ナタリー PowerPush - 電子音楽部

5人の電子音楽家が描く もうひとつの未来 ポップと実験が交差する「でんおん!!」博覧会

ああ、うちの会社にもこんな部があれば。電子音楽愛好家ならだれもがそう思うであろう「部」が誕生した。

所属部員は、ケラ&ザ・シンセサイザーズの三浦俊一、P-MODEL~LONG VACATIONを経て現在はソロ活動を精力的に展開する中野テルヲ、P-MODEL~YAPOOS参加後は自身のsoyuz projectを組織する福間創、そしてFLOPPYの小林写楽と戸田宏武という、5人の電子音楽家。部署名=レーベル名をタイトルに冠した第1弾コンピレーション「電子音楽部」は、各部員が書き下ろしソロ楽曲を2曲ずつ提供したユニークな電子音楽作品集だ。まさに、ポップと実験の絶妙な境界線上で奏でられる電子音の饗宴劇。

では、そんな男子5人にタップリと語っていただきましょう。繰り広げられるは、部署会議か、はたまた放課後お茶飲み話か。電子音に魅せられた者ならではの「でんおん!!」なお話を、存分にお楽しみください!

取材・文/小暮秀夫 撮影/中西求

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総務部、営業部、人事部……「電子音楽部」

──電子音楽部は誰によって設立されたんですか?

三浦俊一 僕です。最初、FLOPPYがビートサーファーズ(注:三浦が主宰する音楽制作会社)所属になって普通にマネージメントしていたんですけど、今年に入って中野テルヲのマネージメントもするようになって。

中野テルヲ 自分は7月からかな。

三浦 FLOPPYはトラック制作に関しては各々が担当するという、ある意味スタンドアロンのミュージシャン/クリエイターなんですよ。そこに中野が入ってきて、これはさらにもう1人くらいいると面白いクリエイター集団ができるんじゃないかなと思っていたら、中野のちょっと後くらいに福間(創)がやってきて。それで「5人だと数字的にキリがいいよね」っていうんで、数合わせに僕が入ったっていう感じですかね。で、電子音を切り口にしてコンピレーションを作ったら5人5様の電子音楽が聴かせられるんじゃないかなと。

インタビュー風景

──電子音楽部という名前はどなたが?

三浦 最初は仮名称だったんですけどね。FLOPPYの中にプラモデル作る部活とかあるじゃん? 他に何部があったっけ?

小林写楽 各々がそれぞれ名乗ってて。バイク部とかハンダ部とか。

中野 え? ハンダ部あるの?

三浦 中野さん、ハンダ部入りたいんでしょ?

中野 いいねえ。

三浦 あとはすぐになくなったポジパン部とか(笑)。最初はそういうプラモデル部とかと同じようなやつだったんですけど、この5人はビートサーファーズの中で同じセクションにいるわけですよ。これはひとつのディビジョンと考えていいんじゃないかって。

──ということは、部活動の部というよりは、会社の中の……。

三浦 総務部とか営業部とか人事部とかと同じように「電子音楽部」という部署があるという(笑)。

──今の打ち込みの音楽のシーンの中でもかなり特異な5人が選ばれていると思うのですが。

三浦 ま、DTMって感じじゃないですよね。楽器を触ってる感じ──触感が重要な人たちかも。

福間創 iPadとかiPhoneもコントローラーとして使っているだけで。音源としての魅力は今のところ感じていません。簡単に言えば、つまみがないから、肉体感覚がないというか、そこから音が出てる感じがしないんですよね。

三浦 戸田なんか如実だと思うんだけど。つまみを廻すかPCのスライダーをマウスで動かすんだったら、つまみのほうを選ぶよね?

戸田宏武 そうですね。電気が抵抗している感覚が伝わってくるので。

このメンバーでやるからには

──三浦さんからコンピレーションの誘いがあったとき、みなさんはどう思われましたか?

インタビュー風景

中野 面白いなと思いましたね。(音の内容に関して)そんな縛りもなかったので、自分が普段作っているようなものを自然に出せるかなって。

福間 僕は今年の頭に(soyuz projectで)FLOPPYと一緒に東名阪ツアーをやった流れで、電子音楽部の話を三浦さんからもらったんですけど、単純に楽しそうだなっていうのが大きかったですね。けっこう好き勝手にソロっぽいイメージで作れるかなって感覚で参加しました。

戸田 「電子音楽なら何やっても大丈夫」って言われたので、ふたつ返事でお請けさせていただきました。

写楽 オイラも話が来たとき、すぐに「こういう音を出そう」ってイメージが沸きましたね。ただ、そうそうたるメンツなんで、ちょっと緊張感がピピッていう(笑)。

三浦 みんなそれなりにちょっとは意識してるわけですよ。このメンバーでやるからにはこれくらいのクオリティがないと恥ずかしいな、とか。中野さんはどうかわかんないけど。マイペースだから(笑)。

中野 自分は普段やってるような感じでできたから。(曲が全部揃って)並んだときに、きっと面白くなるだろうなとは思った。

福間 僕はあがってきたのを初めて聴いたとき、予想していたのをいい意味で裏切られて。「ああ、こういう風になるんだ」みたいのがそれぞれあったので面白かったです。

──ということは、お互い中間報告をしながら作っていたわけではない?

三浦 読める部分はあるんですよ。きっと戸田はワケわかんねえだろうなとか、中野さんはいつもとそう変わんない。写楽はチップチューンの雰囲気でくる。福間はたぶん4つ打ちでくる。そうなると、自分の引き出しの中で活かせるものはなんだろうって、僕は考えましたね。考える人と考えない人の2パターンいたと思いますよ。戸田は?

戸田 自分のことだけで精一杯でした。

三浦 戸田はこのレコーディング中、シンセサイザーを自作しながらそれで音を作ったんですよ。

戸田 レコーディング時にはVCAとLFOまでできていたので、データの刻みなどに使用しました。今はシンセサイザーとして完成しています。

──中野さんも自作シンセを使われていますよね。

中野 自ら作ったわけではなくて、P-MODELを一緒にやってた高橋芳一が開発、制作したものです。そこに自分の意見を取り入れてもらったりしています。今回は自作ものは使っていなくて、いつも使ってる短波ラジオとか発振器の類とかそのへんで作りました。

コンピレーションアルバム「電子音楽部」 / 2010年11月24日発売 / 2940円(税込) / 電子音楽部 / DDCH-2320

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CD収録曲
  1. chip cook book / 小林写楽
  2. AUX+ / 福間創
  3. Amp-Amplified / 中野テルヲ
  4. CETI / 戸田宏武
  5. 1970 / 三浦俊一
  6. sssSSSSSSSSSSSSSSSSsss / 戸田宏武
  7. Raindrops Keep Fallin' On My Desktop / 中野テルヲ
  8. アンドロイドは電子意識で夢を見るか? / 小林写楽
  9. TimeLine10-11 / 福間創
  10. 悲しい合図 / 三浦俊一
V.A.「電子音楽部」発売記念ライブ
デンシコン

2010年12月23日(木・祝)
東京都 高円寺HIGH
OPEN 18:00 / START 19:00
出演:中野テルヲ / 福間創 / 三浦俊一 / 小林写楽 / 戸田宏武