音楽ナタリー Power Push - 花澤香菜

自作詞で表現した あたらしい私

ライブでの感触が反映された「あたらしいうた」

──「あたらしいうた」のような曲調が表題曲に選ばれたのは驚きでした。カップリングの2曲がサウンドもきらびやかでポップな、安心安定の北川節だったのでなおさら。

花澤香菜

最初に北川さんが「いっぱい曲を作ったよ」って送ってくれたデモの中に、カップリングの「今朝のこと」と「Looking for your Smile」はあったんですけど、まだ「あたらしいうた」は入っていなかったんです。それで「『これぞシングル』っていう曲を今作ってるから、もうちょっと待って!」って。そのあと届いたのが「あたらしいうた」で、私も「こう来たか!」と思いました。北川さんが同じように感じてたかわからないですが……「かなめぐり」では今までライブであまりやってこなかった曲も選んで歌っていたんですけど、「マラソン」とか「Eeny, meeny, miny, moe」(いずれも2014年2月発売の2ndアルバム「25」に収録。参照:花澤香菜「25」インタビュー)をやったときの、お客さんのノリのよさが印象的だったんですね。

──どちらも「あたらしいうた」に通じる、疾走感のあるロックサウンドですね。

「かなめぐり」を通じて、なんとなく「シングルの表題曲にそんなノリの曲があってもいいかも」という感触が私にもあって。ライブの中で締まる1曲がシングルとしてあると素敵だな、と思っていた中でのこれだったので、北川さんもそんなふうに感じていたのかもしれないです。

──表面的なサウンドはざっくり言うと「疾走感のあるロック」ですけど、インストバージョンで聴くとかなり複雑な、まっすぐ進むのを阻むかのような入り組んだアレンジになっていますよね。わざと混沌とさせているような。

そうそう、そうなんですよ。

──単にさわやかではない、シンプルすぎないメッセージを乗せてほしいという北川さんの狙いもあったのかなと想像したのですが。

あー、どうなんでしょうね。やっぱり「かなめぐり」を通じて北川さんとのコミュニケーションもより深くなったと思うし、一緒に体験したことも曲に反映できてるかなと思います。「かなめぐり」では「Trace」(2015年4月発売の3rdアルバム「Blue Avenue」収録曲。参照:花澤香菜「Blue Avenue」インタビュー)を毎回歌ってたんですけど、「『Trace』はセットリストをグッと締める1曲になっているよね」って話していて。この曲がうまく決まると「今日のステージはうまくいった」って思えるバロメーターになっていたんです。

“作詞家・花澤香菜”の変化

──ちなみに「あたらしいうた」は詞先ではなく曲先ですか?

はい。北川さんのデモには「Call My Name」という仮タイトルが付いていて、北川さんからは「強いメッセージが欲しい」というリクエストがあったんです。「かなめぐり」で一番強く感じた、自分を保つということ……どういう気持ちで挑めば素敵なライブができるかと考えたときに感じた思いを歌詞に落とし込めば、ふさわしい内容になるかなと思って書きました。あと、この曲にはもう1つテーマがあって。「ゼーガペイン」(2006年放送のテレビアニメ)という作品が今年10周年を迎えて、Blu-rayが出たり、「ゼーガペイン ADP」という劇場版の上映が決まったり、今いろんなことが動き出しているんです。劇場版はテレビアニメの新編集版なんですけど、新キャラも出て新たな解釈になっていて、新録もあるんです。

──声優として10年前に参加した作品で、再び演技を。

つまり、17歳のときの私と向き合わなきゃいけなくて(笑)。前にも一度「パチスロ ゼーガペイン」で新録をする機会があったんですけど、そのときは「17歳の頃の私もいるし、でも成長した私も見せたいし……」と考えすぎちゃって、がんばってはみたけど「あの頃の自分には戻れないんだなあ」と実感して、泣きながら帰ったんですよ(笑)。歌詞を書いていて、そのときのことも思い出しましたね。昔の自分とどう向き合えばいいのか。その向き合い方は、自分が「かなめぐり」を通して感じたことと共通する部分もあって。うまくテーマと折り合いが付いたかなと思います。

──今回こうしてシングルの表題曲を書いてみたことで、1stシーズンから少しずつ続けてきたご自身の作詞について、大きく変わったなと思うところや、逆に変わらないなと思えるところはありますか?

