音楽ナタリー PowerPush - 梶浦由記
人生を賭けて描く1つの絵
梶浦由記が最新ライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 elemental Tour 2014.4.20@NHK HALL+Making of elemental Tour 2014」をリリースした。本作には今年2月から開催された全国ツアーのファイナル公演と、ツアーのドキュメント映像が収録され、独自の世界を描き出す梶浦ワールドが多角的に堪能できる内容となっている。
今回ナタリーでは本作の発売を記念し、梶浦由記にインタビューを実施。デビュー20周年を迎えた昨年からの活動を振り返ってもらいつつ、ライブBlu-rayの見どころもたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 佐藤類
ご褒美もらった子供みたいに
──最新ライブBlu-rayを通して、濃密な梶浦ワールドにどっぷり浸ることができました。
ライブはね、もうホントに楽しくてしょうがないんですよ(笑)。
──ライブ中の表情からそれはしっかり伝わってきますよね。
もうバレバレですよね(笑)。ご褒美もらった子供みたいな顔してやってるなっていつも思います。あんまり仕事感覚がなくて本当に楽しくて。ライブが終わっちゃうと寂しくてしょうがないです。こうやって映像になったものを観ても、楽しかった時間を思い出して遠い目になりますね(笑)。
──今回はそんなライブBlu-rayのお話を中心に伺おうと思うのですが、その前に昨年からの流れを軽く振り返っていただこうかなと思っていまして。2013年は梶浦さんにとってデビュー20周年という大きな節目でしたよね。
はい、そうでした。
──同時にFictionJunctionとしての活動は10周年でした。
ああ、そうだったんですね。
──そんなアニバーサリーイヤーは梶浦さんにとってどんなものになりましたか?
いい節目になったとは思いますね。20年もの間、ずっと聴きたいと思ってくれるファンの方がいらしてくださったことがほんとにありがたいなってすごく思いましたし。でもだからといってそんなにしみじみするようなこともないし、気負いもなくって。結局10年とか20年って通過点でしかないですからね。ただ、そういう周年みたいなことになると大きな催し物をやっても許されるところがあるじゃないですか。それは単純にラッキー!っていう感じでしたけど(笑)。
──それが昨年5月11日に開催された「Yuki Kajiura LIVE Vol.#10 "Kaji Fes.2013"」につながったわけですね。
はい。無謀な長時間ライブをやることに(笑)。「Kaji Fes」は通算で5時間半くらいのライブになったのですが、あっという間に終わってしまった感じでしたね。途中、5曲くらい飛ばしたんじゃないかと本気で思ってしまうくらい、本当にあっという間で。文化祭みたいなもんですよね。準備期間はすごく楽しみなんだけど、本番はすぐに終わってしまうからうれしいんだか悲しいんだかっていう。
──そこで披露された数々の楽曲群は、この20年の間にご自身から生み出されたものなわけで。それを考えると感慨深いところもありそうですが。
そうですね。自分が好きで作った曲を、いまだにたくさんの人たちがお金と時間をかけて聴きに来てくださるということは奇跡のような気がしてしょうがないんです。いい夢見てるんじゃないかな、それが覚めたらどうなるのかなって思ってしまう気持ちは「Yuki Kajiura LIVE Vol.#1」のときからまったく変わらず、常にありますね。
FictionJunctionは“はずみ”でやっている
──その後、今年に入ってすぐにFictionJunctionとしてひさびさのアルバム「elemental」がリリースされました。
今、私は歌モノのユニットとしてFictionJunctionとKalafinaをやらせていただいてるんですけど、Kalafinaのほうはある程度、計画的に進めてるんです。でもFictionJunctionはけっこうはずみでやっているところがありまして(笑)。
──はずみですか(笑)。
そう。なんか時間があったらやる、みたいな。わりとラクな感覚でやってるんです。アルバムに関しては、シングル曲が溜まっていたので、出そうと思えばいつでも出せたんですよ。でも、時間がないから先延ばしにしていたんですよね。
──そこからリリースに踏み切ったのには何か理由があったんですか?
