いろいろ通ってるけど、最終的には扇風機

──戸田さんの「sssSSSSSSSSSSSSSSSSsss」はユニークなタイトルですけど。

戸田　それはサビがその回数だけループして曲になってるんです。

三浦　サビサビサビサビ……って、フェードインしてフェードアウトするんですよ。

戸田　なので（表記が）小文字から始まって小文字で終わっています。最初は普通に歌ものを作っていたのですが、つまらないのでサビだけにしました。

──「CETI」は？

戸田　「CETI」というのは地球外生命体を見つけるプロジェクトで。この曲では、ボイジャーレコード（注：惑星探査機ボイジャーが地球外の知的生命体に発見されたときに地球のことを知ってもらえるように、地球に関するさまざまな情報を音や写真などで記録したレコード）を出力したときの印刷音を録音して使用しました。後は、ボイジャーレコードを数値化したものをモールス信号に変換してモーターを動かすプログラムを作り、それで動かした扇風機の音なども入っています。

写楽　いろいろ通ってるけど、最終的には扇風機（笑）。

戸田　プリンタと扇風機がただ鳴っているように聴こえるのでボイジャーレコードの意味もなかったのですが、悔しいので使いました（笑）。

──こういう機会に言っておかないと、その努力は伝わらないですもんね。

戸田　プリンタって、何をどんなタイミングで印刷してもたいがいウィーン、ガシャンなんですよ。悲しいかな。いろいろなパターンで印刷してみたり、蓋を外してダイレクトに録ってみたりしたのですが……。

──福間さんはそういう仕掛けはやりましたか？

福間　僕はそういうトラック的な仕掛けはないですね。けっこうオーソドックス。

──踊れるトラックですよね。

福間　一応デトロイトテクノ以降のテクノも影響下にありますんで、そこは外せないなと。リアルタイムでそういうムーブメントを知ったのはクラブなので、テクノポップは後々というか。クラブに通ってた頃は89～90年あたりのいわゆるハウスムーブメントにドップリはまってたんで、そこも原体験としてありますね。

「でんおん!!」

──話が逸れますけど、「電撃G's magazine」のテレビCMで、「けいおん!!」の中野梓役をしていた竹達彩奈さんがナレーションを担当し、中野テルヲさんが音楽を手掛けたものが放送されましたよね。あれはどういう経緯で話が来たのですか？

中野　あれは知り合いのCMディレクターさんから来た話で。そのキャスティングはディレクターさんがしたものです。

──やはり中野さんの名前が「中野梓」の元ネタであることを狙ってのキャスティング？

中野　どうなんでしょうねえ（笑）。面白いからだと思うんですけど、ディレクターさんが「声入れてもいいよ」って言うんで、自分でコーラスしたりして。聴く人が聴けばわかるかなという程度に。

三浦　やっぱり「けいおん!!」関係のニュースは需要があるんですか？

ナタリー　「けいおん!!」は人気ですねー。

三浦　そしたら、これ、「でんおん!!」にしましょう（笑）。

──もしかしたら、このアルバムが電子音楽初体験になる人もいるでしょうね。

三浦　そうかもしれないですね。僕はそれ、いいと思いますよ。こんだけマッドな人たちが、頭をひねりにひねって時間と手間をかけ、こだわりを持って作ったものを最初に聴けるんだったら、それに越したことはないでしょう。電子音楽というジャンルって、昔はもっと実験的というか、頭でっかちなものだったと思うんですよ。譜面が図形になってたりとか。電子ものに深い造詣を持ちながらポップのフィールドに立てる人たちって、そうそういなかった。でも電子音楽部には、現代音楽とも違う、最近のすごく圧縮された平面的なテクノポップとも違う、実験的かつ立体的なポップな音楽を作れる人たちが集まっている。それは強みだと思います。だからDTMをやってる人たちもこれを聴いて音楽の可能性を拡げてもらえたらいいと思うし、教科書というか、マスターピースになれるものを目指して作ったつもりです。

──今後、部員が増える可能性は？

三浦　いい人がいれば。我こそはという人は、5人が関連するライブに来てデモテープを手渡ししてもらえるといいですね。電子音楽部のライブもやるんですけど、今回は全員分の機材をステージに乗せっぱなしにします。なので、見たこともないシンセやゲームボーイや短波ラジオなどが（笑）ずらりと並んだ「電子音楽楽器博覧会」としても楽しめると思います。