音楽ナタリー PowerPush - 藤巻亮太

ソロとしての覚悟を決めた「ing」

ソロ1stアルバム「オオカミ青年」のリリースから約2年。藤巻亮太が沈黙を破りニューシングル「ing」でソロ第2章の扉を開く。この2年で彼がどのように自らの音楽人生と向き合い、再びソロ活動に身を置こうとしたのか。そして、どのような未来を描きたいと思っているのか。その意志が「ing」には凝縮されている。

今回のインタビューで藤巻はレミオロメンの今後や、このタイミングでレーベル移籍をした理由について言及している。彼の言葉から「藤巻亮太がソロ活動をする意味」と「ing」に込められた信念を感じてもらえたらと思う。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) インタビュー撮影 / 小原泰広

「オオカミ青年」発表による達成感と喪失感

──CDリリースとしては約2年ぶりになります。2013年は、2012年にリリースした1stソロアルバム「オオカミ青年」を体現するライブの年だったと思うんですけど、藤巻さんにとって2014年はどのような1年だったんですか?

藤巻亮太

僕の中では2014年は2013年から地続きのような気がしていて。結果的に「オオカミ青年」からリリースは2年も空いたんですけど、この2年は自分にとってものすごく大事な時間でした。ソロ活動を始める前にレミオロメンで過ごした10年があって、その中ではぐれていった感情とかすごくパーソナルな自分の感情をドロッと吐き出したくなって。それをバンドとしてメンバーに付き合ってもらって表現するのは申し訳ないと思ったし、逆に言えばレミオロメンの10年があったからこそ、その中で溜まっていった感情を表現できたのが「オオカミ青年」なんです。衝動的に「オオカミ青年」を作って、ツアーをやって。ツアーが終わったときに自分の中ですごく達成感があったんですよね。

──衝動が報われたような?

そう、ちゃんと成就したなと思って。レミオロメンがあったからこそ「オオカミ青年」ができたというその反動も含めて、自分の中で作品とツアーが1セットな感じがして。それが成就して、次に何をするのかって考えたときに、自分を丸ごと音楽にしていくしかないと思ったんですよね。

──自分を丸ごと音楽にしていくという発想は、ソロを始めたときの衝動を成就できなければ生まれなかった。

うん、そうですね。「オオカミ青年」とツアーを経て、もっと自分のドロッとした部分をさらけ出していきたいという衝動はもうなかったし、そういうことが今後のソロのあり方だとも思えなかった。それよりも、もっと自分を丸ごと音楽にしていきたいなって。じゃあレミオロメンとソロをどう差別化していくのか。そのときに初めてバンドとソロというものの違いと向き合ったし、ものすごく考えたんです。でも、自分の中で整理するためにかなり時間がかかって。

──2014年はそれを整理する時間でもあった?

そうですね。ソロの衝動を成就できたことで、やり切って空っぽになった自分もいたし、空っぽの自分を認めるのも怖かった。そういういろんな思いを受け入れるのが2013年から2014年にかけて大事な作業だった。で、その受け入れるということ自体がこの「ing」という曲にもつながってくるんですよね。

いつかまたレミオロメンをやりたいと思えた

──現状を受け入れて、未来に進んでいこうとする意思を率直につづってる曲ですよね。まさしくソロ第2章の始まりを告げるような曲だと思います。

うん。こういう曲を書けた理由、自分が何を思ってどう進んでいくか決められた理由として大きかったのは、1つはレミオロメンに対する思いだったんですよね。バンドというものは生ものだし、自分だけのものじゃない。メンバー1人ひとりの思いが集まるものじゃないですか。

──うん。

メンバーみんなの思いが高まっていって、覚悟が決まったときに初めて輝くものだと思うんですよ。だから、バンドを動かすためにはそのタイミングを狙うしかなくて。その波を待つというか。その時期は約束できないけれど、僕はいつかまたレミオロメンをやりたいと思えた。その覚悟が決まったのがすごく大きかったんです。衝動から始まったソロだけど、そのソロ活動はどうしてもレミオロメンとセットで考えてしまう。レミオロメンの活動でできなかったものをソロで成就させようとしたし、「オオカミ青年」はそういうアルバムだったから。だから、「オオカミ青年」の次に出る作品でホントの意味でソロをクリエイトすることが始まるんだろうなと思ったんです。そういう意味で、“ソロだから”“バンドだから”という発想でバランスを取らない、自分をちゃんと丸ごと音楽にして、それをソロの作品として発表しようという覚悟がやっと決まったんですね。

──そういう藤巻さんの思いはレミオロメンのメンバー2人にも伝えたんですか?

はい。ただなんていうか……言葉にするのは難しいけど、それぞれが何か新しいことを始めている中で、達成感を得たときなのか、ある程度の踏ん切りがついたときなのかはわからないですけど、おのずとまたやるタイミングがくると思うんですよ。それが今じゃないなっていうのはみんな思っていて、そのためにも今自分ができることを丸ごとやっていくしかないと僕は思ってます。

ニューシングル「ing」2014年12月17日発売 / SPEEDSTAR RECORDS
初回限定盤[CD+DVD]1944円 / VIZL-771
通常盤[CD]1296円 / VICL-37001
CD収録曲
  1. ing
  2. アメンボ
  3. Happy Birthday
  4. ing~エレキ語りver.~(初回限定盤のみ)
初回限定盤DVD収録内容
  • ing [MUSIC VIDEO]
藤巻亮太(フジマキリョウタ)

2000年12月に前田啓介(B)、神宮司治(Dr)とともにレミオロメンを結成し、ギター&ボーカルを担当。「3月9日」「南風」「粉雪」などの楽曲群が多くのファンからの支持を集める。2012年2月にレミオロメンの活動休止を発表し、初のソロシングル「光をあつめて」をリリース。同年8月に2ndシングル「月食 / Beautiful day」、10月に1stソロアルバム「オオカミ青年」を発表し、2013年1月から初のワンマン全国ツアーを開催した。2014年12月17日に3rdシングル「ing」をリリース。