音楽ナタリー Power Push - 小松未可子
みかこしはご機嫌ナナメ!? 苛立ちと闘争の「群青サバイバル」誕生の裏側
小松未可子の7thシングル「群青サバイバル」が8月26日にリリースされた。
「群青サバイバル」の表題曲は小松が主演するアニメ「青春×機関銃」のエンディングテーマ。i-depのナカムラヒロシがエモーショナルなギターロックを作り上げ、小松自らそのサウンドに煽られたかのように現状に苛立つヒロインの姿を書き上げた、まさに「異色作」といった趣きの1曲だ。
果たして「群青サバイバル」はいかにして生まれたのか? そして小松は何に苛立っているのか? 彼女に聞いた。
取材・文 / 成松哲 撮影 / 佐藤類
怒り満点ですもんね
──CDのリリースは2014年11月の……。
「Latimer road」以来ですね(参照:小松未可子「Latimer road」特集)。
──だから皆さん新曲を待っていた証拠だと思うんですけど「『群青サバイバル』のアートワークが公開されました」(参照:みかこし「青春×機関銃」EDシングルジャケで機関銃構える)というニュースを出したら、初回限定盤と通常盤のジャケット写真が音楽ナタリーのその日の画像ランキングの1位、2位になりまして。
おおっ! すごいっ!
──で、当日の3位が電気グルーヴの写真で、4位がその電気グルーヴのドキュメンタリー映画を撮る大根仁監督、5位がベッド・イン(笑)。
あはははは(笑)。濃いですね。
──ただ小松さんのこの曲も負けず劣らず“濃い”ですよね。端的に言ってビックリしました。
怒り満点ですもんね(笑)。
──ですよね(笑)。「Latimer road」がオーガニックで陽性なアレンジに乗せて、傷付いた人を優しく楽しく迎え入れることを歌うパーティチューンだったのに対して「群青サバイバル」はまさにアングリーミュージック。ドマイナーのエモくてラウドなギターロックに仕上げています。
あっ、サウンドについては私もビックリしました。デモをいただいてから「曲は誰が作ってくださったんですか?」って聞いたら「ナカムラ(ヒロシ)さん」って答えが返ってきたので「ええーっ!?」って(笑)。普段ご自身の名義で作っている楽曲や、提供していただいている曲の印象とはある意味真逆でしたから。
──i-depというハウスプロジェクトの人であり、「Latimer road」の作家さんですもんね。
なので初めてデモを聴いたときは「ナカムラさんってこういう曲も作られる方なんだ」「なんだろう? この『全部壊したい』みたいな衝動で書かれた曲は」という印象を受けました。……あっ! ナカムラさんに聞いておけばよかったですね。「最近何かイヤなことがありました?」って(笑)。
──はははは(笑)。小松さんがその曲に乗せて書いた詞も、先ほどおっしゃっていた通り“怒り満点”ですけど「最近何かイヤなことがありました?」。
あはははは(笑)。全然そういうことではなくて、「青春×機関銃」のエンディングテーマだから、というほうが正しいですね。アニメに出てくるキーワードもけっこう使っているんですよ。
なぜ立花の言葉は突拍子もなく聞こえるのか?
──確かに「青春×機関銃」はサバイバルゲームをテーマにしたアニメ=ある種の戦闘モノではあるけれど、小松さん演じる、周りから男の子だと思われているヒロインの立花蛍はちょっと猪突猛進すぎるというか(笑)。しょっちゅう「立花は!」って己の正義を説くんだけど、たいてい突拍子もない。
「なぜ立花の言葉が突拍子もなく聞こえるのか?」といったら、立花は真面目でまっすぐすぎるからなんですよね。あと自分の中に潜む闘争心を正当化するための言葉、正義という裏付けを自分に与えるための言葉を探しているという面もあるんだと思うんです。
──確かに自身が悪と認めた相手と対峙すると我を忘れてしまう戦闘的なキャラクターでもありますね。
「立花は!」から始まる言葉の数々は、その剥き出しの本能を正当化するためのものでもあるんですよね。しかもナカムラさんのデモがあの音でしたから、闘いの中にいる蛍の姿、衝動に突き動かされている蛍の姿を歌いたいなと思って。MVもそういう作りになっているんですけど「イントロからすでに戦闘中でハアハア息切れしている感じの曲だな」というイメージがあったので、それに沿って書き始めたら、どんどん言葉が鋭くなっていった感じですね。
──立花蛍のコメディリリーフ的な側面ではなく、彼女に潜む戦闘的な一面にフォーカスしたのはなぜ?
エンディングテーマだったからというのも理由の1つかもしれませんね。Pandaさん(James Panda Jr.)が書いたオープニングテーマは、アニメで共演している前野(智昭)さんと松岡(禎丞)くんと3人でキラキラした青春を歌う曲だったから、その真逆であり「青春×機関銃」の一面でもある闘争心を歌ってもいいかな?みたいなことは考えました。あとDメロで転調があるから、そのちょっとホッとできるDメロで素の立花の姿を描けばAメロからサビまでは心置きなく闘争心満載の鋭い言葉を書けるな、って(笑)。
次のページ » 目が群青に染まり、サルビアが赤いワケ
- ニューシングル「群青サバイバル」 / 2015年8月26日発売 / STARCHILD
- 青春盤 [CD+DVD] 1944円 / KICM-91622
- 機関銃盤 [CD] 1296円 / KICM-1622
- アニメ盤 [CD] 1296円 / KICM-91621
青春盤および機関銃盤 CD収録曲
- 群青サバイバル
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:ナカムラヒロシ] - トウキョウ・ミッドスカイ
- 群青サバイバル off vocal ver
- トウキョウ・ミッドスカイ off vocal ver
アニメ盤 CD収録曲
- 群青サバイバル
[作詞:小松未可子 / 作曲・編曲:ナカムラヒロシ] - Trouble shooting
[作詞・作曲・編曲:SiN] - 群青サバイバル off vocal ver
- Trouble shooting off vocal ver
青春盤 DVD収録内容
- 「群青サバイバル」MUSIC CLIP
小松未可子「ハピこし!ライブ2015」
2015年11月7日(土)
東京都 TOKYO DOME CITY HALL
小松未可子(コマツミカコ)
1988年11月11日、三重県生まれの声優、歌手。2010年にアニメ「HEROMAN」の主人公ジョセフ・カーター・ジョーンズ役で声優としてのキャリアをスタート。2012年1月より放送のアニメ「モーレツ宇宙海賊」では主人公・加藤茉莉香の声を務め、4月には同アニメのイメージソング「Black Holy」で個人名義による歌手デビューを果たす。7月にはミニアルバム「cosmic EXPO」、11月7日に2ndシングル「冷たい部屋、一人 / 夏至の果実」を、2013年2月13日には1stフルアルバム「THEE Futures」をリリース。同7月には3rdシングル「終わらないメロディーを歌いだしました。」を、12月には4thシングル「虹の約束」を発表する。またその一方で2012年、2013年には埼玉・さいたまスーパーアリーナでの「Animelo Summer Live」に、2014年1月には東京・日本武道館での「リスアニ! LIVE 4 SUNDAY STAGE」に出演するなど、大規模フェスにも数多く招聘される。そして同年11月、ナカムラヒロシ(i-dep)とサイトウ“JxJx”ジュン(YOUR SONG IS GOOD)を制作陣に迎えたシングル「Latimer road」をリリース。そして2015年8月、ナカムラのスコアによるシングルにして主演アニメ「青春×機関銃」のエンディングテーマ「群青サバイバル」を発表した。