ナタリー PowerPush - 中川翔子

元担当、柳さんと振り返る激動の2012年

ピッコロさんが重い武具を外したのと同じ

──ある意味過酷な1年ですけど、その都度経験値を貯めてきたような感じでしょうか。

中川 アジアツアーは本当に莫大な経験値をくれました。ラスボス前にものすごい経験値を貯めてレベル上げしまくって、気付いたら簡単にラスボス倒せるようになってたみたいな。Zeppツアーの最後、思わず口を突いた言葉が「ギザ10を倒したぞー!」だったんですよ(笑)。「ギザ10=ギザ充実。我が人生に一片の悔いなし!」って叫んだんですね(笑)。最初「ギザ10」は今年限定のギャグとして(笑)、とりあえず言ってた言葉だったんですけど、ツアーが全て終わる頃にこんな大きな意味を持つことになるとは。「ギザ充実」なんて言えたこともうれしかったし。

──おお。試練の数がハンパなかったからこそ、乗り越えてさらに強くなったみたいな。

中川翔子

中川 ピッコロさんが重い武具を外したらスピードが上がったのと同じ(笑)。悟空が重力の部屋で修行したあとみたいな。気が付いたら「あれ? 意外にいけるぜ!」って。試練はいっぱいあったはずだけど、振り返ってみるともう忘れちゃってるんですよ。今思うとうれしいことだらけだったな、という気持ちしか残ってなくて。「あれ? ネガティブ中川さんサヨナラですか?」っていう。……それは言い過ぎかもしれませんけど(笑)。

──そのレベルアップぶりは、ずっと横で見てきた柳さんにはよくわかるんじゃないでしょうか。

 強くなったと思いますよ。昔はネガティブな発言しかなかったもんね(笑)。いつ頃から変わってきたんだろうなあ。やっぱりライブを重ねるごとに強くなってきた気がしますね。ファンと一緒に空間を作っていく楽しさを感じ始めてから、どんどん変わってきた。

中川 最近は曲ごとにペンライトの色を変えたり、みんなも協力して空間を作ってくれるんですよ。オリジナル曲たちの味わいも歌い重ねるごとに深くなって、みんなの思い出も重なってより深いものになってきてるんです。今「空色デイズ」を音源で聴くと、自分の歌声も全然違って面白いぐらいで。フェスに出るときは初めましての方がほとんどだけど、最近は意外に緊張もなくて。オラすげえワクワクすっぞ状態で(笑)、今までになかった感覚ですね。

──収穫の多い10周年でしたね。

中川 でも最後の最後に「ウチくる!?」ロケで飲んだウォッカで泥酔したことがYahoo!ニュースのトップに出たり(笑)。ホントこの1年はなんだったんだろうって思います。

 韓国大統領就任という大きなニュースと並ぶあたりが中川らしい(笑)。

中川翔子が“擬CD化”したら

──今までの中川さんは、ある意味「非リア充」「非コミュ」を引きずったまま芸能界のトップ戦線で戦ってるような(笑)、そんな姿が多くの同胞たちを勇気付けたようなところがあったと思うんですよ。「非コミュの星」というか。その中川さんが「ギザ充実」で非リアの殻を脱ぎ去ろうとしているというのは、実はかなり大きな出来事なんじゃないかと。

中川 脱皮! 今は肌ぬるぬるで柔らかい状態ですね(笑)。歌があったからこそ10年続けられたというのは大きくて、でも歌を歌うには芸能人としてのお仕事や趣味の時間、猫とたわむれる時間とか、その全部が必要なんです。もっともっといろんなことを吸収して、濃く深く広く追求していきたいです。有吉さんがおっしゃってくれた「見る人によって印象が違う」というのは自分の個性だと思うので。

──「UCHI-SHIGOTO, SOTO-SHIGOTO!!」なんてその最たるアイテムですよね。

中川 「ペガサス幻想」もあれば、YUIさんのカバーもあり、アカペラ曲もあり、おしゃれな恋の歌もありで、1枚のアルバムとしては相当カオスだと思うんですけど、このバラバラな感じが中川翔子らしいというか。中川翔子が擬人化じゃなく「擬CD化」したらこれになるんじゃないかって。でも音楽も趣味も、トータルして「これが好き!」というものだけをやらせてもらっているので幸せですね、ホントに。不思議な人生を歩んでいるなと思います。リスナーとしてはアニソンとアイドルばっかりだったんですけど、今は洋楽も聴くようになって。それも「ジョジョの奇妙な冒険」がきっかけですけど(笑)、そうやって広がっていくのが楽しくて。

