ナタリー PowerPush - ミドリ
制服を脱ぎ、童貞を捨て、経験という武器を得て──最高傑作「shinsekai」ついに完成!
メジャーに来てから、バンドとして停滞しとったと思う
──その頃はメジャーと契約したばかりで、とにかくレコーディングしてアルバム出さなきゃいけないっていう、そういう焦りが強かったんですかね。
まりこ うん、とにかく「せなあかん、せなあかん。前に進まなあかん」って。なあ、おかしいよなあ?
──後藤さんにそう思わせていたものはなんだったんですか?
まりこ 何がそうさせててんかな、なあ……。うん……。なんか忘れられるのも怖いし、とにかく売れたかったってのもあるし、とにかく認めてほしかったってのもあるし、自己顕示欲ってのが強かったんやと思う。今でも強いけど。なんか、もうちょっと優しくなれたらよかった。あはは(笑)。
──ミドリみたいなバンドにも、売れたいとか認められたいっていう意識はあるものなんですね。
まりこ あはは、そりゃあ(笑)。でも口には出さんかったで、もちろん。
──でもあの頃、「清水」も「あらためまして~」も評判良くて、ライブの動員も増えて、ミドリのライブを観れば誰もが「ちゃんとしたバンドだね」って言う状況だったと思うんです。でもやっぱりどこか足りてない感じがあったということなんですか?
まりこ うん、ちょっとなあ、停滞した感があったから、自分の中で。
──東京に来て?
まりこ 岩見さんが入って、「あらためまして~」が出て、そのあたりからバンドとして停滞しとったと思うんよ。もうちょっとできたなあって気持ちはある。
ライブしたくなくて、朝起きたら坊主になっとった
──で、「あらためまして~」を出したあと、ちょっとしてから後藤さんは頭を坊主にしましたよね。それはやっぱり思うように活動できない苛立ちから?
まりこ うん、ライブしたくなかった(笑)。ライブしたくない、ライブしたくない、ライブしたくない、ライブしたくないで、坊主になった。朝起きたら坊主に(笑)。なんか気づいたら坊主になってて、キー! ってなったんやろうな、多分。なんかそのとき事務所とすごい揉めとって、自分のプライベートなことでもいろいろこう思い当たることもあって。
──で、2008年の12月に事務所を辞めたと。
まりこ うん、実質的には10月。その年の「あらためまして~」のちょっと前ぐらいから、ずっと「うーうー」ってなってて。
──いっぱいいっぱいな感じに。
まりこ まあよくそういうふうにはなるけど、でも最近ではあそこがピークやったかも。
ハジメ 坊主になったときはびっくりしましたよ。
小銭 うん、びっくりしたな(笑)。
──単に髪型変えましたってだけじゃない。ライブをやりたくないっていう意思表明ですもんね。
ハジメ とかそういうのも含めて、ヤバいなと思いました。そのあと一発目のライブがRISING SUNだったんですね。あれも後から映像とか観たんですけど、すごい空気の中やってるなって感じで。
まりこ でもライブするのがイヤやっていうのはちょっとボクの勘違いやってん。そのときの状況がイヤやっただけで。なんか自分を取り巻く環境とか自分の気持ちとかがイヤやったのが、なんでか頭の中で「ライブがイヤ」ってなってしまって。変換間違えてん。
ミドリ
2003年7月に小銭喜剛(Dr)と後藤まりこ(Vo,G)を中心に、大阪で結成されたロックバンド。ジャズ的要素を盛り込んだサウンドと、紅一点の後藤による観る者を釘付けにする強烈なパフォーマンスが、アンダーグラウンドシーンで話題となる。幾度かのメンバーチェンジを経て、2004年にハジメ(Key)が加入し、2005年に1stアルバム「ファースト」をインディーズレーベルからリリース。2007年にはメジャーに移籍し、ミニアルバム&ライブDVDの2枚組作品「清水」を発表して注目を集める。2008年に新ベーシスト、岩見のとっつぁんが加入。2009年6月の日比谷野音ライブを最後に、後藤はそれまでトレードマークだったセーラー服の衣装を捨て、バンドは新たなステージへ。2010年5月には、約2年ぶりとなるフルアルバム「shinsekai」をリリース。