ナタリー PowerPush - EGO-WRAPPIN'

毎年恒例「Midnight Dejavu」 10周年の節目にその歴史を総括

2010年公演に出演した八代亜紀、清水ミチコとの交流

10年目の節目を迎えた昨年は、「Midnight Dejavu」特別版として東京、大阪、韓国の3都市10公演を開催。中でも東京キネマ倶楽部では、八代亜紀、清水ミチコ、吾妻光良&THE SWINGING BOPPERS、The TRAVELLERSをゲストに迎えた前半戦と、EGO-WRAPPIN'のみでたっぷり聴かせる後半戦の、全8日間にわたるライブを展開した。このたびリリースされたのは、その模様を収めたDVD「MIDNIGHT DEJAVU 10th ANNIVERSARY at 東京キネマ倶楽部」だ。今回なんと言っても驚きだったのは、八代亜紀との共演。EGO-WRAPPIN'の演奏にのって、「雨の慕情」(ラバーズロック風にアレンジ!)や「舟歌」などが披露された。

八代亜紀をゲストに迎えることになったきっかけは、中納良恵がソロで出演した「FOR座REST」というイベントでの出会い。そのときの対バン相手が八代亜紀で、生で聴いた彼女の歌にあらためて感動を覚え、また打ち上げでも気さくに語ってくれたこともあり、いつかゲストに呼びたいと思っていたという。

また、ゲストの1人である清水ミチコとの共演は、アーティスト同士の気さくなやりとりで進んでいった。

清水さんのラジオ番組に、EGO-WRAPPIN'が何度かゲストで出してもらったことがあったことから交流が始まって、今ではよっちゃんと清水さんが個人的にメールをやりとりする関係なんですね。そんなことから、キネマ倶楽部のライブを何度か観にきていただいていたんです。それで、キネマで対バン企画をやるんだったら、ほかの人があまり思いつかないようなアーティストを呼びたいな、じゃあ八代さんに加えてもう1組誰か……と考えて、清水さんを呼ぼう!と。内容もメンバー同士で話し合いましょうってことになり、よっちゃんと森くんが清水さんの家に呼ばれて。清水さんの家にはピアノがあるから、そこで一緒に演奏して歌いながら当日の構成を決めたみたいです。

ライブでは、清水さんは「サイコアナルシス」で登場して、清水さんのライブコーナーを20分ぐらいやっていただいて。それがまた大爆笑もので(笑)。それから、清水さんのピアノで「中央線」をよっちゃんと2人で歌って、あとは「買物ブギ」、アンコールに「GO ACTION」。清水さんも翌日、テレビの仕事で石垣島にロケに行かなきゃいけない中、快く出演してくださって。うれしかったですね。

10年目にしてホームグラウンドになった

2010年のEGO-WRAPPIN'は、11月初旬までアルバムのレコ発ツアーを行っていて、「Midnight Dejavu」のリハーサルに突入したのは12月2日から。そんな過密スケジュールにもかかわらず、この年は10周年ということもあり、4組のゲストを迎えてそれぞれとのセッション曲を披露。さらに前半戦と後半戦ではセットリストも一部変更されたという、気合いの入れようだった。短い期間の中で、これほどの濃厚な内容を実現させるには、さぞかし準備が大変だったろうことは容易に想像がつく。

しかし、そんな大変な思いをしてまでも、EGO-WRAPPIN'にとっての「Midnight Dejavu」は、自分たちもとことん楽しみ、そして長く続けていきたい大切なイベントなのだという。

今考えると、最初の年によく無事にできたなって思いますよね(笑)。だけど、あのときのインパクトが強かったから、来年もやろうって感じられたんだと思う。ぶっちゃけ、ここだけの話、興行的な収支で言ったら、10年も続けられるようなものじゃないワケですよ(笑)。それでもやっぱり、キネマ倶楽部で演奏するEGO-WRAPPIN'を観たいって僕たちスタッフも思うし、彼ら自身にとっても特別な場所なので。

昨年の10周年記念公演のMCで、中納良恵は、東京キネマ倶楽部という場所が自分たちの気分を盛り上げたり、いいライブをするための雰囲気を作ってくれるという趣旨のことを語っていた。しかし、何度か客席から観ている側からすれば、それとは少し違う印象を覚える。EGO-WRAPPIN'が会場の雰囲気に活かされているのではなく、彼ら自身が東京キネマ倶楽部という会場の特性や魅力を活かしきり、場の空気を支配しているからこそ、あの特別な空間が生まれているのではないかと。

確かにEGO-WRAPPIN'が使わせてもらうようになってから、いろんなバンドがキネマ倶楽部でライブをやるようになったけど、 やっぱりEGO-WRAPPIN'があそこの雰囲気には抜群にあってるし、ここまでできる人はほかにいないでしょ?って思います。そういえば、10年前に「Midnight Dejavu」を始めたときから一緒にやってくれている、東京キネマ倶楽部の佐藤さんが、去年の公演のときに「10年目にして、やっとホームグラウンドになりましたね」って言ってくれたのはうれしかったなあ(笑)。

言うまでもないことだが、2010年の「Midnight Dejavu」が無事終了した直後、EGO-WRAPPIN'によって2011年12月の東京キネマ倶楽部の日程は既に押さえられている。

ライブDVD「MIDNIGHT DEJAVU 10th ANNIVERSARY at 東京キネマ倶楽部」 / 2011年4月27日発売 / 5000円(税込) / MINOR SWING / NOFRAMES / TFBQ-18116

  • 初回限定盤 / ベルベットBOX仕様
  • 通常盤
DISC1
  1. BLUES FOR BROTHER GEORGE JACKSON
  2. カサヴェテス
  3. PARANOIA
  4. a love song
  5. Bell 5 Motel
  6. CARIOCA
  7. GIGOLO
  8. love scene
  9. 下弦の月
  10. チェルシーはうわの空
  11. Nervous Breakdown
  12. 異邦人
  13. Black Room
  14. かつて..。
  15. 色彩のブルース
  16. BIG NOISE FROM WINNETKA ~黒アリのマーチングバンド
  17. BRAND NEW DAY
  18. GO ACTION
  19. 雨のdubism
  20. moment to moment (En)
  21. サイコアナルシス (En)
  22. BYRD (En)
DISC2
  1. GOOD ROCKIN' DADDY
  2. サイコアナルシス
  3. 雨の慕情
  4. KOREA SEOUL-AX PREMIUM LIVE SHOW
  5. 大阪 中津芸術文化村ピエロハーバー PREMIUM LIVE SHOW
EGO-WRAPPIN'(えごらっぴん)

EGO-WRAPPIN'

1996年に大阪で結成。メンバーは中納良恵(Vo, 作詞 / 作曲)と森雅樹(G, 作曲)の2人。初期のジャズや昭和歌謡をベースにしたサウンドで、2000年にリリースした「色彩のブルース」がロングヒットを記録し、全国区に躍り出る。その後もシングル「くちばしにチェリー」がテレビドラマ「私立探偵 濱マイク」の主題歌に起用されるなど、コアな音楽ファンのみならず広い層から注目を集めた。2010年には7枚目のアルバム「ないものねだりのデッドヒート」をリリース。

また、2001年より毎年12月に東京キネマ倶楽部にてライブイベント「Midnight Dejavu」を開催。元グランドキャバレーだった独特の空間を使ったエンタテインメント性の高いステージで、リピーターを数多く獲得している。