時代のムードに影響されたくない

──今回のシングルについて「こんなふうに聴いてほしい」といった思いはありますか？

卓球　うーん、そこまでは考えてないかな。いい曲にしようってところは考えるけど、その先に関してはこっちでコントロールできないからね。「こういうふうに見られたいのに」って思って、そう見られなかったときの徒労感っていうのは今まで何度も経験してるし。

──でも今回のシングルは、電気グルーヴのファンには非常に好意的に受け取られるように思います。

瀧　でも「こういう感じの曲、久々ですね」とかって言われるけど、自分たちとしてはあんまりそういう気持ちもないんだよね。今までどおりやってるだけで。

卓球　単に曲調の問題じゃないかな。

──卓球さんの中の音楽的なブームが今回のサウンドに反映されてるわけではない？

卓球　もちろんそういうのもなくはないけど、でもそれは表面的なところだし、流行り廃りはあんまり関係ないね。もっと根源的なところのほうが重要で。

──音楽以外の世相や時代のムードに影響を受けることは？

卓球　例えばデカいので言えば去年の震災とか、そういうものの影響が全くないわけじゃないけど、でもそれをダイレクトに出そうっていう気持ちはないよね。むしろそういうものから、あまり影響を受けないように、自分たちを保っていくほうに力を入れてる。時代のムードを表現していこうっていう意識は自分たちにはあまりなくて、むしろその逆じゃないかな。自分たちのやりたいことはなるべく変えずに、でも影響を受けてる部分があるならそこを意図的に排除はしないっていうスタンスだよね。

──確かに、電気グルーヴが震災を受けて楽曲を作るというのも考えづらいです。

卓球　うん、そういうのはほかにやる人がいるし、別にうちらがやることではないっていうか。

──メッセージはTシャツで伝えるという。

卓球　でもあれも別にさ、そこに込められたメッセージとかっていうのは受け止める人が勝手に想像してくれればよくて。そういうものがないわけじゃないけど、声に出して言うほどのことではないっていうか。どういうふうに捉えるかはその人次第だから、そこまで強要できないし、する気もないし。

──そのあたりの感覚は瀧さんも同じ？

瀧　そんなに器用じゃないしね、そもそも。昔から自分たちが好きなことを好きなようにやってるってだけのことだから。それを急に変えたところで、いい結果は生まないだろうし。結局それって無理するってことだから。自分たちが強引に何かに合わせるっていう。それがいいことだとはあんまり思わないかな。

この勢いのままアルバム制作へ

──では最後に、このシングル以降、今年の電気グルーヴの活動予定についても教えてください。

卓球　いくつか夏フェスに出るのと、来月くらいからアルバムの制作に入るんですよ。なんか調子が出てきて、KAGAMIがいなくなったあとのライブをどうするかっていうのもずっと模索してたんだけど、この前の「StarFes.」で次のステップみたいなものもなんとなく見えてきたし。シングルもいい感じになったから、この勢いのままアルバム作ろうっていう話で。年内くらいには出したいなって思ってるんですけどね。

──アルバムはどんな内容になりそうですか？

卓球　まだ具体的に言葉で言えるようなものはなくて。やってみないとまだわかんないですね。先に「こういうことやろう」って言葉にしちゃうと幅が狭くなっちゃうから。

瀧　やる前から全部が見えてるわけでもないし、ライブやレコーディング作業をやりながら感じるものもあるだろうし。腰上げて動き出したあとで「こういうことだったのか」ってわかる場合もあるからね。

卓球　ただ、でも今回はあんまり試行錯誤せずに作れそうっていう感じはあるかな。今は迷いがないから、それをそのまま形にしちゃおうって思ってる。

瀧　「YELLOW」を作ってたときもこんな感じで、あれもある程度レコーディングして、フェスでちょっと動いて、そこから得たものがまた盤にフィードバックされてるから。そういうのが面白いんじゃないかって思ってます。

卓球　だからまあアルバム出してツアーやって、その先のことはその時々で考えるかなって感じですかね。