ナタリー PowerPush - 中川翔子

元担当、柳さんと振り返る激動の2012年

2012年には芸能活動10周年に合わせ、初の野外ライブ、初のアジアツアー、さらには東名阪ホールツアー、全国のZepp会場を回るライブハウスツアーと、例年以上に勢力的なライブ活動を行った中川翔子。また外部アーティストとの交流も活発になり、2012年は数々のコラボレーション楽曲が生まれた1年でもあった。立て続けにリリースされたDVD / Blu-ray「UCHI-LIVE, SOTO-LIVE!!」とミニアルバム「UCHI-SHIGOTO, SOTO-SHIGOTO!!」は、そんな激動の1年を凝縮したかのような内容となっている。

今回のインタビューでは、2006年のアーティストデビューから常に彼女を支え続け、2012年いっぱいでソニー・ミュージックレコーズを退職し独立した柳真努加(やなぎまどか)氏も同席。ファンにはおなじみの「柳さん」とともに激動の2012年を振り返ってもらいつつ、最後はしょこたんへの“贈る言葉”を届けてもらった。

取材・文 / 臼杵成晃 撮影 / 佐藤類 衣装協力 / F i.n.t.

有吉さんにあだ名を付けてもらえなかった

──今回は中川さんをデビュー時から担当されていた柳さんにも同席いただきます。

写真左から中川翔子、柳真努加

 いやもう、どこから話していいのやら全く(笑)。

──今回リリースされた作品は、昨年のアジアツアーおよび芸能活動10周年ライブを収めた映像集と、昨年制作されたコラボ楽曲を集めたミニアルバムということで、どちらも激動の2012年を総括する内容となっています。柳さんから見ても2012年の中川さんは大きな変化があったのではないでしょうか。

 大きく変わりましたね。何も言わなくても大丈夫になったし、むしろ自分でプロデュースできるようになったので素晴らしいなと。……こんなこと、本人を前に今まで1回も言ったことなかったですけど(笑)。

──中川さん自身の実感としてはいかがですか?

中川 2012年は「デビュー10周年」だからこその大きなチャレンジをたくさん体験させていただいて。アジアツアーは自分にとっても本当に大きな出来事で、いまだに「本当にできたんだ」って実感がないまま気持ちが付いてきてないというか。過去こんなに歌い続けた1年はなかったです。ジェットコースターみたいな、脳も体もあらゆる方向で使った怒濤の1年でした。大変なこともいっぱいあったけど、その分うれしいこともたくさんで、1年の初めと終わりでこんなに気持ちが変わるものなのかと。10周年という重みもあって、結構ネガティブスタートだったんです。

──初めから怒濤の1年が約束されていたわけだから、プレッシャーは大きかったでしょうね。

中川 本当にできるのかな?ってネガティブになりすぎてて、今自分で思い出しても殴りたいぐらい(笑)。先が見えないのが恐くて。せめて「なんとか無事終わったな」と思えるような1年にしたいと考えてました。でも5月に発表したベストアルバムが3位に入ったのはうれしかったし、同じ頃にあった誕生日の野音ライブが本当に楽しかったので、夏のアジアツアーに弾みが付けられましたね。ちょうどその春頃に「ペガサス幻想 ver.Ω」のお話をいただいて……そう言えば2012年はソニーにいながらソニー以外の仕事をいっぱいしてた気がしますね(笑)。

 確かに(笑)。

中川 ソニーの中でも「中川ならOK」みたいな不思議な立ち位置になりつつあって(笑)。歌手としてもそれ以外のお仕事でも。私、有吉(弘行)さんにもあだ名を付けてもらえなかったんですよ。「お前もうギザでいいよ」って。逆に私のあだ名なんて簡単にいくつも出てくると思ってたのに「見る人によって印象が違うから難しい」って言われて。それは考えてみたらうれしいことで「あ、そうなんだ」とポジティブに捉えられるようになりました。

