音楽ナタリー Power Push - マキシマム ザ ホルモン「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」特集

マキシマムザ亮君が惚れ込んだサラリーマンの独白 ~中2以下の脳内どころじゃない。連れて行かれたのは胎内だった。~

マキシマム ザ ホルモンが11月に映像作品「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」をリリースした。

DVD3枚とBlu-ray、CDの計5枚組作品となる「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」は、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)が製作費として1000万円の個人投資をしたこと、またすべてのコンテンツに再生用のパスワードが設定された、通称“狂気の視聴システム”を採用していることで話題を集めた。

今回音楽ナタリーでは本作のリリースを記念して特集を企画することに。内容についてマキシマム ザ ホルモン側と話し合いを重ねる中で、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)から、エンタメニュースサイト「街角のクリエイティブ」にてコラムページ「田中泰延のエンタメ新党」を執筆しているサラリーマン・田中泰延氏に「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」についてのコラムを書いてもらいたいというアイデアが飛び出した。そこで音楽ナタリーでは田中氏に原稿を依頼し、「なぜホルモンが今、このような作品を出したのか」というテーマで自由に執筆してもらった。亮君が惚れ込んだ田中氏の文章をじっくりと堪能してほしい。

(※この記事には一部「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」のネタバレ要素が含まれております。これからご覧になる方はご注意ください。)

文 / 田中泰延

 
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マキシマムザ亮君との出会い

初めまして。田中と言います。46歳です。広告代理店でサラリーマンをしています。「街角のクリエイティブ」というサイトで、「田中泰延のエンタメ新党」という、映画を紹介する連載をやってます(参照:【連載】田中泰延のエンタメ新党|街角のクリエイティブ)。やってますといっても、今年の3月に始めたばっかりなんですけど。

そんな僕にある日、オカベさんという人から連絡があったんですよ。「マキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君があなたに原稿を書いてくれと言っています」と。耳を疑った僕は注意深くバンド名に半角を空けながら聞きました。「ちょっと待ってください。それは、マキシマム ザ ホルモンのマキシマムザ亮君からですか?」と。

「亮君は、田中さんの映画コラムを読んで興味を持ったので、自分たちの映像作品を観て記事を書いてほしい、と希望しています」

それも「音楽ナタリー」に。いやいや、ほんとにちょっと待ってください。僕、音楽業界の人間じゃないんで、そんな音楽大好きな人たちの記事で埋め尽くされているところへ出て行ったら公開処刑じゃないですか。

それ以前に、僕はマキシマム ザ ホルモンのことをまったくわかっていない人間です。「にわか」ですらない。10年近く前、「恋のメガラバ」のPVを観て、「ぶっ生き返す」を買いました。そのとき、ポップチューンみたいなシングルで彼らを知ったけれど、アルバムを聴くととんでもない音と詞がぎっしり詰まっているのに驚いて、繰り返し聴いたのを覚えています。また、「アーティスト自身が解説を書きまくっている」姿に衝撃を受けました。自分で言うのかこの人は、と。なので、ほんとに知っている程度。熱狂的なファンが山のようにいるバンドの記事を書くなんて、マジで危ない橋を渡る行為です。だいたいコアなホルモンファンを指す「腹ペコ」なんて言葉、こないだ覚えましたから。

だから「なぜホルモンが今、このような作品を出したのか」というテーマについては、知るワケないやん!本人に聞いてくれよ!と思ったのですが、観ないことには始まらない。

僕は「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」の関係者向けの視聴会というものに招かれ、新幹線に乗って東京へ向かいました。僕、大阪に住んでるんですよ。レコード会社に行き、マキシマム ザ ホルモンのメーカー担当である田中健太郎さんというなんか濃ゆい感じの人と名刺交換しました。健太郎さんは「僕も田中なんですよ奇遇ですね」とか言ってて大丈夫かこの人と思いつつ、会議室に招き入れられました。周りには音楽ライターの人とかいる。すごいアウェー感です。

「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」視聴会の様子。

すぐ隣の席にめちゃくちゃ男前の青年がいる。どこかで見たことあるような気がするんだけど思い出せない。とにかくカッコいい人なんですよ。どうしよう。いや、どうもしなくていいわ。とりあえず会議室に並べてあったおにぎりとサンドイッチと唐揚げとハッピーターンとカントリーマアムを食べました。こんなカッコいい男の人の横で太りたくないんですけど。

しかし……糧食がある……どういうことだ。アーティストの映像作品って、ライブDVDじゃないんですか? 1時間くらいじゃないんですか? どれだけ時間がかかるというのか。恐れていると田中健太郎さんは言いました。「それは、昼ご飯と晩ご飯です」。えっ……今お昼ですよね。夜までこの部屋にいるんですか。これは大変なことに巻き込まれたらしい。それに僕はもう全部食べてしまいました。夜はどうしたらいいのか。飢えて死ねというのか。カントリーマアムを2つ残しておいたのだけが救いです。貴重なカントリーマアムを盗まれないようにカバンに隠して夜営の準備を進めていると、各自に今回視聴するパッケージが渡されました。

『Deka Vs Deka~デカ対デカ~』

開封すると、「謎のスティック」と名付けられた秘密めいた筆記用具が入っている。何これ? なんか書く必要があるのか。会議室のモニタで上映が始まりました。隣のカッコいい男性も筆記具を握りしめています。ロックバンドのDVDに筆記具。使うか? 普通?

