音楽ナタリー Power Push - ドラマチックアラスカ「アンカレッジ・シティー・ポップ」特集 ヒジカタナオト(ドラマチックアラスカ)×橋本塁 対談

盟友カメラマンと語る“第2章の始まり”

ドラマチックアラスカが4thミニアルバム「アンカレッジ・シティー・ポップ」を7月8日にリリースする。ギタリスト・トバナオヤの活動休止とロマンチック☆安田(爆弾ジョニー)のサポートメンバー加入を経て新体制で作られた今作には、書き手の意思を鮮明に伝える歌詞やビルドアップされたサウンドの楽曲が詰め込まれている。

本作のリリースを記念して、音楽ナタリーではフロントマンのヒジカタナオト(Vo, G)と、公私にわたりバンドを見てきたカメラマンの橋本塁による対談を実施。橋本が今作におけるドラマチックアラスカの変化の過程を掘り下げる。

取材・文 / 鵜飼亮次 撮影 / 菅原隆文 ライブ撮影 / 橋本塁

ドンズバで好みの声

──橋本さんがドラマチックアラスカを知ったきっかけは?

ドラマチックアラスカの初代アーティストビジュアル。

橋本塁 2012年3月に僕の写真展に来たLD&K Recordsの方から「今度こんなバンドをやるんです」ってデモCDをもらったんです。そこには曲名も何も書いてない、セイウチちゃんのイラストとあのフォントのロゴが貼られただけっていう状態で(笑)。しかも僕がバタバタしていて、もらってからしばらく聴いてなくて。そのステッカーだけ見て最初はハードコアとかゴリゴリのバンドなのかなって勝手に思ってました(笑)。

──聴いてみていかがでした?

橋本 ヒジカタくんの声がドンズバで好みだなって思いました。演奏はずっとバンドやっていけばどうとでもなるんですけど、声は生まれ持ったものですからね。それにデモの曲もすごくよかったし。それで2013年だっけ、ライブを観てみたいなあと思って新宿LOFTのライブに行きました。

ヒジカタナオト(Vo, G) 僕らがまだ東京でそんなにライブしたことがなくて「お客さん、20人も来てくれたね」みたいなことを言ってたときに観に来ていただいて。「またよろしくお願いしますー」みたいな、ホントに軽い感じの挨拶をしたんですよね。

──今では関係も深まり、橋本さんがドラマチックアラスカのアーティスト写真を撮り続けています。

橋本 はい。ある時期に「アー写を撮りたい」っていう話が出た流れでそうなりました。ライブもたまに撮るし、僕のイベント(「SOUND SHOOTER」)にも出てもらう付き合いになって。

ヒジカタ 最初に塁さんに撮ってもらったのは2枚目の「オーロラを待ってる」のときで、次の「ビヨンド・ザ・ベーリング」のときには塁さんに神戸に来ていただいて、一緒に街の中を歩き回りながら撮ってもらいました。

橋本 ようやくそこでちゃんとコミュニケーションが取れたんだっけ。「オーロラを待ってる」のときは「和心」のミュージックビデオもあわせて僕が撮ることになってたからガッツリ話す時間もなくて。3枚目のときに撮ったセピア色のアー写以降、いつの間にかアー写を撮るときは神戸でっていう流れができてしまって(笑)。

ヒジカタ 毎回スケジュールの都合で、午前中で引き上げるんですよね(笑)。

橋本 今回のやつもそうだよね、朝に三宮に着いて。13時前には帰ってました。

地道なステップアップ

ヒジカタ 前のシングル「無理無理無理」のときは山でアー写を撮りましたね。朝の光がいいかなってみんなで言ってたので。

橋本 朝もや、朝焼けがいいなってね。6時とか7時くらいだったっけ。それが去年ぐらいか。

ヒジカタナオト

ヒジカタ 今年ですよ。3月リリースだったので1月とかです。

橋本 ええ!? 去年だと思ってた……。

ヒジカタ 僕らはリリースペースが速いですからね。ちょうど昨日「ドラマチックアラスカ」(6月11日発売の1stミニアルバム)を出してから2年経ったんですけど、自分でも「あ、まだ2年なんや」って思いますよ。密度がすごすぎて。

橋本 濃いもんねー。

──約2年でミニアルバム4枚とシングル2枚をリリースしました。そして全国7カ所のライブハウスツアー「ALA-UMI-DOSS TOUR 2015」も全公演ソールドアウトさせる規模にステップアップして。

ヒジカタ おかげさまで。

橋本 ただ、リリースはハイペースだけど、2年前にCDもらって以降ずっと聴いてる自分の感覚として、バンドのステップアップという意味では1つひとつ地道に階段を登ってる印象だなあ。

ヒジカタ はい。僕も自分たちが何かのきっかけでドーンと大きくなったっていう気はしていないですね。ライブで毎回結果を出して今につなげてるのかなって思ってます。

メンバーチェンジはいつあってもおかしくない

──「アンカレッジ・シティー・ポップ」を作り始めたのは具体的にいつ頃からですか?

