ナタリー PowerPush - fhana
“トゥルールート”に向かった4人の行方
「ぎんぎつね」の優しさや絆を表現できるアレンジに
──fhanaは今年8月に、テレビアニメ「有頂天家族」のエンディングテーマとなる「ケセラセラ」でメジャーデビューを果たしました。ネット上では「画に合ってる」「ネ申曲だ!」といった反響が数多く見られましたが、それってアニメ好きなメンバーが集まったこのユニットだからこそ手に入れることができた評価のような気がしますね。
towana うんうん。
kevin 僕らはもともとアニメが好きだし、曲を作る前には「有頂天家族」の原作を読んで「これはヤベえぞ!」っていう気持ちで臨んだので、おのずと注入する愛の量は違ってきますよね。
佐藤 fhanaを結成した当初から「いつかアニソンをやりたいね」っていう話はしてたんですよ。それがかなり早いタイミングで実現することになったので、気持ち的にも「本気でやるしかないね」っていう感じで。
──しかも前作からわずか2カ月で届けられた2ndシングル「tiny lamp」も、テレビアニメ「ぎんぎつね」のオープニングテーマになっているという。
佐藤 「ケセラセラ」の制作をしてる途中で「ぎんぎつね」のお話も決まったんですよ。休む間もなくジェットコースターのように今のところ進んでますね。
kevin fhanaとしてやりたかったことなんでとにかくうれしいですよ。
──今回の楽曲はどのように制作されたんですか?
佐藤 前回はエンディングテーマだったのでちょっとミドルテンポの、難しめなコード進行で作ったんです。でも今回はオープニングテーマなので、速いテンポでワクワクした感じを出しつつ、「ぎんぎつね」という作品の持っている優しさやじんと泣けてくる感じも出したいなと。そのバランスがけっこう難しかったですね。とは言え、テンションが上がっていたので2日くらいでできたんですけど。
yuxuki ホントにすごく早かったんですよ(笑)。佐藤さんから送られてきた曲に僕がすぐギター入れて、towanaもすぐ歌入れてね。
佐藤 ただ、その段階でできたものは音源になってるものと比べるとかなりギターサウンドが目立ってる、ロックっぽい激しいアレンジだったんですよ。
yuxuki 確かに今考えると、最初のアレンジはバトルもののアニメに合いそうな感じでしたよね。Luminous Orangeみたいなギターが入っていたり。
佐藤 そのバージョンでアニメの制作スタッフの方には気に入ってもらえたんですけど、僕らとしてはもうちょっと「ぎんぎつね」っぽさを出したいなと思ったんですよ。なので、そこから曲の骨格やメロディ、コード、リズムは崩さずに、優しさや絆みたいなものを表現できるアレンジにしていきました。そこには時間をけっこうかけましたね。結果的に広がりや優しさを感じる豊かなアレンジになって、そこにアニメの主人公・まことの性格のような真っすぐなメロディが乗って、いい仕上がりになったんじゃないかなと。
──アニメにもマッチしてますし、とにかく気持ちよく聴ける曲になっていますよね。
kevin fhanaは今までゆっくりな曲を作ることが多かったので、これくらいテンポの速い曲はある意味、挑戦でもあったんですよね。そういう点でもすごく意味のある曲になったかなとは思います。towanaさんも速い曲でどう歌うかっていうのはかなり考えたんじゃない?
towana そうですね。私も速い曲はあまり歌い慣れていなかったので、最初はちょっと不安でした。今までの歌い方では曲に合った表現ができないと思って今回は自分なりに歌い方を変えたんで、それが聴いてくださる方にどう響くかはちょっと気になります。
──バッチリだと思いますけどね。
yuxuki うん、よかったと思うよ、すごく。
佐藤 「もっと激しく!」「もっとエモーショナルに!」みたいなディレクションをしたので、towana的にはやりすぎなんじゃないかっていう心配があるんだと思うんですよ。でも僕もメンバーもすごくいいと思ったし、関係者の方も「towanaはこういうのもいけるんだ」みたいな感じですごく盛り上がってくれたんですよ。だから大丈夫(笑)。
川の流れのように連綿と受け継がれる歴史
──今後の展望についてはどんなものを思い描いていますか?
kevin 僕は、メンバーそれぞれが持っている特技がまだまだ面白い形で混ぜられるんじゃないかっていう気がしているんですよ。そうすることによってfhanaとしての音楽はもっと研ぎ澄まされて洗練されていくんじゃないかなって。なので、個人的にも技術の追求をグイグイやっていきたいなって思ってますね。
towana 私はライブ活動をたくさんしていきたいです。小さいところはもちろん、大きいところでもやりたいですし。憧れのワンマンライブができるくらい、たくさんの人に聴いていただきたいなって思います。
佐藤 アニサマ(Animelo Summer Live)にも出たいですし、個人的にはWORLD HAPPINESSにも出たいですね。
kevin ユニットとしての振り幅が大きいので、いろんなところに出ていけるとは思うんですよね。
──yuxukiさんの展望は?
yuxuki 僕は音楽マニアにも響く曲を作りたいなと思ってて。聴き心地はポップなんだけど、いきなりUSインディーっぽいギターが入ってきたりとか、そういう面白さを入れていきながらどんな人にでも引っかかるポイントを作っていきたいんですよね。たぶんそういうちょっと変な感じっていうのもこのユニットじゃないとできないことだと思うので。
──では最後に佐藤さん、お願いします。
佐藤 僕はYMOが好きなんですよ。YMOって、音楽はもちろん、カルチャーとしても後にすごく大きな影響を及ぼして、川の流れのように連綿と受け継がれてきていると思うんです。なので、おこがましい話ではあるんですけど、僕らもそういった歴史のようなものを作っていける存在になりたいですね。それともうひとつ、僕自身、アニメや音楽に感動して救われてきたので、今度は僕たちの音楽を通じて、聴いた人が救われるような、そんな曲をこれからも作り続けていきたいと思っています。
収録曲
- tiny lamp
- はじまりのサヨウナラ
- tiny lamp (fu_mou "faded memories" Remix)
- tiny lamp - Instrumental -
- はじまりのサヨウナラ - Instrumental -
fhana(ふぁな)
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga (s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という世代の異なる3人のサウンドクリエイターに、女性ボーカリストtowanaを加えた4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。メジャーデビュー曲となった2013年8月発売の1stシングル「ケセラセラ」は、テレビアニメ「有頂天家族」のエンディングテーマとして高い評価を集めた。同年10月にはテレビアニメ「ぎんぎつね」のオープニングテーマとして書き下ろされた2ndシングル「tiny lamp」をリリース。