ナタリー PowerPush - DIR EN GREY

薫が語る海外ツアーの裏側とバンドの現状

DIR EN GREYがドキュメンタリー映像作品「TOUR2011 AGE QUOD AGIS Vol.1 [Europe & Japan]」「TOUR2011 AGE QUOD AGIS Vol.2 [U.S. & Japan]」を6月、7月と2カ月連続でリリースした。これら2作品には、昨年8月からスタートしたワールドツアーや国内ツアーのライブ映像とその裏側、普段観ることのできないメンバーの素の表情などを凝縮。各作品とも200分前後というボリューム感のある内容で、これまで明かされることのなかったバンドの真の姿を垣間見ることができる。

今回ナタリーでは、メンバーの薫(G)にインタビューを実施。ドキュメンタリー作品を制作するに至った経緯や、海外ツアーのエピソード、ライブに対する考え方などをじっくり語ってもらった。また、今年2月から京(Vo)の声帯不調を受けて活動を休止しているバンドの近況や、京の現状についても言及。そう遠くない将来にバンドが再び表舞台に戻ってくることが期待できるテキストとなった。

取材・文 / 西廣智一

 
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海外での空気感を映像に封じ込めたかった

──今回、2カ月連続でドキュメンタリー作品がリリースされましたが、そもそも最初からこういう映像作品を発表する予定はあったんですか?

DIR EN GREY

そうですね。何年か前から日本でのインタビューで、海外で活動してるときの空気感やノリの違いをよく訊かれてたんだけど、なかなか言葉で説明しにくくて。だったら、そういう空気感をドキュメンタリー作品に封じ込めれば観た人にわかってもらえるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

──これまでも海外でのライブは「Wacken Open Air」や「Family Values」などに出演した際の映像が作品化されていましたが、舞台裏を含めてこういう形でがっつりまとめられたものは、DIR EN GREYとしては初めてですよね。

はい。(2011年8月発売のアルバム)「DUM SPIRO SPERO」を携えたツアーではなるべくいろんな映像を残しておこうっていうアイデアは結構前からあって、特に海外でのライブをシューティングした映像作品を出したいなと考えていたんです。最初は「TOUR2011 AGE QUOD AGIS Vol.2 [U.S. & Japan]」に入ってるロサンゼルスでのライブ映像を単体でリリースしようとしてたのが、進めていくうちに昨年8月から今年1月までのドキュメント映像の中にパッケージしたほうがいいのかなって思うようになったんです。

──映像は英語によるナレーションで進行していきますが、これは海外でのリリースを想定してのことなんでしょうか?

考えてないわけじゃないけど……今のところ海外では出ないんですよ。でもまあ想定してってことに……しておきましょうかね(笑)。実は日本語のナレーションを入れるって案もあったんですけど、ちょっと軽くなってしまう気がして。英語なら特に作り直さずに海外でもリリースできるし、加えて日本語のテロップを使うことで映像に残ってない部分の補足もできるかなと。

「Wacken Open Air」で露呈したメンタルの弱さ

──まず1本目の「TOUR2011 AGE QUOD AGIS Vol.1 [Europe & Japan]」は、アルバムリリース直後に行われたドイツの野外フェス「Wacken Open Air」(2011年8月6日)での映像からスタートします。

DIR EN GREY

前回、4年前に出たときよりはDIR EN GREYの名前も少しは知られている感じだったんですけど、それでも一般的に広く知られているバンドってわけじゃなく。名前は知ってるけど曲は知らないって人も多いので、前のほうにいるお客以外は演奏してもそこまで盛り上がらず、どんなバンドなのかを観察してる感じでしたね。これはどこの国のフェスに出演しても同じですけど。

──「Wacken Open Air」ではプレスルームでインタビューを受けまくった話題が映像でも語られていますが、「DUM SPIRO SPERO」リリース直後ということもあるし、「Wacken Open Air」に久しぶりに出演することもあって余計に注目されていたんでしょうか?

それもあるでしょうけど、あとは日本のバンドだからってことで震災絡みのことでの取材も多かったし。逆に震災の話題をしてもいいのかなって気遣って訊いてこない記者もいましたけど。

──で、そのときのライブは皆さんの中であまり納得のいく出来じゃなかったようでしたが、それはリハーサル面や機材面でのトラブルなどもあったんでしょうか。

それもありつつ、最終的には自分のメンタルが弱かったんだろうなと思います。当日は慣れてない新曲は一切演奏しなかったんですけど、それでもトラブルが起きて心に余裕がなかったというか。でも、こういうトラブルってうちらだけじゃなくて、どのバンドにでも起こることだと思うんです。自分たちだけが被害に遭ってるとは俺は思ってなくて、単にトラブルに対処しきれなかった自分のせいやと思うんで、もっとそういったところを鍛えていかないと。

海外では気持ちが下がってしまうとなかなか上げにくい

──「Wacken Open Air」を皮切りにヨーロッパツアーが始まったわけですが、基本はツアーバスで移動なんですね。こういった形でのツアーで、常にベストな演奏をするために心掛けていることってありますか?

DIR EN GREY

次の街に行ってライブをするだけなんで、ひたすら音楽に集中ができるからこのスタイルはいいと思います。それ以外のことはあまり気にしないというスタンスでいればね。やっぱりずっと同じ空間で旅をしていると、周りの細かいことが気になりだして、どんどん良くない空気が広がっていくんで。もう開き直って、「俺らはライブをするためにここに来てるんだ」って気持ちでライブをするのがいいんじゃないですかね。

──例えば国内でツアーをするときと、メンタル的に違いはありますか?

日本はどこ行ってもなんとなく土地勘があるしある程度情報が掴めるけど、海外の場合はその土地土地の情報がインプットされてるわけじゃなくて。日本だったら違う空気を吸いたいと思ったらいろいろ発散する場所があるけど、海外だとそれもちゃんとできないんです。だから、海外では自分の気持ちが下がってしまうと、なかなか持ち上げにくいですね。

──極端な話、日本だったら何かあった場合、自分の家や居場所まで簡単に戻れますもんね。そういった場所を確保できないのが海外であって、その与えられた状況の中で自分のベストを尽さなければいけないという。

海外では割とフラットな状態のままステージに上がるから、自然とステージと向き合えるっていう感覚が日本でライブをするときよりも強いです。そういう意味じゃアナログ的というか。そこが好きだったりするんですけどね。

DIR EN GREY(でぃるあんぐれい)

DIR EN GREY

京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)から成る5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2008年にアルバム「UROBOROS」を世界16カ国で同時期にリリース。同作はアメリカのBillboard Top 200で114位、インディーズアルバムチャートBillboard "TOP INDEPENDENT ALBUMS"で9位、新人アーティストを対象としたチャートBillboard "Heatseekers Chart"で1位という快挙を達成する。その後、2008年末から2010年にかけて「UROBOROS」を携えたライブツアーを国内外で展開。2010年1月に日本武道館公演を2日間にわたり開催し、ロングツアーを締めくくった。2011年8月には約3年ぶりのアルバム「DUM SPIRO SPERO」をリリース。発売直後からヨーロッパや北米、中南米などで海外ツアーも行った。2012年1月には大阪城ホールで「UROBOROS -that's where the truth is-」と題した一夜限りのライブを敢行。しかし2月からは京の声帯不調を理由に、当面の活動を休止している。