ナタリー PowerPush - DIR EN GREY
「UROBOROS」を経て向かう新たな地平 14カ月ぶり新作ついに登場
自分は曲を組み立てていく人間だと思う
──こういうミディアムテンポのメロウな曲だと、ギターソロが入ったり、曲の長さもちょっと長めになって複雑なアレンジが入ったりするケースもあると思いますが、「LOTUS」はそういう感じではないですね。
別にそれでもいいと思うんですけど、今回自分はそういうアレンジには頭がいかなかったっていうだけ。自分がそうしたかったら今言ったような流れにしちゃうかもしれないですけど。
──歌がかなり前に出ているイメージですが。
そうですね。うちのボーカル(京)は基本どこにでも歌を入れてきたがるタイプなので。こういう曲をやってもずっと声は入ってるんですよ。昔からいろんなところに声を入れたがるし。
──薫さんにはギタリスト、コンポーザー、バンドの5分の1としての立ち位置と、いろんな役割があると思います。そんな中で、この曲ではもっとギターで主張したいとか、この曲はこういうメロディを強く出したいとか、そういうバランス感ってどうやって取っているんですか?
自分は……うーん……ギタリスト的な位置ではなく、曲を組み立てていく人間だと思うんです。自分が曲を作って持っていくと、そこにみんなが乗っかってきて色がついていくっていう感じ。だから、ギタリストとしてギターのフレーズを考えて楽しんでるっていう状況にはなかなか持っていきにくいですね。もちろんギターのフレーズやリフ、リズムを弾いたり打ち込んだりして次から次へと構成やアレンジを考えていくんですが。その中で、メンバーが「こういうアプローチは?」と乗ってくる。いちギタリストとして楽曲にどういうアプローチをしていこうか、何か面白い表現をしてみようかって考えるのは、本当に最後で、そのときはわりと形になっちゃってるんで。
──ほかのメンバーが曲を持ち寄ってきた場合も、同じような立ち位置なんですか?
この「LOTUS」の原曲はDie(G)が作ってきたんですよ。割とオーソドックスなコードが乗った曲やったんですけど、そういうところから始めたんで自分はこの曲にどうアプローチしていこうってわりと考えられたかな。そうやってるときはすごく面白いですね。
──ちょっと表現が正しいのかわからないですけど、プロデューサー的な思考というか、ひとつの曲に対してこういう組み立て方をして、こういうギターが乗ってというイメージが薫さんの頭の中にあるのかなと。
うーん、でもプロデューサーみたいに全体を見るのは最後のほうですね。それまではずーっと何かを生み続けて、面白いものをプラスし続けてる感じです。
録音の初期段階から最終形に近い音で録った
──今回のシングルを聴いたときに、ライブ音源を含めた3曲とも、とにかく音が今までとは違うなと感じて。「OBSCURE」みたいなラウドな曲でもギターやドラムの音の粒がすごく聴きとりやすいし、ライブ音源も非常にクリアな音質ですし。音の聴かせ方はやはり強くこだわったんでしょうか?
今回は最初からしっかりしたイメージがあったので、録音のわりと初期段階から最終形に近い音で録ってたんですよ。エンジニアによってはミックスでガラッと変えちゃう人もいるんだけど、今回のベースになる音はあまり余計なものを入れず、生っぽい音でしっかり作ってたんで、あまり大幅に変わることはなかったです。もちろんドラムの音なんかは、日本ではこういう音はなかなか作られへんなっていうものになってるんですけど、全体的な音の質感っていうのはほぼ変わってないかな。
──今回ミックスを担当したエンジニアは、曲に合わせて選んだんですか?
いえいえ。今回は試してみたい奴とやろうと、ただ思っただけで。
──このシングルのジャケットと、エンジニアが過去に手掛けてきたアーティストを事前にイメージして聴いたら、非常に新鮮で良い意味で裏切られたなと。海外のラウド系の音に近いんだけど、ちゃんと日本人らしい繊細さも表現されていて、そこにちょっと驚きましたね。
そうですね。その感じをどれだけわかってくれたのかはわかんないですけど、だからこそなるべく元の音を消さないようにミックスしたのかもしれないです。いくらでも自分の得意な音に変えられるとは思うんですけど、変えてしまうと曲の雰囲気も変わってしまうので、なるべくいじらずミックスしてったんじゃないかなとは思います。
CD収録曲
- LOTUS
- OBSCURE
- 冷血なりせば~Live take at SHINKIBA STUDIO COAST on July 20, 2010~
DVD収録内容 ※初回生産限定盤のみ
“THE UNWAVERING FACT OF TOMORROW TOUR2010”2010.07.21 SHINKIBA STUDIO COAST
- 残
- LIE BURIED WITH A VENGEANCE
- 逆上堪能ケロイドミルク
DIR EN GREY(でぃるあんぐれい)
京(Vo)、薫(G)、Die(G)、Toshiya(B)、Shinya(Dr)から成る5人組バンド。1997年に現メンバーが揃い「人間の弱さ、あさはかさ、エゴが原因で引き起こす現象により、人々が受けるさまざまな心の痛みを世に広める」という意志の元に結成。ミクスチャー/ヘヴィロック的な要素をゴシック的な様式美の中で表現する世界観が評価され、日本のみならず海外でも大ブレイク。2002年にアジアツアーを成功させたのを機に、アメリカ、ヨーロッパ各国にも進出し、熱狂的なファンを多数獲得する。2008年にアルバム「UROBOROS」を世界16カ国で同時期にリリース。同作はアメリカのBillboard Top 200で114位、インディーズアルバムチャートBillboard “TOP INDEPENDENT ALBUMS”で9位、新人アーティストを対象としたチャートBillboard “Heatseekers Chart”で1位という快挙を達成する。その後、2008年末から2010年にかけて「UROBOROS」を携えたライブツアーを国内外で展開。2010年1月に日本武道館公演を2日間にわたり開催し、ロングツアーを締めくくった。