音楽ナタリー Power Push - 茅原実里
16編の物語でつむぐみのりんの恋愛観
茅原実里が、オリジナルアルバムとしては約2年半ぶりとなるニューアルバム「Innocent Age」を4月6日にリリースする。一昨年にデビュー10周年を迎えた彼女が「等身大のナチュラルな自分で臨めた」と語る本作のテーマは、ずばり「恋愛」。
劇場版アニメ「境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来篇」主題歌「会いたかった空」、TVアニメ「長門有希ちゃんの消失」エンディングテーマ「ありがとう、だいすき」、さらには最新シングル「恋」を含む全16曲が紡ぐ、恋の物語とは? そして、本アルバムに込められたであろう茅原自身の恋愛観とは? 本人に話を聞いた。
取材・文 / 須藤輝 撮影 / 小原泰広
「会いたかった空」につながっていく恋愛物語
──ニューアルバム「Innocent Age」は約2年半ぶりのオリジナルアルバムということで。前作からは少し間が空きましたが、とは言えその間に茅原さんにとって重要な出来事がいくつもあったかと思われます。
そうなんですよ。2014年にデビュー10周年を迎えて、ベストアルバム(2014年9月発売「SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~」)をリリースしたり、10周年プロジェクトの一環としてセルフカバーのシンフォニックアルバム(2015年3月発売「Reincarnation」)を作って、シンフォニックコンサートを開いたり。何より10周年記念コンサートでまた日本武道館の舞台に立つこともできて……うん、盛りだくさんでしたね、この2年半は。
──シングルもコンスタントにリリースされて。
はい。そう考えると、作品の制作は切れ目なく続いてた感じでしたね。
──では、実感としてはニューアルバムもその延長にあるみたいな?
いや、やっぱり「Innocent Age」はほぼ新曲で作ったので、途中から「あ、オリジナルアルバムを作ってるんだ!」っていう感覚になっていきました。
──これまでの茅原さんのアルバムは、「打ち込み+ストリングス」というデジタルサウンドが1つの軸としてあったと思うのですが、新作「Innocent Age」は生音主体というか、バンドサウンドを前面に出したナチュラルな仕上がりになっていますね。
アルバムを作るときは、例えば前作「NEO FANTASIA」(2013年12月発売)なら“テーマパーク”、その前の4thアルバム「D-Formation」(2012年2月発売)なら“電脳アリス”と毎回テーマを決めているんですけど、今回はテーマを決める際、プロデューサーから「“恋愛”はどうだろう?」という提案がまずあったんです。このニューアルバムには昨年4月にシングルでリリースした「会いたかった空」というラブソングが収録されているんですね。
──劇場版アニメ「境界の彼方 -I'LL BE HERE- 未来篇」の主題歌ですね。
この曲が完成したときに、私もプロデューサーも非常に強い手応えを感じたんです。そこで、今回はこの「会いたかった空」を生かしたアルバムにしようと。出会いから恋が始まって、成熟して、愛に変わっていき、そして「会いたかった空」につながっていく物語を1枚のアルバムで描いてみませんか?っていうお話をいただいて「それは面白そうだな」って。それで、「“恋”が“愛”へ移り変わる気持ち」をテーマにアルバムを制作することになったんです。
──そのアルバムコンセプトに沿って、サウンドイメージも固まったわけですね。
やっぱり恋愛を歌うにあたって、その青春感やキラッとした気持ちを表現するには、バンドサウンドがしっくりくる。というところで、コンペで曲を選んだりするときも自然とそういう方向になりました。
みのりん、レコーディング中にタコになる
──今回のアルバムは、全体として生音主体ということに加えて、かつ長調(メジャーコード)の曲がたくさん入っていますよね? 要は、明るい曲が多い。
はいはい。
──茅原さんの楽曲のイメージって、どちらかというと……。
けっこう陰(音階)も多いですよね。
──つまり短調(マイナーコード)だったと思うので、そこも従来のアルバムと違うなと感じたんですね。これも自然な流れというか、恋愛がテーマだったから?
そうですね。「Innocent Age」の収録曲は全16曲で、いつものアルバムより曲数が多めなんですけど、最初は全13曲くらいのイメージだったんです。なぜ曲数が増えたかというと、テーマに沿って曲をセレクトしていくうちに全体的に明るめの曲ばかりになってしまったので、スパイスに“陰”の曲も差し込んだからなんですね。あと、マスタリング音源ができてからは家で毎日聴いてるんですけど、自分のアルバムなのに新鮮で、すごく聴きやすいというか、日常になじむというか。
──「日常の中で聴きやすい」というのも大きな変化かもしれませんね。今までのアルバムは、別世界に連れていくみたいな感じだったので。
ファンの皆さんも「あれ? いつもと雰囲気が違うぞ?」って思うかもしれません。今の音楽活動をランティスさんと一緒にやらせていただいて、もう……何年?
