ナタリー PowerPush - ミドリ
制服を脱ぎ、童貞を捨て、経験という武器を得て──最高傑作「shinsekai」ついに完成!
制服は脱ぎたかったけど、でも自分の服破れたらイヤやん?
──じゃあ実際にライブをやってみたら別にイヤじゃなかった?
まりこ イヤやない。すごい楽しいし、好き。でもその頃から制服はイヤやったな。
──そうなんですね。まあもともと別に制服が好きで着てたわけじゃないですしね。
まりこ そうなんよ(笑)。
──じゃあその頃から制服はもう必要ないなって?
まりこ うん。思ってた。
──でもすぐには脱がなかったですよね。次の年(2009年)の野音までは着てたわけで。
まりこ その頃ボク脱ぎたいって思って、いろんな人に相談したら「まあ、あと1年ぐらい着といたらどうっすか」みたいな感じで言われて「ああ、そうなんかな」って思ったんよ(笑)。
──それはちょっと意外ですね。後藤さんが脱ぎたいって思ったら別にすぐ脱げばいいと思うんですけど。
まりこ うん。と思うやん!? せやけどボクけっこう人に聞くなあ。あかんなあ。
ハジメ まあ、そこが意外に世間の人のイメージと違うのかもしれないですけど。後藤さん、わりと橋を叩いて渡るところありますよね。いきなりバーッといくときもあるから、そのへんは極端ですけど。
小銭 でもわしはもう「制服脱ぎたい」って聞いたときからもういつでも脱いだらええよ思うてたよ。もう脱ぎたいんなら早く脱ぎってずっと言うとって。もうなんでも好きなもん着たらええやんって言うとったんやけど。
まりこ 着たいもんないもん。
ハジメ そう、「もう普段着でいいんじゃない?」って言ったけど、そういうわけにもやっぱいかなくて。
まりこ せやね。イヤやん、自分の服破れたら。
──あはは(笑)。
まりこ ビーってひっぱられて伸びんのイヤやん。
──でも何を着るかっていうのはバンドにとってはわりとどうでもいい話のような気がしますけど。
まりこ うん、でもなんか、そんなの全く気にせんって人と、めっちゃ気にする人がおるやん。ボクが制服やないとあかんみたいな人も多分おると思うんよ。
──そういう人は放っとけばいいんじゃないですかね。
まりこ でもその人はその人なりのミドリ観みたいなのを持ってちゃんと聴いてくれてはんねやろうなって思ったら、悪いことしたかなっていうのはちょっとあるよ。
もう洗いざらいしゃべる。PVもジャケットも全部自分でやった
──で、2008年の秋に事務所を辞めて、2009年にシングル「swing」を出したわけですよね。「swing」は前回の反省を踏まえて満足できるものになったんですか?
ハジメ 「swing」は面白かったです。なんか曲的にも今回のアルバムにつながる、ちょうど間にあると思うし、橋渡し的な感じがするというか。
──あれ? 「swing」もまだ思いどおりっていう感じじゃなかった?
まりこ ちょっと待って、そこちょっと考える……。
──はい。
まりこ あー、もうやっぱり。もう洗いざらいしゃべるわ。あんな、ボク、バンドの人やん。バンドの人がバンド以外のことするっていうのはダサいことやと思ってて。ボクな、「swing」でめっちゃいろんなこと学んでんねん。学習した。で、それがすごい今回のアルバムに生きた。今回ミックス自分でした。
──え、アルバムのミックスをまりこさんが自分で?
まりこ うん、2曲ミックスした。ボクの芸名「山野上筆持(やまのうえひつじ)」っていうの。
──ホントだ。(資料を見ながら)「鳩」と「春メロ」のクレジットにその名前ありますね。
まりこ ああ、言ってしもたー。
──それ言っちゃダメだったんですか?
まりこ 言ったらあかん(笑)。言ったらあかんけど、もういいわ。けっこう我慢してきた。けっこう言わんかったよな?
ハジメ いや、僕は別に言ってもいいんじゃないかなってずっと思ってたんですよ。
まりこ だって恥ずかしいやん。
──恥ずかしいっていうのは?
まりこ ボクはバンドマンやから、バンド以外のことをバンドの人がやるっていうのは恥ずかしいことやと思ってた。でも、なんか、やってしもた。あとPVも撮ったし、ジャケットも全部自分でやった。
──え? ホントに?
まりこ 前からボクPVにはバリ口出しとって「エゾシカ・ダンス!!」の頃とかから。もう全部洗いざらい言おっか(笑)。うん。「初体験」(ライブDVD)の編集もボクが8割やった、パソコンで。……言ってもうたよ、これ(笑)。
──それは確かに意外ですね。後藤さんがパソコンで映像編集してる姿はあんまりイメージできない。
まりこ 「swing」はボク録音にはあんま口出さんかった。でもじーっと見てて、パソコンの使い方とか機械の使い方は覚えてもうた。
──それでもう今回からは自分でやろうと思ったんですね。
まりこ うん、やったらできた。
ミドリ
2003年7月に小銭喜剛(Dr)と後藤まりこ(Vo,G)を中心に、大阪で結成されたロックバンド。ジャズ的要素を盛り込んだサウンドと、紅一点の後藤による観る者を釘付けにする強烈なパフォーマンスが、アンダーグラウンドシーンで話題となる。幾度かのメンバーチェンジを経て、2004年にハジメ(Key)が加入し、2005年に1stアルバム「ファースト」をインディーズレーベルからリリース。2007年にはメジャーに移籍し、ミニアルバム&ライブDVDの2枚組作品「清水」を発表して注目を集める。2008年に新ベーシスト、岩見のとっつぁんが加入。2009年6月の日比谷野音ライブを最後に、後藤はそれまでトレードマークだったセーラー服の衣装を捨て、バンドは新たなステージへ。2010年5月には、約2年ぶりとなるフルアルバム「shinsekai」をリリース。