「Vu Jà Dé」バンドメンバー鼎談 高田漣×伊賀航×伊藤大地

左から高田漣、伊賀航、伊藤大地。

毎週日曜の25:00よりInterFM897で放送されている細野晴臣のラジオ番組「Daisy Holiday!」。この番組では「Vu Jà Dé」のリリースに際して、3週にわたってアルバムの大特集が展開された。特集の最終週である11月19日オンエア回では、ここ何年か細野とライブ活動を共にし、「Vu Jà Dé」のレコーディングにも参加した伊賀航(B)、高田漣(G)、伊藤大地(Dr)の3人が新作についての鼎談を行った。

ここでは、細野と音楽制作を共にした“当事者”たちが「Vu Jà Dé」の魅力について語ったこの鼎談をテキストでまとめている。

構成 / 音楽ナタリー編集部

どうアルバムにまとめるのかな

伊賀航(B) さて、では今回のテーマを発表します。メンバーが語る「Vu Jà Dé」。まずはお二人からアルバムを聴いた率直な感想をお願いします。どうですか?

高田漣(G) 僕らが参加したカバーサイド(DISC 1「Eight Beat Combo」)の内容は、ライブでやっているからある程度想像が付いていたんです。でもDISC 2「Essay」のほうはけっこうびっくりする曲が多くて。いろんな年代のものが入っていて。音もけっこう、今までの細野さんの作品とまたちょっと違う感じで、びっくりしましたね。

伊賀 音がすごく洗練されているって言うか。

高田 うん。そうですね。

伊賀 きれいな音になっているなと思っていました。どうですか? 大地くん。

伊藤大地(Dr) DISC 1のほうは、何年もかけてちょっとずつ録っていったじゃないですか。

伊賀 はいはい。

伊藤 そんな中、細野さんがアルバム作りに着手されてスタジオにこもってらっしゃるっていうのを聞いて。

伊賀 風の便りでね。聞きましたね。

伊藤 何年も前に録音したものは、だんだん俺らの記憶も薄れてきた頃で。そんな中で細野さんがどのようにアルバムにまとめるのかなって、すごい楽しみにしていて。

伊賀 確かに。

伊藤 だから2枚組って聞いたときに「おお!」って思いました。またそれが全然色の違う2枚で、いろんな色が散りばめられたようなアルバムで。ウチらもファンとして聴くじゃないですか。

伊賀 そうですね。

高田 うん。

伊藤 何回でも聴けるアルバムと言うか。

伊賀 2枚組って聞いたとき、初めはびっくりしましたね。

高田 ね。

伊賀 本当に成し遂げられるのかって(笑)。

一同 はははは(笑)。

伊藤 時間もきっとそんなになかったと思うんですけど。

高田 そうだよね。

伊賀 細野さんはすごい時間をかけてミックスとかをやられたっていう。

伊藤 ですよね。DISC 1のほうに自分たちが参加させてもらっていて、まあDISC 2にも参加した曲もあるんですけど、DISC 2はよりリスナーとして聴ける。そういう楽しみ方ができています、今のところ。

細野さんの思いのこもった曲

伊賀 さて、それではですね、まずはDISC 1「Eight Beat Combo」から漣くんのお気に入りの1曲を教えてください。

高田 全部普段から今もよくライブでやっている曲なんですけど……そうだなあ。まあ1曲目「Tutti Frutti」。

伊賀 いいですね。カッコいいですね、ホントに。

伊藤 これはもう、ライブでほぼ毎回演奏していると言っても過言ではない。

高田 そうだね。この曲、一番そうだね。確か京都で録ったのかな。

伊賀 京都精華大学。

伊藤 9月に。何年前ですかね、あれ。

高田 そうそうそう。ツアーの合間だったのもあるから、ライブのリハーサルも兼ねてスタジオに入って。レコーディング自体も「記録として」という感じで。そういうプロセスってあんまりほかの人のレコーディングではないから、そうやって録ったものがこうして作品として残ること自体がすごくうれしい。

伊藤 確かにそうですね。この曲はライブでやっていて自分たちもすごく盛り上がる。ノレる曲ですよ。

高田 うんうん。そういう曲ですよね、ホントにね。

伊藤 大体ワンマンライブの曲順の中間に位置して、前半のちょっとムーディなところからブギへつなげる橋渡し的な。

高田 そうだね。変わり目のときに大体やる。

伊賀 これ、ドラムは難しくないんですか?

伊藤 ドラムはね、楽しいんですよ。

伊賀 楽しいんだ。

伊藤 ライブでも長くやっているから、昔のリハ音源を聴くとテンポがけっこう違ったりとかしています。演奏内容はみんなそんなに変わらないと思うんですけど。細野さんも長くやられているし、アルバムの1曲目でもあるから、思いのこもった曲だと思うんですけど。

細野晴臣「初夏ツアー2017」東京・浅草公会堂公演の様子。 (撮影:平間至)

本当の意味で“レコード”

伊賀 続いて大地くんのDISC 1のお気に入りの曲は?

伊藤 自分はですね、5曲目「More Than I Can Say」。

伊賀 おー。なぜこの曲を?

伊藤 これもう、自分的にもすごくいい演奏だったなと。

伊賀 ベストテイク?

伊藤 ベストテイクって言うか、雰囲気があって。曲ももちろん好きですし。

伊賀 これはいつ頃録ったか覚えてる?