先にツアーが決まったんですよ。で、じゃあツアーをやるならアルバム出そうか、みたいな流れになりました。普通は逆だと思うんですけどね(笑)。まあでもツアーをやることで勢いがついたのはよかったと思います。じゃないといつまで経っても出さないような気もしていたので。ずいぶん溜まっていたシングルに新曲3曲を加えた形で、ツアー直前、ギリギリになんとかがんばって出した感じでしたね。
──そういった流れを考えると、新曲はライブを意識して制作して?
いや、そうでもなかったですね。結果的にライブではもちろんやることにはなったんですけど、新曲は3曲くらいしか入れられないという話になったときに、だったら思い切り好きなことをやろうと思ったんです。ハジけちゃえ!と思って(笑)。なので、ほんとに何も考えず、頭を使わずに遊んで作った3曲なんですよ。そういうお手軽な作り方もFictionJunctionだからいいかなっていう。
──なんの制約もない曲作りというのは、難しくはないですか?
確かにタイアップの曲よりは難しいところはあると思います。タイアップの場合、規制があるぶん、テーマは定まってきますからね。ある程度、取っ掛かりはつかみやすいというか。まあでも今回の場合は、時間があまりない中で作ったのがよかった部分はあったと思いますね。「はい、今自分がやりたいことは何?」って問いかけて、「じゃ上から早いもの順で3曲作ります!」みたいな、勢いでバババッと作れたので。
──なるほど。ということは、梶浦さんの中には常に自分のやりたいことが順番待ちをしている感じなんですかね。
それはどんなミュージシャンの方でもそうなんじゃないですかね。その時々でやりたいことっていうのは、自分の中に絶対あると思うから。逆に、やりたいことがありすぎて、どれを一番にやっていいかわからないことのほうが多いような気がします。それが今回はたまたま時間的な理由でパッと取り出すことができたんだと思いますね。
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- ライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE vol.#11 elemental Tour 2014 2014.04.20 @NHK Hall + Making of elemental Tour 2014」 / 2014年9月24日発売 / 7020円 / FlyingDog / VTXL-21
- ライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE vol.#11 elemental Tour 2014 2014.04.20 @NHK Hall + Making of elemental Tour 2014」
収録内容
- overture~elemental
- storytelling
- forest
- Liminality
- in the land of twilight, under the moon
- Luminous Sword
- 花守の丘
- Credens justitiam
- Historia:opening theme
- M23(空の境界「未来福音」)
- ひとりごと
- storm
- eternal blue
- 時の向こう 幻の空
- 野原
- rising up
- 凱歌
- absolute configuration
- 君がいた物語
- stone cold
- Distance
- zodiacal sign
- Parallel Hearts
- Sweet Song
梶浦由記(カジウラユキ)
1993年にユニットSee-Sawでデビュー。約2年の活動ののちソロ活動を開始し、テレビ、CM、映画、アニメ、ゲームなどさまざまな分野の楽曲提供、サウンドプロデュースを手がける。2002年にはボーカル石川千亜紀とSee-Sawの活動を再開し、テレビアニメ「NOIR」「.hack」関連の楽曲を担当した。2003年7月にはアメリカで1stソロアルバム「FICTION」を発表。同年よりFictionJunction名義のプロジェクトをスタートさせ、2008年からはボーカルユニットKalafinaの全面プロデュースを手がけている。「Yuki Kajiura LIVE」と題したライブを不定期に行っており、2014年2~4月にはツアー形式で「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 "elemental"」を実施。9月にはツアーファイナルとなった東京・NHKホール公演とツアーメイキング映像を収めたライブBlu-ray「Yuki Kajiura LIVE Vol.#11 elemental Tour 2014.4.20@NHK HALL+Making of elemental Tour 2014」がリリースされた。