「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」パッケージ内容。

「【警告】この商品は必ず『START UP DISC』から再生してください。」とパッケージにも書いてある通り、そこから再生が始まりました。この商品はDVD3枚にBlu-rayが1枚、CDが1枚の構成です。それで価格は7256円。パッケージも巨大ですし、なんかおトク感はありそうです。「他のバンドの商品は高額過ぎる! ホルモンはFANからぼったくりません」とかめちゃくちゃな文言が書いてあるんですけど。ははーん、夜までかかると言ったのは、この5枚を全部視聴するからか、と思いました。

しかし、僕は甘かったのです。カルピスの原液くらい甘かったのです。喉が痒くなるくらい甘かったのです。「スタートアップDISC」だけで夜までかかることが判明します。そこからの時間はさあ説明しろと言われてもできない。「スパルタンX」や「ストリートファイターII」をゲーセンで夢中でやった子供時代と、「ドラゴンクエスト」を初めてファミコンでプレイした衝撃と、「進め!電波少年」をテレビで食い入るように観た青春時代、そして史上最高のクソゲー「シェンムー」をドリームキャストでやった後悔、それらがまとめて襲ってきたような体験でした。

僕もテレビCMを作っているんでわかります。このスタートアップDISCを作るのにどれだけの時間とお金がかかったのか。どれくらいの人間が関わったのか。値段の7256円というのは「夏頃発売」の語呂合わせらしいんですけど、今もう冬頃やんけ。押してるやろ。

しかも、このスタートアップDISCは、それ以外のディスクを観るためのパスワードをゲットするためのものなんです。スタートアップDISCを全クリアしないと観ることができません。……狂ってるだろ。ライブ映像とかすぐ観れないのかよ……。すべてのディスクにロックだと。パッケージにも「俺はもうエレキギターを使わずにロックをぶちかます方法を見つけてしまったかもしれない…」と書いてありますが、ぶちかましてるの、それROCKじゃなくてLOCKだろ。

「START UP DISC」場面写真

「スタートアップDISC」は、とんでもない形状の、あるモノの形から始まります。どんなモノなのかはちょっとここで書けません。「亮君の超・挑戦状」という名の果てしなく長いRPG? というよりアドベンチャーゲーム? ていうかDVDのこんな使い方見たことない。ゲームのコントローラーのようにリモコンを使うのです。なんなんだこの面倒くささ。選択肢で迷うところになると、「そこは右端を選べ」と、会議室のスピーカーを通して「天の声」が響き渡ります。誰なんだよ天の声。

苦闘の果て、我々はすべてのパスワードを入手しました。力尽きカントリーマアムを補給する僕の前に現れたのは「楽しんでもらえましたか?」って誰この人……まさかこの細い人、マキシマムザ亮君? 痩せてる。RIZEのメンバーと言われても信じるぞ。天の声は亮君だったんです。ということは、ずっとどこかで見てたわけですね。どんだけ付き合うんだよ。ていうかなんでそんなに痩せてるんだよ。

「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」視聴会の様子をモニタで確認するマキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)。

それから亮君の解説付きで以前のアルバム「耳噛じる」と、リメイクされ今回のパッケージに同封された「耳噛じる 真打」の聴き比べ大会になりました。隣に座った男前が、亮君の話を食い入るように聞いています。そして小さくヘドバンしています。小刻みにヘドバンしています。なんなんだこの男前は。それにしても解説を加える亮君の1曲ごとにかける執念たるや。

そのあと、亮君と市ケ谷の居酒屋に向かいました。初対面です。僕は音楽業界の人間でもなければ大ファンでもありません。いったい何を話せばいいんだ。ふと足下を見ると、亮君は例のものを履いています。亮君は、これまでの人生で1億回は聞かれただろう、「いつも便所サンダルなんですか?」という僕の質問にもニコニコと答えてくれました。これだけで、この人の優しさが痛いほど茶色いゴムを通して伝わってきます。