渋公の翌日はカピバラの檻掃除

──ブルース・リーやジャッキー・チェンを敬愛する中川さんだけに、アジアツアーはきっと感慨もひとしおですよね。

中川翔子

中川 はい。香港は私にとって人生の始まりというか。「もう死のう」というほど思い詰めてた10年前に香港で偶然ジャッキー・チェンさんに出会えたことから、「いつかもう一度ジャッキーにありがとうって言いたい」という気持ちで生まれ変わることができたんです。まさかそんな思い出の地でソロライブができるようになるなんて。台湾も初めてだったのに「トゥットゥルー」とか「ギザ」とか先に言われちゃうぐらいの大歓迎で(笑)。……この時期は国際問題もあったりして、アジアツアーをやるには結構シビアな問題も抱えてたんです。でもどの会場も本当に笑顔にあふれていて。アニソンカバーはどの国で歌っても大合唱になるし、改めて音楽の力を感じました。

──アジアツアーの映像を観ていると、それはすごく伝わってきます。香港ではジャッキーさんからうれしいサプライズも……。

中川 そうなんです。まさかお花をいただけるなんて! やっぱりこのアジアツアーを自分の中で受け止めるまで、あと30年ぐらいかかりそう(笑)。

──2012年はアジアツアーもありつつ、国内でのライブも例年以上に多かったですよね。

中川 いつもなら春にツアーが終わって、そこから芸能人としてのお仕事があってという流れでしたけど、2012年は夏にアジアツアーがあって、そのあとホールツアーとZeppツアーがあって。ゲッターズ飯田さんに「2012年は運気悪いよ」って言われてたからなおさら心配だったんですけど(笑)。「特に8月にキツい仕事があるよ」って言われていて、これかー!と思ったのがニコニコ生放送で配信した24時間番組ですね。途中でくじけて涙が出てきてしまったし、ファンの皆さんに申し訳なくて……。泣いちゃってるところも生中継されていたから、本当に人生の汚点というか(笑)。最低な自分を垂れ流してしまいました。

──あれはドキュメンタリーでしたね(参照:ナタリー - ニコ×ナタ - ニコ生レポート しょこたんの“独り24時間テレビ”)。

中川 でもそんなときに目を閉じて思い浮かぶのは、アジアツアーのみんなの笑顔だったり、支えてくれる皆さんの言葉だったり。落ち込みそうな自分を救い上げてくれる力というのが周りにたくさんあって。結果的にいい経験になりました。

──ホールツアーでは、2007年の初ソロ公演「貪欲☆まつり」を行った渋谷公会堂(当時は渋谷C.C. Lemonホール)でのライブもありました。

中川 渋公は5年前に初めて立ったステージで、父(1994年に急逝したシンガー中川勝彦)が昔立ったステージでもあって。不思議な縁を感じながら歌いました。いつものライブはファンのみんなと歌って踊るのが基本ですけど、このホールツアーは新曲が多かったから、久々にじっくりと聴いてもらう、観てもらうライブになって。それもすごく新鮮でした。この頃には今までになかった気持ちというか、「10周年の景色は今だけだし、楽しんで次につなげなきゃもったいない!」っていう、強気な自分が語りかけてくるような状態になって。ネガティブな自分が追いやられるような感じになれたのは、自分でも意外で面白かったですね。「グラップラー刃牙」の脳内エンドルフィンですか(笑)。それが出ていたので、ホールツアーとZeppツアーはすごくのびのびと楽しくできました。

──ライブの本数は多いのに、その分芸能活動が少なくなるわけでもなく、むしろ増えてますよね。これは体力的にも大変だったんじゃないでしょうか。

中川 渋公の翌日は北海道に日帰りロケでカピバラの檻を掃除してました(笑)。その翌日が名古屋のツアーファイナルで体が持たない!と悲鳴上げてたんですけど、取っておいた高い栄養ドリンクを飲んだらいつも以上にのびのびできました(笑)。ライブってほかの仕事とは使う脳の配置も違って、趣味が一切できなくなるんですよ。本も読めないしゲームもできないし。だからいつもテンパっちゃうんですけど、これまで全く興味がなかった料理や裁縫をやってみたら意外と楽しくて。あと「ウチくる!?」(フジテレビ系)とかラジオで自分とは全然違う価値観を持った方々の話を聞く機会も増えて。前は人の話を聞くのがすごく苦手だったのに(笑)、それも楽しくなってきたり。

