音楽ナタリー Power Push - 中田裕二

男気香り立つ“日本版ネオビンテージソウル”の神髄

ネオAOR、ネオシティポップの流れとは違う“日本版ネオビンテージソウル”を

──今回は「ソロになって初めてのCDシングル」というのもトピックですけど、表題曲の「ただひとつの太陽」は楽曲的にもすごく新鮮ですね。こういうロッカバラード的なものは、今まで歌ってそうで歌ってなかったんじゃないかと。

うん、歌ってなかったですね。

──この流れは、アルバム「LIBERTY」のテーマにもなっていた「何をやっても中田裕二、自由にやっても自分の歌になる」というところからつながってるのかなあと思ったんですけど、曲はいつぐらいに書き上げたんですか?

中田裕二

「LIBERTY」が完成したあとですね。なんか、ここ何年かでネオAORとかネオシティポップみたいな流れが来てますよね。AORってクロスオーバーなサウンドであるとか、DX7(YAMAHAのシンセサイザー)の音だったり、ギターのカッティングが16ビートだったり、そういう要素を盛り込んでいったらわかりやすくそれっぽくなるんですけど、僕はそれだけじゃないだろうと思っているんです。やっぱりマインドだろうって。キザっぽくて、でもその裏側には少しの恥ずかしさや悲しみもあったりとか、AORのそういう部分が僕は好きなんですよね。だいたいAORのシンガーって二枚目な人がそんなに多くない気がしてて(笑)。ボビー・コールドウェルとかボズ・スキャッグスはまあ男前なんですけど。でも、その決して男前ではない人たちがなぜかAORの魔法にかかると二枚目に見えてくる。

──見かけだけじゃないイイ男感が滲み出てくると。

そう、基本はイイ男イイ女感があったり、渋さとセクシーさですよね、AORって。ORIGINAL LOVEの「接吻」は日本のAORの究極かなと思ってるんですけど、それと比べると、いまのネオAORやネオシティポップの解釈は……それはそれで今の人たちの解釈だったりするのかも知れないけど、自分的にはピンと来ないものが多いんですよね。

──AORやシティポップに対する解釈がDJ的というか。

そうですね。で、僕としては「BACK TO MELLOW」(2014年11月発売のオリジナルアルバム)と「LIBERTY」でそういうわかりやすいAORはひと区切りさせて、次のスタイルを探さなきゃなと思っていて。話をさかのぼると、ソロを始めたばかりのときに、海外のシンガーソングライターをよく聴いてたんですよ。アロー・ブラックとかメイヤー・ホーソーンとかジョン・レジェンドとか。今の自分と同じぐらいの年齢でバックトゥルーツな音をやってる、あのへんの感じに共感して。それで、ソロの2枚目ぐらいからそういう“ネオビンテージソウル”みたいなのは意識してたんですけど、明確にそういう方向に行くっていうわけでもなく、曲によって取り入れる程度で。でも今回はがっつりとやってみようかなと。リオン・ブリッジズが出てきたのも大きいかな。

日本における男性ソウルシンガーの系譜

──そういうスタイルって、今の日本人アーティストにはあまり見受けられませんよね。

中田裕二

切々と歌う男性ソロシンガーって、演歌以外のジャンルではなかなかいないでしょうから、自分がそこに行こうかなと。坂本九さんとか、1960年代あたりの日本のソウルシンガーのイメージで。

──あえてソウルシンガーとして坂本九の名前を! あと、ジュリー(沢田研二)なんかも今回の曲を聴いてイメージが沸きました。

ジュリーもこういう6/8(拍子)の曲やってましたよね。「おまえがパラダイス」でしたっけ?

──あの曲や「渚のラブレター」を歌ってるときのジュリーって、32歳ぐらいだったんじゃないかな?

ああ、やっぱそのぐらいの年頃かあ。あと、チャゲ&飛鳥(現:CHAGE and ASKA)も「MOON LIGHT BLUES」って6/8の曲をやってるんですけど、そのときのASKAさんが30代半ば。きっとシンガーの道を極めていく上で必ず通る道なんでしょうね。

歌い手として直球勝負する時期に来た

──「ただひとつの太陽」はこれからの中田裕二を予見させる、重要な曲になったのではないでしょうか。

そうですね。今、J-POPはどんどん複雑化していて、テンポも速いし音数も多い。でも、海外ではどんどんシンプルに、メロディもすごくわかりやすくなっている流れがあって。自分も音数が多いほうだったんだけど、これからはぐっと減らしてやろうと思って。いい音をいい塩梅に配置して、ドーンと歌を乗っけるっていう、その方向で行こうかと。

──ソロ2作目あたりからちょっとずつっていう話でしたけど、今ようやく確信を持って行けると。

追求し続けていたら自然とここに来た、みたいな感じですね。時代の流れと、自分がこれまでやってきたことの流れを鑑みると。でもなんか、今はこういう歌が必要だって思ってるんですよね。別に奇をてらって変わったことを始めようというわけではなくて、歌い手として本当にストレートなところ、直球で勝負する時期に来たなあって。

ニューシングル「ただひとつの太陽」 / 2016年4月13日発売 / IMPERIAL RECORDS
初回限定盤 [CD] 1944円 / TECI-501
通常盤 [CD] 1080円 / TECI-502
初回限定盤 収録曲
  1. ただひとつの太陽
  2. 夜をこえろ
  3. ひかりのまち
  4. BUG
  5. イニシアチブ
  6. モーション
  7. Steady
  8. ROUNDABOUT

※これまで配信限定でリリースされた未CD化音源6曲をボーナストラックとして収録。

通常盤 収録曲
  1. ただひとつの太陽
  2. 夜をこえろ
  3. ただひとつの太陽(カラオケ)
  4. 夜をこえろ(カラオケ)
中田裕二 TOUR 16 "LIBERTY" 最終公演

4月17日(日)東京都 中野サンプラザホール
OPEN 16:00 START 17:00
料金:全席指定 6300円
発売中

中田裕二(ナカダユウジ)
中田裕二

1981年生まれ。熊本県出身。2000年に宮城県仙台にて椿屋四重奏を結成する。2003年にインディーズデビューを果たし、2007年にはメジャーシーンへ進出。歌謡曲をベースにした新たなロックサウンドで多くの音楽ファンを獲得したが、2011年1月に突然の解散を発表した。同年3月に新曲「ひかりのまち」を中田裕二名義で配信リリースし、本格的にソロ活動を開始する。以降は精力的に新作リリースとライブを重ね、2015年11月には5作目のオリジナルアルバム「LIBERTY」を発表した。2016年4月にはソロ初のCDシングル「ただひとつの太陽」をリリース。