、後藤敏昭(Dr)の3人により1990年に結成。1993年にインディーズより2枚のアルバムをリリースし、1994年にアルバム「シナモン・ホテル」でメジャーデビュー。1996年発売のメジャー3rdアルバム「センチメンタル・キック・ボクサー」がスマッシュヒットを記録する。翌1997年には日比谷野外大音楽堂ワンマンを含む全国16都市のツアーを成功させるが、その年の12月に岡本が突然バンドを脱退。その後は深沼と後藤の2人バンドとして活動を続けるも、2001年5月のインストアライブを最後にバンドとしての表立った活動を停止し、2002年2月に活動“休暇”を発表した。約8年間の沈黙を経て、2010年春に突如活動再開を宣言。サポートベーシストに林幸治(TRICERATOPS)を迎え、5月に都内ライブハウスにて復活ライブを行った。また、このメンバーで当時の楽曲を再レコーディングしたベストアルバム「OUR RUSTY WAGON」を8月にリリースし、2012年10月に11年ぶりのオリジナルアルバム「CLOUD CUTTER」、2013年3月に全曲新録のリテイクアルバム「Swamp riding」を発表。2017年1月にオリジナルアルバム「Free will」を発売した。