ナタリー PowerPush - KREVA
脳にスペース 心にスペース 余裕とスキマの傑作誕生
KREVAが通算6枚目となる新作フルアルバム「SPACE」をリリースする。アルバムには「OH YEAH」「Na Na Na」「王者の休日」といったシングル曲と、曲間の“スペース”を埋めるインタールードなど全15トラックを収録。アルバム完成を記念して、KREVA本人に話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也
紅白にいつ呼ばれてもいいように
──まずはこのアルバムのコンセプトから聞かせてもらえますか?
最初からとにかく明るいアルバムにしようって、それだけは決めてましたね。「GO」(2011年9月発売)が暗かったからってわけでもないけど、震災を経てあのアルバム作って。次はみんなを盛り上げるようなものがいいなって思ったんですよ。自分も盛り上がりたいと思ったし。
──じゃあ意識して明るい方向に?
はい。自分が曲を作るときって、切ない感じのコード感、胸がキューッとなるような感じを選びがちなんです。だけど今回はもっと明るさとか気持ちよさを意識してトラックを作っていったというか。
──KREVAさんが作る切ない曲も好きですけどね。
俺も好きだけど(笑)。でもそういうのは今までもいっぱいやってきたし、切ない曲で盛り上がるよりも、みんなで笑顔になれるような曲がやりたかったんです。
──確かにシングルの「OH YEAH」も「Na Na Na」も、明るくて広がりのある楽曲です。
「OH YEAH」「Na Na Na」のときは紅白出場を狙ってて。高齢の人や子供も歌えるものっていうのを考えていました。サウンドもデカく広く、みたいな。
──昨年春の東京国際フォーラムのライブでは「ヒットアルバムを作って紅白に出たい」みたいなことを、リップサービスも込みかもしれませんが、言ってましたよね。その自分の発言は意識してました?
いや、まあヒットさせたいっていうより、やったことないことにチャレンジしていくのが好きなんで。
──じゃあ売れたいっていう気持ちは……。
いや、そこはめっちゃありますよ(笑)。紅白も出たいし!
──あはは(笑)。
でもね、出たいって言ってすぐ出れるもんじゃないっていうことはわかりました。そんなに甘くないと思ったし。だからどっちかっていうと常に準備しておこうかなと思って。変に狙っていくより、いつ呼ばれても「あ、いいっすよ」って言って出ていけるような曲を作っていく。妥協なく常に100%自分のやりたいことをやって、それで呼ばれるのが一番いいじゃないですか。それをやろうって決めました。
ブレイクビーツ+EDM的シンセサウンド
──紅白の話はともかくとしても、この「SPACE」というアルバムはすごく幅広い層に伝わる内容だと思うんです。
ありがとうございます。
──前作の「GO」はもっと緊張感のあるアルバムでしたよね。
確かに、シリアスっていうか。
──その前の「OASYS」(2010年9月発売)もちょっと実験的な面があって。
そうですね。
──どれもすごくいいアルバムでしたけど、確かにみんなが笑顔で盛り上がれるのはこの「SPACE」だという気がします。
最初言ってた明るいアルバムっていう狙いが、作ってくうちにどんどん明確になってきて。「OH YEAH」のサウンドが評判よかったんですよ。レコードからサンプリングしたブレイクビーツのドラムに、EDMで鳴ってるような流行りのシンセがあわさるっていうのが。この感じあんまりほかにないし突き詰めていこうと思って。今のヒップホップは全体的に808みたいなサウンドがほとんどだけど、やっぱりブレイクビーツの説得力みたいなのはあるんですよ。だからサンプリング用のレコードをまた新たに買ったりして、そこからちゃんと1個1個サンプリングしてサウンド組み立てていくっていうのをやっていました。それが今回ちゃんとうまくいったと思ってます。
──なるほど。
あとやりたかったのは、超ミニマルなループから一気に広がる曲展開。「俺は Do It Like This」も「調理場」もそうだし、「Link」もそう。自分の中で流行っていて、今回はそういう構成が多くなってます。
- ニューアルバム「SPACE」 / 2013年2月27日発売 / ポニーキャニオン
- 「初回限定盤」[CD+DVD] / 3300円 / PCCA-06909
- 「通常盤」[CD] / 2800円 / PCCA-06910
- 「完全限定生産盤」[CD+DVD+グッズ] / 6908円 / PCCA-06908
CD収録曲
- space4space 1
- SPACE
- Feel It In The Air
- ma cherie
- 王者の休日
- space4space 2
- 俺は Do It Like This
- 調理場
- 言ってなカッタカナ?
- OH YEAH
- space4space 3
- Space Dancer
- Link
- space4space 4
- Na Na Na
完全限定生産盤 / 初回限定盤DVD収録内容
- ビデオクリップ「OH YEAH」「Na Na Na」「王者の休日」(color ver. / monochrome ver.)
- メイキング映像「王者の休日」「SPACE」
- トレーラー「908 FESTIVAL」
KREVA(くれば)
1976年、東京都江戸川区育ち。BY PHAR THE DOPEST、KICK THE CAN CREWでの活動を経て2004年にソロデビュー。2006年2月リリースの2ndアルバム「愛・自分博」はヒップホップソロアーティストとしては初のオリコンアルバム週間ランキング初登場1位を記録。同アルバムのリリースツアー最終日では初の東京・日本武道館公演も開催する。2011年にはヒップホップ音楽劇「最高はひとつじゃない」の音楽監督も担当。2012年9月には埼玉・さいたまスーパーアリーナで「908 FESTIVAL」と題した大型イベントを主催し大成功に収める。その確かな実力でアンダーグラウンドシーンからのリスペクトを集める一方、久保田利伸、草野マサムネ、布袋寅泰、古内東子、三浦大知、坂本美雨らメジャーなアーティストとのコラボも多数。ラッパーとしてのみならずビートメーカー、リミキサー、プロデューサーとしても内外から高い評価を受けている。2013年2月に6thフルアルバム「SPACE」をリリース。3月29日から全国ツアー20カ所22公演開催。