音楽ナタリー PowerPush - ななみ

求める側から与える側に

誰かを救い続ければ数字は付いてくる

──まだ4カ月ですがメジャーシーンに身を置いてみて、何か意識が変わったことはありますか?

まだ日が浅いからかもしれないんですけど、あんまり感覚が変わってなくて。例えばこれから先、オリコンのチャートとかで上位に入ることがあったとしても自分の曲がそんなにすごいとこまでいったっていう自覚は持てないと思うんです。

──それはなぜ?

ななみ

私はただ好きで音楽をやっていて、数字を取るためにがんばっているわけじゃないから。音楽シーンもビジネスですから、売れるために、数字を取るために歌ってる人はたくさんいると思うんです。もちろんそれは立派なことで、否定するわけじゃないんですが、私は数字を取るために努力をする必要はないと思っていて。いかに誰かを救えるかってところでやらないと自分が音楽をやる意味がなくなっちゃうんです。そうやって誰かを救い続けていたら数字が付いてくるかもしれない、そういう感覚でこれからもやりたいですね。

──こうして話を聞いていると、今はななみさんのやりたいこととレーベルやリスナーとの関係がとてもうまくいっているように感じます。

そうですね。私、人の言うことを聞くのが大っ嫌いなんです(笑)。スタッフの方や私の周りにいる方は「こうしろああしろ」って言わないタイプの方が多くて。「ななみちゃんみたいなタイプは本当にやりたいことをやるのが一番」って言ってくださるので、すごくいい環境に身を置けてるんです。

ななみになりたい

──前回のインタビューでななみさんに目標を伺ったとき「世界を変えたい」とおっしゃっていました。その「世界」というものは地球全部ではなくて、ななみさんの身の回りだということも聞きましたが、この4カ月活動してみてどうでしたか? 世界は変えられているでしょうか?

もう変えられてる部分もあると思うんです。歌を聴いてくれた人が「学校に行けるようになりました」って言うのなんて、奇跡のようなことじゃないですか。ようやくCDを出せて、こうやって反響があって、少しずつ歌を聴いてくれる人や身の回りの人に影響を与えられ始めたところです。

──やっと目標の1歩目を踏み出したということでしょうか?

まだ1歩目でもないと思ってます。去年はデビューがあって、やっとスタート地点に立ったわけで。いつまでも同じ場所にいちゃいけないから、今年はとりあえず第1歩を踏み出したいですね。自分にとっての小さな1歩じゃなくて、みんなが「進んだな!」って思うような大きな1歩を踏み出したいんです。そうやっていって、100歩くらい進めたらやっと自分のやりたかったことが大成するかなって。

──目標も変わらないし、ななみさんらしさも失わずにこれからも活動していくと。

変わりたい部分もあります。私はもっと、ななみになりたいんです。私の本名は荻本奈々美っていうんですけど、自分の中の荻本奈々美の部分は、ななみをすごく尊敬してるんです。でもななみは荻本奈々美をうらやましいと思っている。「やりたいことができていいよな」って。自分の中で半分に分かれているから、例えば褒められたとしても「ダメダメ。私はまだまだ」って冷静な目で見れて、2人をうまく使い分けているところがあるんです。ある意味2人いるからうまくいってることもあるんですけど、もっとななみになりたいんですよね。

──荻本奈々美とななみはどう違うんですか?

荻本奈々美は21歳の普通の女の子なんですよ。甘い物食べたい、友達と遊びたい、可愛い服着たい、髪の毛もたくさん染めておしゃれもしたいメイクもしたい、恋もしたい、結婚もしたい、みたいな。それに対してななみは、シングルはこういう曲だから曲の説得力を下げないために服をシンプルにしようとか、そういうことを考えながら生きてるんです。

──「ななみになりたい」ということは、ななみさんは普通の女の子にはなりたくないんですか?

絶対嫌ですね(笑)。普通の女の子なんてクソ食らえって感じです。恋をして幸せで、なんとなく人生を過ごすなんて。男で人生終わるような生き方はもったいないと思ってしまうので。

──活動を続けていくことで、ななみに近づいていくのでしょうか?

「なりたい」って言っておいて変かもしれないんですけど、自分の中でまだななみをつかめてないところもあるんです。ななみがどういう存在か、私がわからないんだから、私の家族にだってわからないし、ファンの方にもわからない。このまま歌を歌い続けて変わらずに気持ちをキープしていたらいつかなれるんじゃないかなと信じているんです。なのでこれからもこの感じでいくことが一番の目標ですね。「ななみになりたい」っていうのは、ある意味自分を忘れたくないっていうことなのかもしれません。

ななみ
ななみ

ななみ

1993年、大分県生まれ。学生時代から地元大分でライブの経験を積み、2013年1月に行われたヤマハグループ主催のコンテスト「The 6th Music Revolution JAPAN FINAL」でグランプリを受賞。NHK大分放送局のノンフィクション番組「ドキュメント 桃」の主題歌として書き下ろし曲「桜」がオンエアされるなど、地元大分での注目を集めた。グランプリ受賞後は、全国22カ所を1人で回る弾き語りツアーを行い、着実にその知名度を上げていく。2014年10月、自身が“暗黒時代”と呼ぶ学生の頃の経験をモチーフにした楽曲「愛が叫んでる」をシングルリリースし、日本クラウンとヤマハが合同で設立したe-stretch RECORDSよりメジャーデビュー。2015年2月に2ndシングル「I'll wake up」を発表した。