音楽ナタリー Power Push - 茅原実里
16編の物語でつむぐみのりんの恋愛観
恋が実り、幸せMAXの無敵モード
──そんな紆余曲折を経て、10曲目の「Love Blossom」で恋が成就するわけですが、先ほどの「いい妄想」よろしく、この曲も未来を見ていますね。
ようやく両思いになれて、これから一緒に歩んでいくんだ!と……ふふふ、思っちゃいますね(笑)。
──なんでそこ笑ったんですか?
だって、幸せMAXじゃないですか。「付き合おう!」ってお互いが同じ気持ちになった瞬間って。そしたら、この時間がずっと続くといいなって願いますよね。歌詞にある通り「恋の花が咲き誇」るんですよ。
──花のイメージは、アルバムのアートワークにも反映されていますね。
満開です(笑)。
──そのお花が、極端にでかくてびっくりしたんですけど(笑)。
ははは(笑)。ジャケットは3種類あって、それぞれ蕾と、満開のお花と、枯れたお花で気持ちの変化を表しているんです。ジャケットもそうですし、フォトブックも、「Love Blossom」のミュージックビデオも花まみれです。やっぱり恋は育ててゆくものだから、お花のイメージなんですよね。
──その次の曲「Dancin' 世界がこわれても」は非常のノリのいい、テンションの高い曲で。もはや怖いものなしの無敵モードに入ってますよね。
ハッピーモード全開で。実はこの曲自体は去年、あるシングルの制作をしていたときにコンペでいただいた曲で。そのときは採用されなかったんですけど、いつか絶対に歌いたいと思ってたんですよ。ライブのことも考えると、こういう曲もあったほうがいいし、ちょうどアルバムを盛り上げる曲になったかなと。
──確かに。そして歌詞が結構きわどいですよね。リスナーとしてはいろいろと想像力を働かせざるを得ない。
はいはい。この曲はもう、「大胆にセクシーに、大人びた内容にしてほしい」とプロデューサーに伝えたところ、畑(亜貴)さんから素敵な歌詞をいただきました。なので、レコーディングのときもなるべく私のセクシーさを出せるように、がんばって歌いました。
からの、疑心暗鬼で闇堕ち寸前
──次の「カタチナイモノ」は、ご自身で作詞なさっていますが、一転して悩みまくっているというか。
疑心暗鬼になって、自分1人で迷って行き詰まってしまっている。男性からすれば、おそらく面倒くさい女。でも、もう好きすぎちゃって、のめり込みすぎちゃって、独りよがりの状態。だけど、相手のことを信じたいのに信じられなくて……っていう不安は発生しますよね、恋愛してると。
──思い当たるフシが?
ふふ(笑)。
──しかしそんな女心も、もはや「メンヘラ」の一言で片づけられてしまうかもしれない世知辛い世の中に……。
ああ、確かに。
──不器用な片思いがストーカー扱いされたり。いや、もちろん本物のストーカーは犯罪ですけど。
私もね、中学時代にシノヅカ君のお家の前で、ずっとシノヅカ君の部屋を見つめてたりしてましたから。
──いいじゃないですか! 一緒に帰りたくて、下駄箱のあたりで待ち伏せじゃないですけど、何かと理由をつけて下校のタイミングを合わせたり。
そうそう。私の家はシノヅカ君が塾へ行くときの通り道にあったので、ベランダに出て、シノヅカ君が家の前を通るのをずっと待ってたりとか。
──そのときも見てるだけですか?
声をかけたこともあったかなあ……。あの頃は純粋な気持ちで、自然とそういうふうになっていたものが、ねえ。ストーカーなんて言われちゃうと悲しいですよね。ちょっと声が聞きたいからって、つい電話しちゃうとかね。
──僕の場合、中高生のときはまだ携帯電話なんてなかったので、そのハードルもわりと高くて。
そうか、つながる手段も限られていましたね。
──好きな子とつながる前に、まずその子のお母さんとつながらなくちゃいけなかったですからね。
あはは(笑)。それに比べれば、今は気持ちのやりとりが簡単になったものですよね。でも、簡単になってしまったがゆえに失われてしまったものもありますよ。いつでも連絡がとれてしまうぶん、「よし!」っていう気持ちが薄まるというか。
──「よし!」とは?
