音楽ナタリー PowerPush - ななみ

求める側から与える側に

ななみが2ndシングル「I'll wake up」を2月4日にリリースする。

昨年10月に学生時代の実体験をモチーフにしたバラード「愛が叫んでる」でメジャーデビューを果たした彼女。2ndシングルでは、デビュー作とは打って変わってアッパーなロックチューンを披露している。ナタリーではデビュー以降、拠点を大分から東京に移し、ライブやイベントに多数出演するなど精力的に活動を続ける彼女にインタビューを実施。メジャーシーンという新たな環境に身を置いている現在の心境や、新曲「I'll wake up」に込められた思いなど、たっぷりと話を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 佐藤類

なるべく素のままの自分で

──前回のインタビュー(参照:ななみ「愛が叫んでる」インタビュー)からおよそ4カ月が経っていますが、ちょっと雰囲気が変わりましたね。

ななみ

前髪を切って外見も変わったんですけど、一番大きいのは前よりよく笑うようになったことかもしれません(笑)。

──確かに前回はどこかクールな印象が強かった気がします。

今まで「21歳にしてはしっかりしてる」って言われることが多くて。言われれば言われるほど「ダメなところを見せちゃいけない」と思って気を張っていたんです。でもYouTubeで配信している番組「きつねとななみ」を観てくれたファンの方が「ななみさんの素の部分が好き」って言ってくれたりして、私も自分のことを信用できるようになってきた。だから今はなるべく素のままの自分でいようと思ってます。

──前髪を切ったのもそういう気持ちの表れからなんですか?

いや、これはそういうわけではなくて。ジャケット撮影のヘアメイクのときにいきなり「切ろう」って言われたんですよ。「この髪は私の勲章だよ」って、反対したんですけど最終的には切ることにしました。「髪が長いのがななみだ」っていうイメージがついちゃうのもよくないかなと思って。

──21歳の女性に言うのは変かもしれませんが、ちょっと“普通の女の子”っぽくなりましたよね。

そうなんです。前より話しかけやすくなったってよく言われます。Twitterのフォロワーが増えたのも親しみやすい外見になったからなのかな。そういう意味では明るいほうがいいかもしれませんね。

いつの間にか愛を与える側に立っていた

──メジャーデビューから4カ月が経ちましたが、デビュー前と比べてどうですか?

とても多くの方に私の歌を聴いていただいて、ビックリしました。今までは自分の伝えられる範囲でしか歌を届けてこれなかった気がするんですけど、今は自分の知らないところでどんどん音楽が広がっていて。もともと私は愛が欲しくて「愛が叫んでる」という曲を歌っていたんです。でも、デビューしてからこの歌を皆さんに聴いていただいて、知らず知らずのうちに自分が愛を与える側に立つようになっているんだなっていうのを実感しています。

──具体的にリスナーからどんな反応がありましたか?

ななみ

Twitterのダイレクトメッセージで「ななみさんの歌のおかげで不登校を抜け出すことができました。学校に行けるようになりました。ありがとうございます」って送ってくれた人がいたんです。もともと誰かの心の傷に寄りそったり、そのときの悩みの一時的な薬になればいいなと思っていたんですけど、まさか実際にその人の行動まで変えることができるとは考えてもいなくて。だからこのメッセージをもらったときはすごくうれしかったですね。

──前回のインタビューでは、この曲のベースにはいじめに遭ったり、不登校に陥ったというななみさん自身の経験があると伺いました。同じ問題を抱えているリスナーに、ちゃんと歌が届いていたんですね。

そういう反応をもらっているうちに、意外とみんないろんなことを経験してるんだなって思いました。「愛が叫んでる」を聴いて反応する人って、同じような経験をした人が多いはずなんですよ。もちろん私とまったく同じ経験ではなくて、例えば恋人と別れたばっかりの人がこの歌に共感してくれたりもするんですけど。私は愛が欲しくてこの曲を作って歌っていただけなのが、同じように愛を求めている人たちにこの曲が届いて、つながり合えたのがうれしかった。1人じゃないんだって思いました。前は1人で音楽をやってたんですよ。1人で立ち上がって、1人で悔やんで。でも今は1人じゃないから責任感も感じているし、たくさんの声をもらってパワーも湧いてくる。音楽を通して家族が増えてるようでうれしいですね。

不器用にただ強く人の背中を押したい

──デビューシングル「愛が叫んでる」は「愛」をテーマにしたシリアスなバラードナンバーでした。2ndシングルではアッパーサウンドに乗せてポジティブな歌詞が歌われていたので、そのギャップに驚きました。

とにかくいろんな曲を歌いたいんですよ。自分で作った曲の中にはアイドルソングみたいな曲もあるし、「愛が叫んでる」よりもっと暗い曲もあるし。だから「ななみはこういう曲が得意な人」みたいなイメージがつかないようにっていうのは考えて、ちょっとテイストの違う曲を選んでみたんです。

──デビューシングルを出したときから、次はこういう曲にしようと決めていたんですか?

そうですね。もともとストーリーを感じさせるようなアーティストになりたいと思っていたので、1stとはまったく違う曲を出すつもりでした。同じような曲を歌い続けるのではなくて、いろんな顔を見せていきたいというか。だからきっと次のシングルでは、また違ったななみが見せられると思います。

──曲調はガラリと変わりましたけど、ただただ明るいだけの曲というわけでもなくて。歌詞に「何かと言っていつも逃げ出す自分だった」とあるように、ななみさんの人生経験が曲に反映されている部分は、前作と共通していますね。

そうなんです。「愛が叫んでる」が誰かの傷をゆっくり癒していくような曲なのに対して、これは不器用に人の背中を押したいっていう曲になっています。人を助けたいっていう気持ちは変わらなくて、「愛が叫んでる」を聴いてくれた人たちが今度は自分たちが前に進む番だって思ってほしくて。こもっているところから飛び立つようなイメージの曲です。

──ロックサウンドが前面に出ているのも今作の特長ですね。

今回はONE OK ROCKさんとかとお仕事をしているakkinさんにアレンジをお願いしたんです。akkinさんには「力加減を調節できないくらい、不器用な強さで人の背中を押したいんです」と曲のイメージを伝えて。あと私、洋楽のロックが大好きなのでそういう要素を入れたくて歌メロのリズムや、拍の取り方を工夫してるんです。自分なりのこだわりが出せたのですごく好きな曲になりました。

──プロフィールには好きなアーティストとしてアリシア・キーズなどシンガーの名前を挙げていますが、ロックも好きなんですね。

いい音楽が好きなだけであんまりジャンルで聴いているわけではないんですけど、ロックだとFall Out BoyとかLinkin Parkが大好きですね。前作とは違って今回はロック好きな自分の部分が出せてよかったし、次はどんなふうにしようか今から楽しみです。

ななみ

ななみ

1993年、大分県生まれ。学生時代から地元大分でライブの経験を積み、2013年1月に行われたヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」でグランプリを受賞。NHK大分放送局のノンフィクション番組「ドキュメント 桃」の主題歌として書き下ろし曲「桜」がオンエアされるなど、地元大分での注目を集めた。グランプリ受賞後は、全国22カ所を1人で回る弾き語りツアーを行い、着実にその知名度を上げていく。2014年10月、自身が“暗黒時代”と呼ぶ学生の頃の経験をモチーフにした楽曲「愛が叫んでる」をシングルリリースし、日本クラウンとヤマハが合同で設立したe-stretch RECORDSよりメジャーデビュー。2015年2月に2ndシングル「I'll wake up」を発表した。