──2007年から数えて9年ですね。
9年! すごい! その間にいろいろな作品を作って、自分も成長させてもらって、もちろん年齢も重ねていって、今の私だから歌える恋愛の歌なのかなって気がしますね。それこそ9年前を振り返ると、こんなにナチュラルな音楽を作っているなんて想像も付かなかったので。
──1stアルバム「Contact」(2007年10月発売)と比べたら、ガラリと印象が変わっていますもんね。歌い方にしても、ニューアルバムではすごくのびのびしているように感じます。
そう言っていただけると、とてもうれしいです。今回、そこが非常に難しかったんですよね。私はデジタルな曲を多く歌ってきたこともあってか、とにかく正確にハッキリ歌うクセがついてしまっているので、それを緩める作業が大変で……。恋愛という、人の気持ちをテーマに作っているわけだから、その繊細な心の動きを、こう、柔らかく歌に乗せないと伝わらないと思って。だからいつもよりもあえてルーズに、ファジーに歌う必要があって、もう、タコになったような気持ちで。
──タコ?
軟体動物になろうとしたんです。歌い方を緩めようと、レコーディング中はずーっとゆらゆら揺れてました(笑)。
次のページ » みのりんの恋は、猪突猛進?
- ニューアルバム「Innocent Age」 / 2016年4月6日発売 / Lantis
- Blu-ray付初回限定盤 [CD+Blu-ray] 6264円 / LACA-35550
- DVD付初回限定盤 [CD+DVD] 5184円 / LACA-35551
- 通常盤 [CD] 3240円 / LACA-15550
CD収録曲
- いつかのわたしへ
[作詞:畑亜貴 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:須藤賢一] - Awakening the World
[作詞:こだまさおり / 作・編曲:堀江晶太] - 視線の行方
[作詞:こだまさおり / 作曲:田代智一 / 編曲:菊池達也] - きみのせいだよ
[作詞・作曲:楠瀬拓哉 / 編曲:多田彰文] - あなたの声が聴きたくて
[作詞:松井洋平 / 作曲:俊龍 / 編曲:藤田淳平 (Elements Garden)] - 恋
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:堀江晶太] - 月の様に浮かんでる
[作詞:松井洋平 / 作・編曲:藤末 樹] - 春風千里
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:山元祐介] - ラストカード
[作詞・作曲:楠瀬拓哉 / 編曲:中土智博] - Love Blossom
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:黒須克彦] - Dancin' 世界がこわれても
[作詞:畑亜貴 / 作・編曲:山下洋介] - カタチナイモノ
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:藤末樹] - ふたり
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:黒須克彦] - ありがとう、だいすき
[作詞:畑亜貴 / 作曲:rino / 編曲:Evan Call(Elements Garden)] - 会いたかった空
[作詞:畑亜貴 / 作曲:菊田大介(Elements Garden)/ 編曲:藤田淳平(Elements Garden)] - はるかのわたしへ
[作詞:畑亜貴 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:須藤賢一]
Blu-ray / DVD収録内容
- 「Love Blossom」MV
- 「恋」MV
- 「Minori Chihara Xmas Party 2013」ライブ映像
Minori Chihara Live Tour 2016 ~Innocent Age~
- 2016年6月18日(土)
- 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2016年6月25日(土)
- 宮城県 イズミティ21 大ホール
- 2016年7月10日(日)
- 福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2016年7月17日(日)
- 大阪府 大阪国際会議場 メインホール
- 2016年7月18日(月・祝)
- 愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
料金:全席指定 7020円(全公演共通)
一般発売:2016年4月23日(土)10:00~
茅原実里 ニューアルバム「Innocent Age」発売記念イベント
- 2016年4月6日(水)
- 東京都 ダイバーシティ東京プラザ フェスティバル広場
OPEN 18:00 / START 18:30
内容:トーク&ミニライブ / 特典お渡し会
観覧無料(優先エリアあり)
※「優先エリア券」および「特典お渡し会参加券」は東京・TOWERminiダイバーシティ東京 プラザ店でのアルバム予約購入者(全額前金)、もしくは当日イベント会場内特設ブースでのアルバム購入者に先着で配布。
茅原実里(チハラミノリ)
2004年4月にテレビアニメ「天上天下」棗亜夜役で声優としての活動を始め、同年12月にはアルバム「HEROINE」で歌手デビュー。2006年4月より放送されたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希役で一躍注目を浴び、平野綾、後藤邑子と共に歌った同アニメのエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」は大ヒットによりゴールドディスクに認定された。2007年1月にLantisより発売されたシングル「純白サンクチュアリィ」を契機に、本人名義による音楽活動を再開。以降、アニメソングを中心とした楽曲を数多く発表し、声優アーティストとして高い評価を集める。2010年5月には初の日本武道館ワンマンライブを大成功に収め、2011年3月には「第5回声優アワード」歌唱賞を受賞した。2014年9月にはデビュー10周年を記念したベストアルバム「SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~」を発表。同年11月には2度目の日本武道館公演を行った。2016年4月にはおよそ2年半ぶりとなるオリジナルアルバム「Innocent Age」をリリース。