ナタリー PowerPush - knotlamp

納得の2ndアルバムついに完成 フロントマンKEITが制作の裏側を語る

今年3月に赤坂BLITZワンマンライブを成功させ、数々のフェスにも参加するなど絶好調なknotlampが、2ndフルアルバム「Dot of the Galaxy」を9月7日にリリースした。実は本作、もともと6月後半に発売を予定していたが、「もっといい作品にするために」と予定を変更。ソングライターKEIT(Vo, G)の体調不良も乗り越え、苦難の末に作り上げられた。その甲斐あって、ポップなメロディを軸とした爽快な勢いに加え、ストーリーやメッセージも聴き手を惹きつける力のある、会心の作に仕上がっている。今回のインタビューでは、この力作に対する思いをKEITが語ってくれた。

取材・文/遠藤妙子 インタビュー撮影/中西求

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そのまま出したら絶対に後悔すると思った

──いよいよ2ndアルバムがリリースとなりますが、元々は7月に発売を予定されてましたよね。まずはこの延期について訊きたいんですが。

もともとは6月の後半にリリースだったのが7月にずれて、それでもやっぱりダメだって判断して9月まで延ばしてもらったんです。7月の時点でリリースしようと思えばできたけど、納得のいかないものを出すより、延期してでも納得のいくものを出そうと。もちろん、決まった発売日までに作り上げることは大事なことだけど、そのまま出したら絶対に後悔すると思ったんです。「これで良かった」ではなくて「これが良かった」「こうするしか成し得なかった」ってアルバムにしたかったんです。

──最初の時点で納得がいかなかった理由というのは?

インタビュー写真

作品を作るたびに、前よりももっといいものを作ろう、もっと突き抜けようって思ってるんですけど、今回、今まではOKだったことがOKだとは思えなくなって。OKの判断基準が自分の中ですごく上がってたんです。ハードルを上げすぎてしまった。自分の中でハードルや理想を作り上げすぎて、理想と自分たちのスキルが合致しないことが受け止められなくて。それで、作ってはダメ作ってはダメってことを繰り返して。で、糸口が少しずつ見えてきたときに延期を決めたんですね。

──ハードルを上げすぎたけど、そこに段々近付いている手応えを得たからこその延期で。

ええ。でも、そう簡単に理想どおりになるわけではないんですよね。理想はまだまだ先にあって、だからバンドを続けていくわけで。でもだからって理想を下げたわけではなくて。ハードルの判断基準が自分の中だけのものだったんですよね。例えば1曲目の「Into the sky」と2曲目の「Libra」は、僕は最初はボツだと思ったんですけど、他のメンバーは「これがボツだったらやってらんないよ」って言って。

──あぁ、それはそうですよ。だって1、2曲目は勢いがあるしポップだし、knotlampらしい曲だと思うし。

でも僕は最初、今までのknotlampらしい曲だからこそボツだと思ったんです、もっと突き抜けられるはずだって。だから僕の感覚、設定しているものが高すぎたってことなんですよね。夢見ることは簡単じゃないですか。そこに届かないのに無理矢理にでも最高のアルバムにしたいって思って、憧れと現実を無理矢理にでも合致させようとして。でもそこでメンバーが「これがボツなのはおかしい」って言ってくれて。ベースのTOHRUとは16年ぐらいつるんでる仲なんですけど、「『Libra』は16年間で一番いい曲だ」って言ってくれて。だからメンバーの言葉でいい意味で現実が見えたんですよ。実際、1、2曲目は僕が頭で描いてたものよりバンドで演奏したらずっと良くなった。バンドでやったことによって、自分の曲が本当にいい曲だと思えるとこまでこれた。自分の理想だけじゃなく、バンドでやる意義が改めてわかったし。なので、今作は今の自分たちのスキルでの最高な作品ができたと思います。

──アルバムを作る初期段階では、理想の部分やアーティストとしての自分が先走っちゃったんですね。

そうなんです。作詞作曲は僕なので、自分がちゃんとした上でバンドに持っていかないと、自分がしっかりジャッジした上でやらないと申し訳ないって気持ちが出てきてたんでしょうね。それはいい面もあるけど悪い面もあるかもしれなくて。

──理想ばかりに目が向くと、今までの良かったものを失う可能性もありますもんね。

そうなんですよね。そこに気付けた。もちろん、理想はこれからもずっと追い続けますけど。

「人間もいいな」って思えるようになった

──レーベルはこの決断をすぐに受け入れてくれましたか?

