ナタリー PowerPush - ONE OK ROCK
Takaが語る最高傑作シングル「The Beginning」の“ツボ”
ONE OK ROCKがニューシングル「The Beginning」を8月22日にリリースした。タイトル曲は映画「るろうに剣心」の主題歌として制作されたハードなナンバー。フロントマンであるTaka(Vo)はこのシングルを指して「今までで一番“ツボ”な曲」と語る。その真意を問うべく、じっくりと話を訊いた。
取材・文 / 大山卓也
このバンドはずっと満足しない
──現在は夏フェスシーズン真っ最中ですね。先日「RISING SUN ROCK FESTIVAL」のステージを拝見しましたが、素晴らしかったです。
マジすか。うれしいです。
──フィールドの後ろのお客さんまで異様に盛り上がっていて。
実はステージから観てるとあんまりわかんないんですけど、あとで映像とかで観るといつもびっくりするんです。しんどかったなあ、あれは(笑)。
──しんどかったというのは?
僕らの出番がすごい遅い時間帯(深夜1:40~)だったんで、スイッチの切り替えが難しくて。札幌市内でごはん食べてからバスに乗って会場入って、これからどうやってテンション上げればいいんだろうみたいな(笑)。
──ワンマンとフェスではライブに臨む際の気持ちは違います?
ワンマンと違って、フェスのお客さんは自分たちのことをそこまで観たいと思ってる人じゃないっていう感覚はあるかもしれないです。「ああ、最近のバンドでしょ?」みたいに観られてるっていうか。でもだからこそ攻めていこうって思うし、常にギラギラしてやれるっていうか。
──確かにライジングのときも攻めてる姿勢が伝わってきました。
僕らの次がエレファントカシマシさんで……僕らの前はBRAHMANで、その前はマキシマム ザ ホルモンっていう。やっぱ相当緊張しました(笑)。
──でも同時に楽しそうに演奏しているという印象も受けたんですが。
夢でしたからね。フェスのメインステージに立たせてもらうっていう。でもいざやってみると「もっともっといろいろやりたいな」っていう気持ちが逆に出てくるっていうか……。このステージに出るんだったらもっと圧倒的な何かを身につけたいなっていうのは思いますね。
──まだ足りないと感じる?
多分このバンドはずっと満足しない。それが今回わかった感じです。
アルバムに入れるのは違うと思った
──ニューシングル「The Beginning」はどういう成り立ちでできた曲ですか?
この曲、実は「残響リファレンス」っていうアルバムを作ったときにはもうあったんですよ。デモはほぼできてて、歌詞はまだ乗ってない状態で。でもアルバムに入れるのは僕は違うって思ったんですよね。
──それはどうして?
自分が今まで作った曲の中で一番“ツボ”の曲なんです。だからアルバムの中の1曲にはしたくないなって思って。
──大事に温めておいた。
そうです。ちょうど映画のタイアップもいただいて。その映画の主演の佐藤健も同じ事務所で同い年で、めっちゃ仲いいんですよ。だからあいつががんばった映画の主題歌を作れるっていうことがうれしくて、ちょっといつもとは違う感情があったし、そこに対して今自分ができる100%を表現したかったっていうのはありました。
──じゃあ映画の主題歌に決まったことが、この曲に与えた影響もありますか?
相当ありますね。歌詞も、映画を観て感じたことをなるべく入れたいと思って書いたし。
──逆に映画のイメージに縛られて作りにくいということはなかった?
いや、監督も好きなようにやっていいって言ってくれたんです。それが一番うれしかった。普通だったら「こういう曲を書いてください」とか言われるんだろうけど、今回は最初から「ONE OK ROCKの音で」って言ってもらえたから、僕らとしても最高の曲で主題歌を飾りたいなと思って。
──こういう大型タイアップだと幅広い層に聴かれるぶん、難しい部分もあるかと思うんですが。
聴いてる人の中にはやっぱり否定的なことを言う人も多分いると思うんですよ(笑)。そういう人たちが聴いてもちょっとなんかこう……ボロクソには言えないくらいのものを作ってやろうっていうのは思ってましたね。
超シンプルだけど起承転結がある
──Takaさんは先程この「The Beginning」が「自分にとってツボの曲だ」とおっしゃってましたが、具体的にこの曲のどこがツボなんでしょう?
まずはピアノからデモを作ったんですよ。いつもはギターで作るんですけど、ピアノから作ってここまでバンドに還元できたことが自分の中ではすごく大きくて。
──ピアノから生まれたメロディをバンドサウンドに落とし込めた?
はい、僕はピアノとボーカルがあったら基本それだけでいいっていうタイプなんですよ。ギターもベースもドラムもいらない。だからいつもはピアノで作り始めたら最後までピアノとボーカルだけでいっちゃうんですけど、これはいいバランスでできたなって。
──それはバンドでのアレンジがうまくできたということ?
バンドアレンジもそうだし、ピアノならではの表現もできたと思うし。とりあえず何よりも超シンプルなんですよね、この曲。コードも多分4つとかしか使ってない。でもその中でしっかり起承転結が作れてる。ギターもリフが入ってるわけでもなく、オクターブとアルペジオだけなんです。あとパワーコード。
──言われてみれば確かに。
そうなんですよ。だからこのタイミングでそういう形で、満足いく作品が作れたっていうのが僕的には結構アツかったっていうか。今までやってきたことのひとつのゴールになったような気がするんですよね。
──確かにキャッチーなリフがあるわけではないし、どちらかといえばつかみどころがない。それなのに繰り返し聴ける強度を持った、スルメのような曲だと思いました。
そうなんですよ。何回も聴ける感じ。そこが僕はすごく好きで。普通はやっぱりもうちょっと飾りを入れたくなってしまうんです。でもそれを入れずに完成させられたっていう、そこがうれしかったですね。
CD収録曲
- The Beginning
- 欠落オートメーション
- Notes'n'Words
ONE OK ROCK(わんおくろっく)
2005年結成。Taka(Vo)、Toru(G)、Ryota(B)、Tomoya(Dr)の4人からなるロックバンド。エモ、ロック、メタルの要素を取り入れた骨太なサウンド、激しく熱いライブパフォーマンスで若い世代を中心に支持を集める。2007年4月に1stシングル「内秘心書」を、同年11月に1stアルバム「ゼイタクビョウ」を発表。2010年11月に初の日本武道館公演を実施する。さらに2012年1月には、5thアルバム「残響リファレンス」を携えたツアーのファイナルとして横浜アリーナ2DAYS公演を大成功に収めた。同年8月に映画「るろうに剣心」の主題歌に起用されたシングル「The Beginning」をリリースし、その後台湾公演を含む全国ツアーを実施する。