ナタリー PowerPush - いきものがかり
初ベスト盤「いきものばかり」に込めた 4年8カ月の輝くヒストリー
3人で歌う曲を表立たせたかった
──内容面では、本作は新たなファンを呼び込むのに最適な内容になっていますが、これまでのファンにとってもうれしい楽曲が満載されていますね。まずは、リアレンジ&再レコーディングされた“2010 version”の「夏・コイ」と「雪やまぬ夜二人」の収録。
山下 この2曲をリアレンジしたいなっていう意見が一致したんですよね。僕たちには3人で歌う曲っていうのが何曲かあるんですけど、「夏・コイ」はその代表的な1曲なので、これはマストで入れましょうということになって。
──出だしが男性の声っていう部分でビックリする人も多そうですよね。
水野 そうですよね。いきなりですからね(笑)。
山下 昔からやってはいるんですけど、なかなかそれが表立つ機会がなかったんで、今回はいいタイミングかなって。
──「夏・コイ」をリアレンジするのはこれが2度目でもありますよね。
水野 そうなんですよ。インディーズ時代がオリジナルで、メジャーの1stアルバムのときに一度やってるんで。何度がんばるんだっていう(笑)。
吉岡 元々、2人は歌うの好きですからね。もう1回ぐらいがんばるかもね(笑)。
──「雪やまぬ夜二人」に関しては?
山下 いきものがかりって冬の曲があんまりないんですよ、実は。なので、リリース時期が11月っていうこともあるので、ちょうどいいかなと思って。アレンジは松任谷正隆さんに「YELL」ぶりに引き受けていただきました。多少クリスマス感を入れてくださいっていうリクエストはしましたね。
「スピリッツ」は自分のために作った曲
──あとは、過去に配信でリリースされた「今走り出せば」と「スピリッツ」が初パッケージ化されています。ファンは喜んでくれますよね、きっと。
山下 けっこう要望もいただいてたんで、やっぱりこのタイミングかなと思って。配信はフルコーラスではなかったから、ダウンロードしてくれた人でも喜んでくれるかなって。そういう要素はベストアルバムだけど絶対に入れたかったんですよね。位置づけとしてはオリジナルアルバムに近い感覚というか。
吉岡 「今走り出せば」は、ほっち(山下)がすごく得意な感じの曲ですね。メロディに対して言葉がぽんぽんはまっていく感じが歌っててもすごく気持ちいいんですよね。で、「スピリッツ」は、リーダー(水野)の野球熱が爆発した曲(笑)。好きすぎて、燃えすぎてるよね。
──プロ野球中継のテーマソングになってましたもんね。
水野 聴き手のために音楽を作るっていうのがいきものがかりの軸なんですけど、これはもう自分のために作った曲(笑)。何度燃えてるんだっていうぐらい「燃えてる」っていう歌詞を使ってますからね。
吉岡 ディレクターにも「おまえ燃えすぎだろ!」って言われてたし(笑)。
──あはは。で、さらには「風と未来」という新曲も収録されています。この曲のメッセージがいいんですよね。ベストを出す今のタイミングで、いきものがかりとしての未来に向けた意志がしっかり描き出されていて。
山下 ね。書いてるときには意識してないんですけど、次を見ていきましょうっていう曲なので、確かにそこにひとつ意味がつけられるのかなって気はしますね。
吉岡 今の自分たちに当てはまってるなって思います。だからこれからそういう心持ちで歌っていくこともできるのかなって思いますね、すごく。
「いきものばかり2」を出せるようにやっていきたい
──この曲で描かれているような、今現在、思い描いている未来って具体的にあったりします?
水野 正直、明確に何かビジョンが見えているわけではまったくないんですよ。ただ、ありきたりなことを言えば、「いきものばかり2」を出せるように次もちゃんとやっていかなきゃなっていうことぐらいで。続けていくことが一番重要だし、一番困難なことだと思うんですよ。いつ終わってもおかしくないっていう危機感は、インディーズ時代からずっと持っているので。なので、気持ちがブレないまま、いろんな曲を出して、ライブを重ねて、ちゃんと積み重ねていくことが地味だけど大事だし、そうするためには今後どうしていったらいいのかっていうことを考える時期なのかなとは思ってます。
──取り急ぎ、目の前にはアリーナツアーという初めての経験も控えていますしね。
吉岡 前回の全都道府県ツアーはセットがシンプルで、楽曲を楽しんでもらうっていう内容だったんですよ。なので、今回は会場も大きくなるし、今まで来てくれた人にも驚いてほしいっていう気持ちが強くて。ちょっと違うぞってビックリしてもらえるような……そういうふうにします!(笑)
水野 ホールではできなくて、アリーナではできることっていっぱいあると思うので、そこにはちゃんと挑戦してみたいなとは思ってます。そういうふうにします!(笑)
DISC 1 収録曲
- SAKURA
- うるわしきひと
- 青春ライン
- 茜色の約束
- KIRA★KIRA★TRAIN
- ノスタルジア
- 未来惑星
- 夏・コイ-2010 version-
- タユムコトナキナガレノナカデ
- 今走り出せば
- 花は桜 君は美し
- ソプラノ
- 月とあたしと冷蔵庫
- ホットミルク
- コイスルオトメ
DISC 2 収録曲
- 気まぐれロマンティック
- ブルーバード
- じょいふる
- 心の花を咲かせよう
- YELL
- キミがいる
- ちこくしちゃうよ
- Happy Smile Again
- ありがとう
- 雪やまぬ夜二人-2010 version-
- くちづけ
- スピリッツ
- 風と未来
- 残り風
- なくもんか
- 帰りたくなったよ
いきものがかり
1999年結成。当初は地元・神奈川での路上ライブを中心に活動し、2003年にインディーズで初CDをリリース。2006年に発売したメジャー1stシングル「SAKURA」がスマッシュヒットを記録し全国区の人気を獲得する。2007年3月には1stフルアルバム「桜咲く街物語」を発表。切なくて温かい等身大のポップチューンが老若男女問わず幅広い層から強い支持を集めている。2008、2009年の大晦日には「NHK紅白歌合戦」に連続出場。バンド名は、メンバーの水野と山下が小学1年生のときに「生き物係」だったことから。