ナタリー PowerPush - 新山詩織

不器用な17歳の本音「ゆれるユレル」

新山詩織が4月17日に1stシングル「ゆれるユレル」でデビューする。彼女はビーイングの新人発掘オーディションでグランプリを勝ち取り音楽の道を切り開いた、17歳のシンガーソングライター。その素顔は学生ならではの悩みを抱えた、外見も決して派手ではない普通の女子高生だ。

今回ナタリーはメジャーデビューを果たすこのタイミングで彼女にインタビューを実施。新山はデビュー作に込めた思いや大好きなTHE GROOVERSとのセッションの話、「箱の中」と呼ぶ学校の話、そして音楽が自分に与えたものまで、たどたどしくもまっすぐ目を見て話してくれた。

取材・文 / 伊藤実菜子

泣きながら書いた歌詞

「ドキュメンタリーフィルム・ダイジェスト "Road To Stage"」のワンシーン。

──デビューシングル「ゆれるユレル」聴かせてもらいました。メロディも歌詞も強く響いて、学生ならではの心の叫びが伝わってきます。

この歌詞は、自分自身を嫌いだった中学時代のときのことで。変わりたいんだけど変われないっていう、モヤモヤした気持ちを歌ってます。楽曲自体はオーディションに受かってから作ったんですけど。

──以前の自分を回想しているんですね。

はい。歌詞書くときは、ほんとはどうなりたいんだとかはっきりわからないまま過ごしてたときの自分に頭を戻して。とにかく深く奥まで考えて。クラスの中で、周りをどう見ながら座ってたんだろうとか、友達とかクラスの人と話すときに、どういうこと思って話してたんだろうとか。

──それは大変な作業だったんじゃないですか? 目を背けたくなるようなこともあったんじゃないでしょうか。

そうですね。書いてるときはあまりにも、ほんとに深く奥まで思い出しちゃったから……今の学校生活で、前みたいな気持ちになったらどうしようとか、考えちゃって。途中、泣きながら書いてたりもしました。でも一番消したかったこのガヤガヤした気持ちを歌詞に書いたことで、こうなんか、一歩前に出れたっていう感じがします。前の弱かった自分のことを、全部言葉にして書いたことで、少し強くなれたんじゃないかなっていうのは、あります。

──同世代でこういうこと思ってる人たぶんいっぱいいますよね。

いますね。

──同じように悩んでる人に、この曲を通してどんなことを伝えたいですか?

変わりたいからってがんばってすぐに変わろうとすると、また別の重いもの、嫌なことが入ってくる。自分も以前そうだったから。でもずっと「やだなあー」って思いながら過ごしてても、いいことってきっと来るはずだと思うから。だから変わりたいって思ってる人には、今のまま、ゆっくり、ほんとにそのままの自分でいいから、毎日過ごしていってほしいなって思います。

──なるほど。歌詞の後半では「周りの目をもう気にしないで 踏み出せばいい」と、力強いメッセージを送っていますね。

これは、何より自分に向かって言ってます。でも自分と同じ思いの人はいっぱいいるだろうから、そういう人にも届けばいいなって。

「4人目のつもりでやって」って言ってくれた

「ドキュメンタリーフィルム・ダイジェスト "Road To Stage"」のワンシーン。

──カップリングにはTHE GROOVERSの「現在地」のカバーが収録されますね。詩織さんは「現在地」がTHE GROOVERSの曲で一番好きとのことですが、どんなところに惹かれますか?

シンプルにロックというか。歌詞自体の意味は深くて難しい部分もあるけど、ほんとに単純に、シンプルでカッコいいしかないです。

──THE GROOVERSの皆さんと実際に会って、セッションしたんですよね。

はい。今までは動画とかで演奏してるシーンを観てるだけだったから、その音が今自分の目の前で鳴ってるんだと思うと、ほんとに現実なのかわかんなかったくらいとにかく感動しました。

──カバーするにあたって心配事はなかったですか?

「現在地」はTHE GROOVERSを好きになるきっかけになったほんとに大好きな曲だけど、もともとは藤井(一彦)さんが歌ってて、ベースもドラムも全部ある、THE GROOVERSというバンドの1つの曲なので……それを歌ってみたいとはずっと思ってたけど、いざ歌うとなると「自分が歌ったらどうなっちゃうんだろうなあ」っていう不安はありました。でもレコーディングのときに藤井さんが「4人目のつもりでやって」って言ってくれたので、ああじゃあもうとにかく歌おうと思って。1回目に歌ったあとは、もう最初に持ってた大丈夫かなあっていう不安はまったく消え去ってました。

──「4人目のつもりで」というアドバイスはうれしいですね。この曲をカバーしたことで何か自分に変化はありました?

これまではガーッてギターを弾いて歌うストレートなロックは絶対自分では歌えないから無理だって決めつけてたんですけど、そこで初めて「現在地」をガーッと思うように歌ったら、「あっ歌えるんだ」って気付いて。これからロック調の曲いっぱい作りたいなあっていう気持ちになれました。

1stシングル「ゆれるユレル」 / 2013年4月17日発売 / 1050円 / ビーイング / JBCZ-6001
「ゆれるユレル」
収録曲
  1. ゆれるユレル
  2. 現在地 新山詩織 with THE GROOVERS
  3. ゆれるユレル -instrumental-
新山詩織(にいやましおり)

新山詩織

1996年生まれのシンガーソングライター。幼少期より父親の影響でブルース、パンク、ロックを聴いて育つ。2012年、ビーイング主催の新人発掘オーディション「Treasure Hunt ~ビーイングオーディション2012~」に「詩織」名義で出場。オリジナル曲「だからさ」と椎名林檎「丸の内サディスティック」を弾き語りで披露してグランプリを獲得する。同年12月、新山詩織としてアーティストデビュー。2013年4月17日にはサウンドプロデューサーに笹路正徳を迎えたメジャー1stシングル「ゆれるユレル」をリリースする。