ナタリー PowerPush - fhana
“トゥルールート”に向かった4人の行方
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga(s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という世代の異なる3人のサウンドクリエイターに、女性ボーカリスト・towanaを加えたユニット、fhana。今年8月にリリースされたメジャーデビューシングル「ケセラセラ」は、テレビアニメ「有頂天家族」のエンディングテーマとして高い評価を手に入れ、その存在をシーンに植えつけることとなった。
続いて早くも届けられた2ndシングル「tiny lamp」は、テレビアニメ「ぎんぎつね」のオープニングテーマとしてすでにおなじみの疾走系アップチューン。メンバー全員がアニメ好きを公言するだけあり、アニメの世界観との絶妙なマッチングをみせるサウンドメイキングは本作でも大きな反響を呼ぶことになるだろう。ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、fhanaというユニットが結成されるに至った経緯や個性豊かなメンバーたちが見据えるユニットとしての音楽性、そして新作の制作話をたっぷりと聞いた。
取材・文 / もりひでゆき 撮影 / 笹森健一
fhanaメンバーの出会い
──まずはfhanaというユニットがどんな経緯で生まれたか教えていただけますか?
佐藤純一 はい。僕は2004年くらいからFLEET名義で活動していて、自分のホームページに曲をアップしていたんですね。当時はまだニコニコ動画などもなくて、ネットに曲をアップするというのは珍しくて。それがきっかけで2006年にメジャーデビューをしたんです。で、2009年の終わりくらいかな、Twitterが大ブームになった頃、yuxukiくんからリプライが来たんです。どうも大学生の頃にFLEETを聴いて、コピーしてくれていたみたいで。
yuxuki waga そうなんですよ。普通にFLEETのファンだったんです(笑)。で、Twitterに佐藤さんがいるのを発見したので、ファン心でリプライしたら返事をくれて。そこからちょくちょくやりとりするようになったんです。
佐藤 「ボーマス(THE VOC@LOiD M@STER)という同人イベントに出るから来ませんか」みたいな誘いをもらったりもしてね。
──yuxukiさんは2009年から「そらいろくらぶ」や「s10rw」のメンバーとして、ボカロシーンで活動されていましたからね。
佐藤 そうそう。僕自身はインターネットがISDNからADSLにようやく切り替わるくらいの時期に活動を始めていたんですけど、後に出てきたボーカロイドの面白さはすごく感じていたんです。で、yuxukiくんに誘われてボーマスに行ってみたら、思った通り面白いカルチャーがそこにはあったので、僕もボーカロイドを使った曲を1曲作ってみたりとかもして。
yuxuki ちょうど佐藤さんを誘った2009年の秋頃って、ボカロシーンが一番盛り上がってる時期でしたからね。活気がものすごかった。
──ボカロ世代のyuxukiさんとはそんな経緯でガッチリつながったわけですね。
佐藤 はい。で、yuxukiくんと学生時代から一緒にバンドをやっていたtowanaと知り合うことができ、その後にはTwitterを介してkevinくんの存在も知るんです。ネットで音源を聴かせてもらったところすごくよかったので、Twitterでやりとりをするようになったんですよね。Leggysaladのライブも観に行きましたし。
──kevinさんは、yuxukiさんよりもさらに下の世代ですよね。
kevin mitsunaga そうですね。
佐藤 kevinくんはネットレーベル界隈でLeggysaladとしてカッコいいエレクトロニカを作ってたんですよ。そこで僕は思ったんですね。ニコニコ動画もYouTubeもなかった時代からネットで活動してた僕と、ニコニコ動画 / ボカロ世代のyuxukiくん、そしてそれ以降のネットレーベル世代のkevinくんというインターネット3世代が組むサウンドプロデューサーユニットは面白いんじゃないかなって。僕自身、FLEETとは違う新しいことをやりたいなと思っている時期でもあったし、どうせやるんだったら下の世代と一緒にやりたいと思っていたので。
メイド喫茶で「CLANNADみたいな泣けるバンドやろうぜ」
──なるほど。で、fhana結成に向かっていくわけですね。
佐藤 そうです。2011年の5月に2.5DというソーシャルTV局が開設され、そのイベントにそれぞれが呼ばれたんですよ。僕はFLEETとして。
yuxuki 僕はtowanaとやってたバンドとして。
kevin 僕はLeggysaladとして。ネット上ではみんなつながってましたけど、実際に一堂に会するのはそのイベントの準備の段階が初めてで。僕は、yuxukiさんとそこで初めて会いましたから。
佐藤 で、そのイベントの準備の帰りに、3人で秋葉原のメイド喫茶に行ったんですよ。そこで「一緒にバンドやろうぜ」って誘ったっていう(笑)。
──なんでメイド喫茶だったんですか?(笑)
kevin 僕がメイド喫茶に行ったことがなかったんですよ。で、すげえ気になるんですけどみたいな話をしてたらそんな流れになって(笑)。
──そのときにユニットとしての方向性みたいな話もしたんですか?
佐藤 しましたね。僕らはアニメとかゲームが好きなんですよ。中でも「CLANNAD」がみんな大好きで、それもあって意気投合して距離が縮まったんです。なので、「CLANNAD」に代表されるようなピュアで泣ける世界観を、僕たちがカッコいいサウンドで表現したらきっと面白いことになるんじゃないかなって。
kevin そんなことを「CLANNAD」の限定盤DVDについてきた「だんご大家族」のオルゴールを鳴らしながらメイド喫茶で話して(笑)。僕はその話を佐藤さんから聞いたときに、とにかく面白そうだって思いましたね。「やっちゃおう、やっちゃおう!」みたいな感じで。
yuxuki うん。僕もコンセプトを聴いて、すごく面白そうだなって思いました。それに何より佐藤さんのファンだったので(笑)、単純に誘ってもらえてうれしいなっていう。kevinくんのことも好きでしたしね。自分だけじゃできないことができるんじゃないかなと思ったので「ぜひ!」って感じでした。
収録曲
- tiny lamp
- はじまりのサヨウナラ
- tiny lamp (fu_mou "faded memories" Remix)
- tiny lamp - Instrumental -
- はじまりのサヨウナラ - Instrumental -
fhana(ふぁな)
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga (s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という世代の異なる3人のサウンドクリエイターに、女性ボーカリストtowanaを加えた4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。メジャーデビュー曲となった2013年8月発売の1stシングル「ケセラセラ」は、テレビアニメ「有頂天家族」のエンディングテーマとして高い評価を集めた。同年10月にはテレビアニメ「ぎんぎつね」のオープニングテーマとして書き下ろされた2ndシングル「tiny lamp」をリリース。