ヒジカタ 2014年7月に「ビヨンド・ザ・ベーリング」をリリースした直後からです。基本的に年間を通してずっとライブしてるので僕らには制作期間っていうのが存在しないんですよね。ライブに誘われたら出たくなっちゃうし。だから毎回そうなんですけど、僕らはアルバムで大体ストックを出し切るので、常に曲を作ってないと足りなくなっちゃうんです。

橋本 すごいなそれ。作って出したらすぐ次って、1990年代の小室哲哉さんみたい(笑)。

橋本塁

ヒジカタ はは(笑)。今回は作ってる途中でメンバーが入れ替わったこともあって、特に大変だったんですけど。

橋本 ああ。

ヒジカタ 僕はなんとなくトバくんを含めた4人が続くようなイメージでいたんですけど、トバくんは「今後どうする?」って考えてて。それで去年の11月か12月くらいにちゃんと話をしてみた結果、休止するって話になったんです。

橋本 僕がちゃんとライブを撮ったのが2014年12月のCHELSEA HOTELでのワンマンで、聴きながら「うわーまたよくなってるわー」って思ってたから、年明け早々にトバくんの活動休止を聞いて「はー!?」ってなったよ(笑)。寝耳に水ってこれなんだなって。

ヒジカタ 結果として急な発表になっちゃいましたからね。

橋本 うん。でも10年以上いろんなバンドを撮ってきて思うのは、バンドのメンバーチェンジや解散、休止っていうのはいつなんどき、例えば明日あってもおかしくないんだなって。バンドってそれぐらいもろくてはかない、奇跡のバランスで成り立ってるものだからさ。だからそういうニュースを聞いても驚きはするけど悲観しない。メンバーからメールがきても「次が楽しみだね」って返すとか、ポジティブに捉えてる。トバくんが抜けるって話を聞いたときも「うわマジか!」と思いつつ「じゃあ今度は誰がギター弾くのかな」って思ったし(笑)。実際に今回のアルバムを聴いたらめっちゃいい形になってた。

ドラマチックアラスカ ミニアルバム「アンカレッジ・シティー・ポップ」 / 2015年7月8日発売 / LD&K Records
「アンカレッジ・シティー・ポップ」
初回限定盤 [CD+DVD] 3024円 / LDCD-50118
通常盤 [CD] 2160円 / LDCD-50119
CD収録曲
  1. 世界の始まり
  2. 無理無理無理
  3. スタートライン
  4. アンハッピーバースデー
  5. フレームアウト
  6. ともだちのうた
  7. マイヒーロー
-bonus track-
  1. 無理無理無理 feat. 岡崎体育 ~BASIN TECHNO ver.~(※通常盤のみ収録)
初回限定盤DVD収録内容

「ドキュメンタリームービー ~ドラマチックアラスカの始まり~」

  • メンバーインタビュー
  • スタッフインタビュー
  • 「世界の始まり」MV
  • 「無理無理無理」MV
  • 「ともだちのうた」MV
アラスカナイズワンマンツアー 2015
「シティーポップをはじめよう」
  • 2015年9月21日(月・祝)
    東京都 渋谷CLUB QUATTRO
  • 2015年9月26日(土)
    愛知県 池下CLUB UPSET
  • 2015年10月3日(土)
    大阪府 梅田CLUB QUATTRO
ドラマチックアラスカ
ドラマチックアラスカ

同じ高校に通っていたヒジカタナオト(Vo, G)、マルオカケンジ(B)、ニシバタアツシ(Dr)、トバナオヤ(G)の4人で2010年に結成されたギターロックバンド。神戸を中心に活動を開始し、2013年6月に1stミニアルバム「ドラマチックアラスカ」をリリース。その後、大型ライブイベントへの出演を経て11月に2ndミニアルバム「オーロラを待っている」を発表した。2015年1月にトバが学業への専念を理由にバンド活動を休止。バンドにはサポートメンバーとして爆弾ジョニーのキーボーディスト・ロマンチック☆安田がギタリストとして加入した。5、6月にはフレデリック、夜の本気ダンスとのジョイントツアー「ALA-UMI-DOSS TOUR 2015」を企画し、全国7公演をすべてソールドアウトさせる。そして7月に4枚目のミニアルバム「アンカレッジ・シティー・ポップ」をリリース。9月には東名阪ツアーを実施する。

橋本塁(ハシモトルイ)

1976年生まれのカメラマン。ファッション雑誌「ollie magazine」の社員カメラマンを経て2005年に独立し、1月に初の写真集「LOVE」を制作。ストレイテナー、the band apart、HAWAIIAN6、the HIATUS、THE BACK HORN、THE BAWDIES、9mm Parabellum Bullet、ONE OK ROCK、androp、ドラマチックアラスカなど数々のアーティストのライブフォトやアーティスト写真を撮影している。2006年には写真展とライブの複合イベント「SOUND SHOOTER」をスタートさせ、2010年10月には福岡晃子(チャットモンチー)、古川太一(KONCOS、ex. Riddim Saunter)とともにアパレルブランド・STINGRAYを立ち上げた。2015年3月には東京・新木場STUDIO COASTにて10回目の「SOUND SHOOTER」を3日間にわたり開催した。