──今までもいろんな作家さんや大御所アーティストとのコラボはありましたけど、今作に収められている楽曲ではRAM RIDERさんやDECO*27さんのような若いアーティストとの交流もあって。それは今までになかった変化ですよね。DECO*27さんとのコラボはナタリーでも特集を組ませていただきましたが、RAM RIDERさんとの共演は意外でした。

中川 RAM RIDERさんのアルバムで歌わせていただいた「RAINBOW -なみだのあとで- starring 中川翔子」は、こんなに英語がいっぱい入ってる曲がまず初めてだったので、自分なりに「カッコいい洋楽をいっぱい聴いている、モテる女性」をイメージして歌いました(笑)。難しいけど楽しかったですね。これからもどんどんソニー以外のところでも歌っていきたいです(笑)。出張をいっぱいしていきたいなと。

 「出張」いいね(笑)。

「中川翔子のドリームノート」

──ポジティブになった今でも、うっかり閉じこもってしまいそうな瞬間はないですか? それにも打ち勝ってしまうほどの強さが身に付いた?

中川 「やっぱりダメだ。もういいや」と闇の淵でつぶやく、ネガティブの塊のアイツは今も語りかけてくるんですけど(笑)、一方で「バカ言ってんじゃないよ!」とバチンと突き返す、カラッと明るい悟空みたいな自分もいるんです。2013年は「絶対に猫カフェを開くぞ!」という目標がありつつ(笑)、オリジナルアルバムも作りたいし、そのときにはギターを弾いたり作詞したりもしたい。文章も作品として形に残せるようになりたいし、演技にももっと挑戦したい。新たな願望がどんどん増えてますね。デビューからずっと支えてくれてた柳さんが新たなステージに旅立たれるように、中川翔子も10周年を経て第2章がスタートしたような気がしていて。

──柳さんから見て、このポジティブモードの中川さんはいかがですか?

中川 気持ち悪いですよね(笑)。

中川翔子

 昔なら絶対考えらんないです(笑)。僕が関わり始めた頃、当時のマネージャーだった市川さんと「中川翔子のドリームノート」を作ってたんですよ。ノート自体は存在してないんですけど、中川がやりたいことを叶えるのが僕らの役目だなと思ってがんばってた時代があって。ワンマンライブをやったり深海に潜ったり(笑)、いろんなことが実現できましたけど、同時に「負荷」をかけるのも僕らの役目だと思っていて。「もうムリです!」っていうギリギリのところまで追い込むことも大事だと思うんですね。今となってはある程度のことをやっても彼女は負荷と感じなくなっているので。

中川 いや、今でもその日その日はすごい負荷を感じてるんですよ! ただ本番が始まっちゃうと「楽しい!」しかないんですよね。

 国内でも最大で3000人ぐらいしか相手にしたことのない中川を、アメリカで7000人を前にライブやらせたのは今思うとすごい負荷だったなと(笑)。

中川 アジアツアーも北京は私のことを知らない人が多い、どアウェイだったんですよ。でも「ペガサス幻想」のカバーで一気に火が着いて、最終的にはみんな笑顔になりました。改めてアニソンの力は偉大だなと痛感しましたけど、あのアウェイの空気で最初に思い出したのはアメリカのライブですね。あのときは衣装も家から持ってきたコスプレだったし(笑)、バンドさんもいなくてカラオケだったけど、今回はバンドさんもダンサーさんもいるじゃないか、衣装もちゃんとあるじゃないかと思うと全然平気で。やっぱり試練に向き合うたびに、過去の試練が走馬灯のようにパーッとよみがえりますよ。

 ドリームノートが埋まってきたのは良いことであると同時に、目標がなくなってしまうという不安な部分もあって。でもさっきの「やりたいことがいっぱい出てきた」って話を聞いてたら、少し安心しましたね。

中川 それは「塔の上のラプンツェル」(2011年日本公開のディズニーアニメ。中川は主人公ラプンツェルの声を担当)が教えてくれました。ラプンツェルが「夢を叶えてしまったら、これからどうすればいいのかわからなくて恐い」と言うと、恋人のフリンがあっさり「そのときは次の夢を見つければいいんだよ」って言うんです。私が「貪欲」って言葉が好きなのもそういうことだと思うんです。追いかけても追いかけても追いつけない、口にするだけで勇気が湧いてくる言葉ですね。

