ナタリー PowerPush - fhana
“トゥルールート”に向かった4人の行方
“マルチエンディング”から“トゥルールート”へ
──そこからfhanaは動き出したわけですが、当初はボーカリストが流動的なスタイルでしたよね。
佐藤 そうですね。楽曲ごとにゲストボーカルを招くコンセプトでした。それも、いわゆるヒロインがたくさん出てくるノベルゲームなんかになぞらえて、マルチエンディングシステムにしようってことだったんですよ。で、いろんなボーカリストに参加してもらった自主制作ミニアルバム「New World Line」をリリースしました。
──そこではtowanaさんが2曲歌われていて。
towana そうですね、はい。
佐藤 towanaに参加してもらった2曲が非常によかったんですよ。声の雰囲気がハマっていて。で、その後のfhanaのライブにも参加してもらったりする中で、自然と正式メンバーになってもらいたいなっていう空気ができていったんです。ただ……。
──マルチエンディングシステムという当初のコンセプトですよね、問題は(笑)。
佐藤 はい(笑)。そこはちょっと悩みましたね。でも、よく考えてみるとたくさんヒロインが出てくるゲームであっても、メインヒロインによるトゥルールートがあるじゃないかと思ったんです。つまりtowanaルートがfhanaにとってのトゥルールートだったってことにすればコンセプト的にも問題ないんじゃないかって納得して(笑)、結果towanaに正式メンバーになりませんかという話をさせてもらいました。
──それが昨年の秋のこと。そのときのtowanaさんの気持ちはいかがでした?
towana もともと知り合いではあったけど、それだけで正式メンバーにしてくれるような安易な感じで音楽をやっている人たちではないことはわかっていたので、ちゃんと選んでくれた……なんて言うと偉そうですけど(笑)、ちゃんと考えて私をメンバーにしてくれたんだっていうのが伝わってきたのですごくうれしかったです。音楽的にも初めて聴かせてもらったときから大好きでしたしね。
佐藤 towanaが正式メンバーになってくれたことで、キー設定もしやすくなりましたし、曲作りの段階から「こんな感じで歌うんだろうな」みたいなことを考えられるようになったのはすごくよかったと思いますね。
towana ただ、fhanaのメロディは主に佐藤さんが書くんですけど、とにかく難しいんですよ。低いところから高いところまで音の移動も激しいので。だからいつも苦労してますけどね。歌のディレクションも……厳しいですし(笑)。
kevin サウンド的にも、バックボーンが違う3人が集まって生まれるものなので、エレクトロニカっぽい空間系の曲から今回の「tiny lamp」のようなストレートな曲までありますからね。歌い分けるのは大変ですよね、きっと。
towana 確かに。全部好きなんですけど、大変ではあります。最近は少しずつ慣れてきましたけど。
佐藤 うん。最近はだいぶ早いよね、レコーディングは。歌の技術も上がってるから。
fhanaサウンドの作り方
──では、fhanaのサウンドに関して具体的にどう構築していくのかを教えてください。
yuxuki 最初に佐藤さんがメロディとコードと簡単なリズムパターンを打ち込んで曲を渡してくれるんです。それに僕とkevinくんが音を足していく感じですね。で、ある程度音を足したらまた戻して整理整頓するみたいな。
──作業はデータの飛ばしあいで?
kevin そうです。Skypeとかつなげてやったり。一堂に会さないっていう。
佐藤 それぞれの作業があるので、そのほうが効率がいいんですよ。ただ、最後の詰めの作業はみんなで同じDAWの画面を見ながらのほうが早かったりするので、そこだけは集まりますけど。あとはkevinくんがループ素材を作って、僕がコードやメロディをつけていくみたいなパターンの曲もありますね。
kevin 個別にパートが定まってるわけではないので、曲ごとに作業の分担は柔軟に変わりますね。エレクトロニカっぽいリズムパターンのときは僕だけど、バンドものっぽい路線のときは佐藤さんやyuxukiさんが打ち込んだりっていう感じで、得意分野を生かしつつ。
──そのあたりは世代やバックボーンの違いが面白い形で出てくるところではありますよね。
佐藤 それぞれのカラーがありますからね。yuxukiくんのギターなんかはオリジナリティのある空間を感じさせる音なので、いつもいいなって思ってますけど。
yuxuki ああ、ありがとうございます(笑)。僕はシューゲイザーとかが好きだったんで、基本的にそういうアプローチが多めになりますね。で、kevinくんはビックリ箱みたいなとこがあって(笑)。
佐藤 そうそう、何が出てくるかわからないんですよ。
kevin 僕自身、けっこう偶然性を意識した曲作りをするので、自分でも想像してなかった音ができることが多くて。なのでビックリ箱っていうのは正しいと思います(笑)。
──曲のベースを手がけることが多いという佐藤さんのカラーに関しては、ボーカリストであるtowanaさんが一番強く感じる部分かもしれないですよね。
towana そうですね。佐藤さんのカラーは、メロディにしてもコード感にしても泣けるところかな。で、あとはやっぱり難しいところです(笑)。
佐藤 僕の場合、ポップス職人的な粋なコード進行も好きなので、やりたくなっちゃうんですよ。しかも、そこにkevinくんが持ってくるカットアップされてるようなサンプル的フレーズをそのまま乗せると、ところどころコードとぶつかっちゃうのでそこを工夫したり、毎回自分でも苦労するんですよね。
towana でも曲はいつも楽しいですよ。
佐藤 ありがとうございます(笑)。
収録曲
- tiny lamp
- はじまりのサヨウナラ
- tiny lamp (fu_mou "faded memories" Remix)
- tiny lamp - Instrumental -
- はじまりのサヨウナラ - Instrumental -
fhana(ふぁな)
佐藤純一(FLEET)、yuxuki waga (s10rw)、kevin mitsunaga(Leggysalad)という世代の異なる3人のサウンドクリエイターに、女性ボーカリストtowanaを加えた4人組ユニット。それぞれ個別に活動していた佐藤純一、yuxuki waga、kevin mitsunagaの3人が2009年に出会い、ボーカリストを固定しないユニットとして始動した。2012年秋にはゲストボーカルの1人だったtowanaが正式加入。メジャーデビュー曲となった2013年8月発売の1stシングル「ケセラセラ」は、テレビアニメ「有頂天家族」のエンディングテーマとして高い評価を集めた。同年10月にはテレビアニメ「ぎんぎつね」のオープニングテーマとして書き下ろされた2ndシングル「tiny lamp」をリリース。