亮君、田中健太郎さん、このスタートアップDISCのクリエイティブディレクターであるオカベさんたちと飲んだ市ケ谷の居酒屋、そこでは酔っぱらってオッサン全員でダメチンポの話しかしてません。ただ、その中で亮君がポロッと言った言葉だけ覚えています。「俺、音楽でモテたいとか思わないんです。たとえ万が一女の人が抱いてって言ってきたとしても、違う、そうじゃない、俺は友達になりたいんだって思うんです。だってそうでしょう?」と。僕は、この人のことを信じられると思いました。

ウーロンハイをおかわりした亮君は、僕が書いた映画評のことをとても丁寧に話してくれました。あの回のここがよかった、あの回の文章が刺さった、と。僕はびっくりしました。この人は本当にものを作る人なんだ。一行、一文字、一リフ、そのすべてを命がけで作る人だから、こんな素人の僕が書いた何かにもそうやって向き合うんだと。僕は家に帰ってこの人の作った音楽を端から全部、絶対に全部聴きたい、と思いました。

帰り際、亮君は手を差し出してくれました。46歳の僕は握り返しました。でも僕はまだこの出会いの意味をこの時点では知りません。亮君を乗せた車が八王子へ去っていく中、タナケンさんが言いました。「もう一軒行きます?」。あんたどんだけお酒好きなんや。

マキシマム ザ ホルモン 映像作品「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」
[DVD3枚組+Blu-ray+CD] 2015年11月18日発売 / 7256円(税抜) / VAP / VPBQ-19093
「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」ジャケット
MAIN DISC 収録内容
  • ドキュメントオブ暴君。~今、明かされる真実の与田マコ~
  • マキシマム ザ ホルモン林間学校
  • 地獄絵図
  • MASTER OF TERRITORY~俺たちにマスはある!~
OFF SHOT DISC 収録内容
  • 2008年USツアー&EUツアー、ダイスケはん声帯手術後お見舞い、その他
  • 「小さな君の手」MV、箱男インタビュー、ホルモンお泊まり会、その他
  • ホルモン東北灯油大作戦、予襲復讐レコーディング&ツアー、その他
  • KNOTFEST USA2014、NY公演、南大沢東北こども応援大作戦、マッキンソープランド新作、その他
Blu-ray DISC 収録内容
  • “予襲復讐”ツアー
  • MV集
    爪爪爪 / maximum the hormone / 鬱くしき人々のうた / え・い・り・あ・ん / 予襲復讐
  • 野外フェスMV
    恋のスペルマ(野外フェス映像ver.) / my girl(“CHITSU "ジャンプver.)
  • スペシャル裏コンテンツ
    ~ナヲ出産密着ドキュメント~私が、ママになるまで… / 時空のはざま~消えたケータイ電話~ / 【R-18指定!?】実録!缶詰男~あの缶詰を開けるとき~ / 豪華共演!バンドマン総勢111名によるラジオ体操リレー / 検証!マキシマムザ合法トリップ~トリビュートオブOH!MYコンブ~
CD「耳噛じる 真打」収録曲
  1. 握れっっっっっっっっ!!
  2. ジョニー鉄パイプIII
  3. アバラ・ボブ <アバラ・カプセル・マーケッボブ>
  4. 薄気味ビリー ~濃気味再録編~
  5. 人間エンピ(2015mix)
  6. もっとポリスマンファック
  7. パトカー燃やす ~卒業~
マキシマム ザ ホルモン

1998年八王子にて結成。日本語を独自の語感表現で操り、意味不明に見えて実は奥深いメッセージ性を持つ強烈な歌詞と、激しいラウドロックにポップなメロディを融合させたサウンドスタイルが特徴で、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)、ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)、上ちゃん(4弦)、ナヲ(ドラムと女声と姉)の4人からなるロックバンド。2011年3月にリリースしたトリプルA面シングル「グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011~2011」はオリコン週間ランキングで2週連続の1位を獲得(同年9月をもって廃盤)。6月にはフランス最大のメタルフェス「HELLFEST」へ出演し、自身がヘッドライナーとなるヨーロッパツアーを全会場ソールドアウトさせるなど海外からの評価も高い。「SUMMER SONIC 2011」ではRED HOT CHILI PEPPERS、X JAPANらと並びメインステージに出演し3万人を魅了。2012年は「矢沢永吉デビュー40周年イベント ‐BLUE SKY」や東北で開催されたHi-STANDARD主催「AIR JAM 2012」などの国内FESに多数出演している。2013年5月にはオジー・オズボーン主催の「Ozzfest Japan 2013」でBLACK SABBATH、SLIPKNOT、TOOLらと共演。同年7月にアルバム「予襲復讐」をリリースし、2015年11月に映像作品「Deka Vs Deka~デカ対デカ~」を発表した。2015年6月よりナヲ(ドラムと女声と姉)の妊活のため5月末日よりライブ活動を一時休止している。