ニューアルバム「UCHI-SHIGOTO, SOTO-SHIGOTO!!」/ 2013年1月9日発売 / 2500円(税込) / Sony Music Records / SRCL-8210~8211
CD収録曲
  1. Rolling star(YUIトリビュートアルバム「SHE LOVES YOU」より)
  2. 甘宿り feat.中川翔子 / DECO*27(DECO*27アルバム「ラブカレンダー」より)
  3. RAINBOW -なみだのあとで- starring 中川翔子 / RAM RIDER(RAM RIDERアルバム「AUDIO GALAXY -RAM RIDER vs STARS!!!-」より)
  4. ペガサス幻想ver.Ω / MAKE-UP feat.中川翔子(テレビアニメ「聖闘士星矢Ω」主題歌)
  5. 一人のキミが生まれたとさ(テレビアニメ「ふるさと再生 日本の昔ばなし」オープニングテーマ ※初CD化)
  6. あるこう(テレビアニメ「ふるさと再生 日本の昔ばなし」エンディングテーマ※初CD化)
  7. ペガサス幻想ver.Ω / MAKE-UP feat.中川翔子 TV-EDIT(アニメ尺)
  8. 一人のキミが生まれたとさ TV-EDIT(アニメ尺)
  9. あるこう TV-EDIT(アニメ尺)
DVD収録内容
  • 甘宿り feat.中川翔子 -Music Video-
ライブBlu-ray / DVD「UCHI-LIVE, SOTO-LIVE!!」/ 2012年12月26日発売 / Sony Music Records
Blu-ray盤 / 7350円(税込) / SRXL-37
DVD盤 / 6300円(税込) / SRBL-1550~51
収録内容
中川翔子 ギザ10 しょこ【生】ツアー!! 2012
  1. Opening
  2. Dream Driver
  3. pretty please chocolate on top
  4. つよがり
  5. GIZA10 Medley
    せーので恋しちゃえ▼ / みつばちのささやき / 心のアンテナ / Shiny GATE / ラベンダー
  6. souffle secret
  7. Discovery
  8. 宇宙でプロポーズ
  9. GAME
  10. トキメキ☆ドリーマー
  11. 甘宿り
  12. 千の言葉と二人の秘密
  13. RAY OF RIGHT
  14. 涙の種、笑顔の花
  15. フライングヒューマノイド
  16. ホリゾント
  17. 続く世界
  18. 空色デイズ
  19. starry pink
  20. 綺麗ア・ラ・モード
  21. rainbow forecast
  22. Brilliant Dream
  23. calling location
  24. Ending
中川翔子 アジアツアードキュメント
  1. Opening
  2. 空色デイズ
  3. ドキュメント~香港~
  4. 残酷な天使のテーゼ
  5. ドキュメント~台湾~
  6. ライブダイジェスト
    CAT Life / souffle secret / rainbow forecast / pretty please chocolate on top
  7. ドキュメント~シンガポール~
  8. TYRANT too young
  9. つよがり
  10. ドキュメント~上海~
  11. Ending

※▼はハート表記

中川翔子(なかがわしょうこ)

「しょこたん」の愛称で知られる、1985年生まれの女性アイドル。2002年に芸能界デビューして以来、数々のテレビ番組に出演し人気を高めていく。2004年11月からスタートさせた公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」でも人気を博し、2006年にはシングル「Brilliant Dream」で歌手デビュー。このほかにも声優やイラスト、マンガ家、ドラマ出演など、多方面で活躍するマルチタレントぶりを発揮している。デビュー10周年を迎えた2012年には念願だった初のアジアツアーを大成功に収めた。2012年12月26日には東京・渋谷公会堂ワンマンライブとアジアツアーのドキュメンタリーをパッケージしたDVD / Blu-ray「UCHI-LIVE, SOTO-LIVE!!」、2013年1月9日にはコラボレーション楽曲を中心にまとめたミニアルバム「UCHI-SHIGOTO, SOTO-SHIGOTO!!」をリリース。

柳真努加(やなぎまどか)

1999年ソニー・ミュージックエンタテインメント入社。営業、人事、宣伝を経て、2003年よりA&Rとして玉置成実、中川翔子、supercell、元気ロケッツ、Tomato n' Pine、再結成したZONEなど数多くのヒットアーティストを担当。2012年いっぱいでソニーミュージックを退職し、2013年1月に株式会社アンテナフラッグスを設立。