花澤香菜

最初に書いた「おやすみ、また明日」(2013年2月発売の1stアルバム「claire」収録曲。参照:花澤香菜「Claire」インタビュー)から、「自分をどういうふうに保ちながら生活していくのか」という部分は大きいテーマとして変わっていないと思います。そのテーマをどう表現するかはどんどん変わってきているし、書くたびに「もっとこう書けばよかったな」と思うことはたくさんあります。

──もちろん産みの苦しみはあると思うんですけど、大変さを踏まえても、歌詞を書くという作業は楽しいですか?

楽しいです。普段から、なるほどなと思ったことや、こういう考え方は素敵だなと感じたこと、いい文章だなと思ったものはメモをしてるんですけど、作詞はそんなふうに感じた気持ちを改めて自分の言葉として出してみる作業なんですよね。しかも、ただストレートに言葉にするだけではないっていう。そうやって自分が思ったことを言葉として出す場所があるというのは、ありがたいことだなって思います。「プール」(3rdアルバム「Blue Avenue」収録曲)を書いたときは、なんかスッキリしたんですよね(笑)。それが世に出ても出なくても、自分の中で1つ整理ができてスッキリしたというか。

女の子同士で作り上げたMVの世界観

──ミュージックビデオやジャケットの撮影はいかがでしたか?

今回のMVは女性の監督で、年代も近い方なんです。カメラマンも同世代の女性の方で、ほかの制作スタッフも女性が多いんです。「あたらしいうた」はカッコいい曲調ですけど、私をどう表現するかを考えたときに、今回は女の子同士で作ったほうがいいんじゃないかなというアイデアが挙がって。

──女性で、かつ世代感覚も共有できる方々と。

花澤香菜

はい。私も打ち合わせの段階から参加させてもらって、「この歌詞にはこういう意味を込めてあります」と細かくお伝えしました。そこから監督がイメージを膨らませて、絵コンテを描いてもらったあとでまた打ち合わせをして。今までにないくらい、いろいろと関わらせていただきました。ジャケットもふんわりした仕上がりになって、女子目線で言うと、とっても好きです(笑)。

──ジャケットは水に浮かんでいるようなイメージで、MVにも水中のシーンがありますね。

「あたらしいうた」を聴いて監督がイメージしたのが、水の中にいる私だったらしくて。初めてプールの中で撮影しました。

──無粋なこと聞きますけど、花澤さん泳げるんですか?

泳げます! スイミングスクールに通っていてよかったと思いました(笑)。でも、水中で止まっているのはなかなか難しくて。演奏シーンの楽器のチョイスは北川さんで、マイクの種類にもこだわってるんです。

ニューシングル「あたらしいうた」 / 2016年6月1日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD+DVD] / 1728円 / SVWC-70170~1
通常盤 [CD] / 1296円 / SVWC-70172
CD収録曲
  1. あたらしいうた
  2. 今朝のこと
  3. Looking for your Smile
  4. あたらしいうた(Instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「あたらしいうた」ミュージックビデオ

花澤香菜「あたらしいうた」リリースイベント

2016年6月4日(土)東京都 animate hall SHINJUKU
OPEN 16:30 / START 17:00
内容:ミニライブ&ポスターお渡し会
※申込期間は終了。
2016年6月5日(日)東京都 タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
OPEN 14:30 / START 15:00
内容:トーク&ミニライブ
2016年6月12日(日)東京都内(※抽選制 / 会場は当選者のみ発表)
[1回目]OPEN 13:30 / START 14:00
[2回目]OPEN 16:30 / START 17:00
内容:トーク&ミニライブ
花澤香菜(ハナザワカナ)
花澤香菜

1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には2ndアルバム「25」、2015年4月には3rdアルバム「Blue Avenue」を発表。同年5月にスタートしたライブツアー「花澤香菜 live 2015 "Blue Avenue"」では初の東京・日本武道館ワンマンも行われた。2016年2月には山崎ゆかり(空気公団)の全面プロデュースによる9thシングル「透明な女の子」、同年6月には全曲自作詞に挑戦した10thシングル「あたらしいうた」をリリース。