はい。みんな僕らに絶対的な信頼感を持ってくれているので。延期したことによっていろいろ迷惑もかかるけど、いいものを作るってことを信じてくれて、「納得がいくまでやりなよ」って言ってくれたんです。だからもう、延期までしたからには絶対にいいものを作ろうと。

──てことは、ハードルをさらに上げちゃって(笑)。

そうなんですよね(笑)。でも延期を決めたあとは「やってやるぜ」って気持ちですよね。「絶対に負けんよ」って。メンバーも僕が大苦戦してたのを見て「俺たちがしっかりしないと」って奮い立ってましたし。だから濃密でいい空気の中、いい作品が作れた。

──knotlampにとっていい作品っていうのは、ただ自分たちが好きに作るというより、リスナーの存在がすごく関係してると思うんですけど。

インタビュー写真

そのとおりです。ステージに立って目の前にファンがいて、そのファンが笑顔になるためならなんにでもなりたいって思うのが、僕はアーティストだと思うんですね。マニアックな方向に進んで自分の理想だけを追って、そこにファンがついてくるっていうのもカッコイイとは思うんですけど、僕はちょっと違って。僕はファンが喜ぶならなんにでもなっていきたいし、どういう色になってもいいと思ってるんですよ。音楽的な向上はしていきたいけど、それはファンと向き合うからこそ思うことで。

──やっぱりライブでお客さんの笑顔を見たら、もっと笑顔にさせたいって思うんでしょうね。

ホントにそうなんですよ。僕は人間が大嫌いだったんですけど、ライブをやってから、「人間もいいな」って思えるようになったんですよ。

──え? KEITさんって我は強そうだけど人間はメチャメチャ好きな方だと見受けますが。じゃあ、バンドを始めてから人間に対する見方が変わっていった?

そうです。もともとロックが好きなのは、アンチ精神があるからで。だから昔は周りの人間の言うことなんか全然信用しなかったし。自分らだけでやってるからこそロックのカッコ良さがあるって思ってたから。中学・高校時代もクラスの連中はカラオケ行ってJ-POPを歌ってたけど、自分はロックが好きでバンドやってる、自分だけがカッコイイものをわかってる、そんな自分が好き、みたいな。まぁ、自己満足ですよね。でもそうやってバンドやってて、だんだん共感してくれる人も増えてきて。そういう中で自分も変化していった。変化していったというか、自分は間違ってないんだなって思って、それで音楽を通して自分も心を開いて。そうやって聴いてくれてる人がいたおかげで今の自分があると思うし。だから全力でファンに向かって音楽を投げかけたいんですよ。

ニューアルバム「Dot of the Galaxy」 / 2010年9月7日発売 / LD&K Records

  • 初回限定盤 [CD+DVD] / 2990円(税込)/ R3RCD-095 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] / 2415円(税込)/ R3RCD-096 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. Into the sky
  2. Libra
  3. Twisted arrows
  4. Fragment
  5. Everlasting stars
  6. My world, your world
  7. A thousand sorries
  8. Liberty Bell
  9. Coda
  10. Aerosphere
  11. Until you sleep
DVD収録内容

2010.3.25@赤坂BLITZ「THE GROWING SQUARE」

  1. LAST TRAIN -新しい朝-
  2. Everlasting Stars
  3. Another Escape 
  4. 遠くへ
knotlamp(のっとらんぷ)

2007年にLD&K Recordsより1stミニアルバム「Blind Side」をリリース。数多くのロックフェスやライブイベントに出演し、メロディアスな楽曲と強力なライブパフォーマンスで注目を集める。メロディックパンクシーンを牽引する存在としての期待が高まる中、2010年9月7日に2ndフルアルバム「Dot of the Galaxy」を発表。ジャンルの枠に収まらない音楽性を獲得している。