ニューアルバム「UCHI-SHIGOTO, SOTO-SHIGOTO!!」/ 2013年1月9日発売 / 2500円(税込) / Sony Music Records / SRCL-8210~8211
CD収録曲
  1. Rolling star(YUIトリビュートアルバム「SHE LOVES YOU」より)
  2. 甘宿り feat.中川翔子 / DECO*27(DECO*27アルバム「ラブカレンダー」より)
  3. RAINBOW -なみだのあとで- starring 中川翔子 / RAM RIDER(RAM RIDERアルバム「AUDIO GALAXY -RAM RIDER vs STARS!!!-」より)
  4. ペガサス幻想ver.Ω / MAKE-UP feat.中川翔子(テレビアニメ「聖闘士星矢Ω」主題歌)
  5. 一人のキミが生まれたとさ(テレビアニメ「ふるさと再生 日本の昔ばなし」オープニングテーマ ※初CD化)
  6. あるこう(テレビアニメ「ふるさと再生 日本の昔ばなし」エンディングテーマ※初CD化)
  7. ペガサス幻想ver.Ω / MAKE-UP feat.中川翔子 TV-EDIT(アニメ尺)
  8. 一人のキミが生まれたとさ TV-EDIT(アニメ尺)
  9. あるこう TV-EDIT(アニメ尺)
DVD収録内容
  • 甘宿り feat.中川翔子 -Music Video-
ライブBlu-ray / DVD「UCHI-LIVE, SOTO-LIVE!!」/ 2012年12月26日発売 / Sony Music Records
Blu-ray盤 / 7350円(税込) / SRXL-37
DVD盤 / 6300円(税込) / SRBL-1550~51
収録内容
中川翔子 ギザ10 しょこ【生】ツアー!! 2012
  1. Opening
  2. Dream Driver
  3. pretty please chocolate on top
  4. つよがり
  5. GIZA10 Medley
    せーので恋しちゃえ▼ / みつばちのささやき / 心のアンテナ / Shiny GATE / ラベンダー
  6. souffle secret
  7. Discovery
  8. 宇宙でプロポーズ
  9. GAME
  10. トキメキ☆ドリーマー
  11. 甘宿り
  12. 千の言葉と二人の秘密
  13. RAY OF RIGHT
  14. 涙の種、笑顔の花
  15. フライングヒューマノイド
  16. ホリゾント
  17. 続く世界
  18. 空色デイズ
  19. starry pink
  20. 綺麗ア・ラ・モード
  21. rainbow forecast
  22. Brilliant Dream
  23. calling location
  24. Ending
中川翔子 アジアツアードキュメント
  1. Opening
  2. 空色デイズ
  3. ドキュメント~香港~
  4. 残酷な天使のテーゼ
  5. ドキュメント~台湾~
  6. ライブダイジェスト
    CAT Life / souffle secret / rainbow forecast / pretty please chocolate on top
  7. ドキュメント~シンガポール~
  8. TYRANT too young
  9. つよがり
  10. ドキュメント~上海~
  11. Ending

※▼はハート表記

中川翔子(なかがわしょうこ)

「しょこたん」の愛称で知られる、1985年生まれの女性アイドル。2002年に芸能界デビューして以来、数々のテレビ番組に出演し人気を高めていく。2004年11月からスタートさせた公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」でも人気を博し、2006年にはシングル「Brilliant Dream」で歌手デビュー。このほかにも声優やイラスト、マンガ家、ドラマ出演など、多方面で活躍するマルチタレントぶりを発揮している。デビュー10周年を迎えた2012年には念願だった初のアジアツアーを大成功に収めた。2012年12月26日には東京・渋谷公会堂ワンマンライブとアジアツアーのドキュメンタリーをパッケージしたDVD / Blu-ray「UCHI-LIVE, SOTO-LIVE!!」、2013年1月9日にはコラボレーション楽曲を中心にまとめたミニアルバム「UCHI-SHIGOTO, SOTO-SHIGOTO!!」をリリース。

柳真努加(やなぎまどか)

1999年ソニー・ミュージックエンタテインメント入社。営業、人事、宣伝を経て、2003年よりA&Rとして玉置成実、中川翔子、supercell、元気ロケッツ、Tomato n' Pine、再結成したZONEなど数多くのヒットアーティストを担当。2012年いっぱいでソニーミュージックを退職し、2013年1月に株式会社アンテナフラッグスを設立。