伊藤 うーん……。

高田 どっちにしても最近はあんまりライブではやってない。

伊賀 やってないよね。

伊藤 昔はしょっちゅうやっていたんですけどね。

高田 一時期すごくライブでやっていたイメージがあるね。2、3曲目とかに。

伊賀 確かに。最近はあんまりやってないですよね。

高田 この曲とか次に収録されてる「A Cheat」とか、その前の「Angel On My Shoulder」とかは、ここんとこのライブではやってなかったかもね。

伊賀 うん、確かに。

高田 だから僕も聴いていて新鮮な気がしたな。なんか。

伊藤 新鮮ですよね。「More Than I Can Say」は2015年6月に音響(音響ハウス)で録ってます。

伊賀 音響だね、そうだ。

伊藤 で、録ってるっているということは、きっとその前後でライブでもやっていて。

高田 うん。そうそう。DSIC 1はそういうライブの記録って言うか、ライブをしている中での場面を切り取ったもので、本当の意味で“レコード”って言うか。

伊賀伊藤 そうですね。

高田 だから自分らも覚えているようだけど、演奏って毎回変わっていくし微妙にニュアンスとかも違っていったりするから、新鮮に聞こえるよね。

伊賀 確かに。

高田 うん。大地くんの言うように、やっぱり毎回テンポ感も微妙に違うし、ムードも違う。だからこうやって改めてレコーディングされたものとして聴くと全然イメージが違うんですよね。

高田漣(タカダレン)
高田漣
1973年生まれのシンガーソングライター、ギタリスト。日本を代表するフォークシンガーの高田渡を父に持つ。スティールギターをはじめとする弦楽器奏者として、さまざまなアーティストとオールラウンドなセッションを繰り広げている。2002年に1stソロアルバム「LULLABY」をリリース。2008年には高橋幸宏、高野寛、原田知世らとpupaを結成し、アルバム「floating pupa」を発表した。2015年4月には父である高田渡の没後10年を機にトリビュートアルバム「コーヒーブルース~高田渡を歌う~」を、2017年10月にアルバム「ナイトライダーズ・ブルース」をリリース。
伊賀航(イガワタル)
伊賀航
1968年生まれ、宮城県出身のベーシスト。1996年に上京後、ソウルバンド・benzoに加入し、1998年にシングル「抱きしめたい」とアルバム「benzoの場合」をリリースする。2011年にバンドが活動休止して以降はサポートミュージシャンとして活躍。細野晴臣、星野源、曽我部恵一、Caravan、おおはた雄一、イノトモらと共演している。また長久保寛之(G)、北山ゆう子(Dr)らと結成したバンド・lakeのメンバーとしても活動中。
伊藤大地(イトウダイチ)
伊藤大地
1980年生まれ、東京都出身のドラマー。高校入学と同時にドラムを始め、卒業後はバンドを掛け持ちしながら活動を展開する。2000年にSAKEROCKを結成し、2002年にはKilling Floorに加入。2004年には野村卓史とグッドラックヘイワを結成する。現在は細野晴臣、星野源、安藤裕子、地球三兄弟、真心ブラザーズ、Salyu、坂本美雨らのライブサポートを務めるほか、シンガーソングライターのハシケンとのユニット・ハシケンmeets伊藤大地、奥田民生と岸田繁(くるり)とのバンド・サンフジンズのメンバーとして活躍。
細野晴臣「Vu Jà Dé」
2017年11月8日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
細野晴臣「Vu Jà Dé」

[CD2枚組]
3564円
VICL-64872~3

Amazon.co.jp

DISC 1「Eight Beat Combo」
  1. Tutti Frutti
  2. Ain't Nobody Here But Us Chickens
  3. Susie-Q
  4. Angel On My Shoulder
  5. More Than I Can Say
  6. A Cheat
  7. 29 Ways
  8. El Negro Zumbon(Anna)
DISC 2「Essay」
  1. 洲崎パラダイス
  2. 寝ても覚めてもブギウギ ~Vu Jà Dé ver.~
  3. ユリイカ 1
  4. 天気雨にハミングを
  5. 2355氏、帰る
  6. Neko Boogie ~Vu Jà Dé ver.~
  7. 悲しみのラッキースター~Vu Jà Dé ver.~
  8. ユリイカ 2
  9. Mochican ~Vu Jà Dé ver.~
  10. Pecora
  11. Retort ~Vu Jà Dé ver.~
  12. Oblio
細野晴臣(ホソノハルオミ)
1947年生まれ、東京出身の音楽家。エイプリル・フールのベーシストとしてデビューし、1970年に大瀧詠一、松本隆、鈴木茂とはっぴいえんどを結成する。1973年よりソロ活動を開始。同時に林立夫、松任谷正隆らとティン・パン・アレーを始動させ、荒井由実などさまざなアーティストのプロデュースも行う。1978年に高橋幸宏、坂本龍一とイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)を結成し、松田聖子や山下久美子らへの楽曲提供を手掛けプロデューサー / レーベル主宰者としても活躍する。YMO「散開」後は、ワールドミュージック、アンビエントミュージックを探求しつつ、作曲・プロデュースなど多岐にわたり活動。2016年には、沖田修一監督映画「モヒカン故郷に帰る」の主題歌として新曲「MOHICAN」を書き下ろした。2017年11月に6年半ぶりとなるアルバム「Vu Jà Dé」をリリースし、同月よりレコ発ツアーを行う。
細野晴臣 アルバムリリース記念ツアー
  • 2017年11月11日(土)岩手県 岩手県公会堂 大ホール
  • 2017年11月15日(水)東京都 中野サンプラザホール
  • 2017年11月21日(火)高知県 高知県立美術館ホール
  • 2017年11月23日(木・祝)福岡県 都久志会館
  • 2017年11月30日(木)大阪府 NHK大阪ホール
  • 2017年12月8日(金)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール

2017年11月20日更新