うーん、勇気だったり、喜びだったり。例えばLINEとかは便利ですけど、本当に大事なことを伝えたいときに、その思いをちゃんと伝えられるのかは疑問ですね。人それぞれだとは思いますが。
──その発言から察するに、茅原さんは告白するときも、告白されるときも、直接面と向かってじゃないと許さないタイプですよね?
当然です! でないと、気持ちを受け取りようがないです。
本当は16曲では収まらない恋の話
──楽曲に話を戻すと、この「カタチナイモノ」はレコーディングに苦しんだとブログに書かれていましたよね?
ええ、たいそう苦しみました。
──後半テンポチェンジがあったり、かつエモーショナルに歌い上げる系の曲で。
そうなんですよ。だから、どうやってドラマを作っていったらいいんだろうって。最初のほうは曲の1番と2番で、気持ちに差が付けられないというか、同じような雰囲気でずっと歌ってしまうところがあって悩みましたね。
──それは、差をつけてほしいという指示があったんですか? それとも自分で変えたいと思ったんでしょうか。
自分で変えたいと思ったし、ディレクターの指示もありました。どうしたら色付けできるか考えて、曲の序盤はとにかく抜けるだけ抜いてみたり。
──「抜く」とは?
気持ちの入れ具合、乗せ具合ですね。後半に向けて、徐々に盛り上げて感情を爆発させたいと思ったので、最初から出しすぎないように、勢いをセーブするのが難しかったです。それから「カタチナイモノ」は不安定な、文字通り「カタチ」の整わない歌にしたくて。
──心の揺らぎを表現する、みたいな?
それです。デモをいただいたときから、いい意味でいろいろバランスが崩れてて面白いなと思ったんですよ、この曲は。
──そうした曲調と歌い手の気持ちはしっかりリンクしてますよね。繰り返しになりますが、前半の曲は、気持ちとしては上り坂で、能天気といっては失礼ですが……。
前半はまだ恋が訪れる前なので、気持ち的には穏やかで余裕がある感じなんですよね。
──でも中盤以降はただハッピーなだけではいられなくなり、感情の振れ幅も大きくなっていく。
きっと恋愛にはもっといろいろな感情が入り混じっていると思うんですよ。とても16曲では収まり切らない。でも、16曲でもこんなに疲れるんだって思いましたね(笑)。
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- ニューアルバム「Innocent Age」 / 2016年4月6日発売 / Lantis
- Blu-ray付初回限定盤 [CD+Blu-ray] 6264円 / LACA-35550
- DVD付初回限定盤 [CD+DVD] 5184円 / LACA-35551
- 通常盤 [CD] 3240円 / LACA-15550
CD収録曲
- いつかのわたしへ
[作詞:畑亜貴 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:須藤賢一] - Awakening the World
[作詞:こだまさおり / 作・編曲:堀江晶太] - 視線の行方
[作詞:こだまさおり / 作曲:田代智一 / 編曲:菊池達也] - きみのせいだよ
[作詞・作曲:楠瀬拓哉 / 編曲:多田彰文] - あなたの声が聴きたくて
[作詞:松井洋平 / 作曲:俊龍 / 編曲:藤田淳平 (Elements Garden)] - 恋
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:堀江晶太] - 月の様に浮かんでる
[作詞:松井洋平 / 作・編曲:藤末 樹] - 春風千里
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:山元祐介] - ラストカード
[作詞・作曲:楠瀬拓哉 / 編曲:中土智博] - Love Blossom
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:黒須克彦] - Dancin' 世界がこわれても
[作詞:畑亜貴 / 作・編曲:山下洋介] - カタチナイモノ
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:藤末樹] - ふたり
[作詞:茅原実里 / 作・編曲:黒須克彦] - ありがとう、だいすき
[作詞:畑亜貴 / 作曲:rino / 編曲:Evan Call(Elements Garden)] - 会いたかった空
[作詞:畑亜貴 / 作曲:菊田大介(Elements Garden)/ 編曲:藤田淳平(Elements Garden)] - はるかのわたしへ
[作詞:畑亜貴 / 作曲:黒須克彦 / 編曲:須藤賢一]
Blu-ray / DVD収録内容
- 「Love Blossom」MV
- 「恋」MV
- 「Minori Chihara Xmas Party 2013」ライブ映像
Minori Chihara Live Tour 2016 ~Innocent Age~
- 2016年6月18日(土)
- 神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2016年6月25日(土)
- 宮城県 イズミティ21 大ホール
- 2016年7月10日(日)
- 福岡県 福岡国際会議場 メインホール
- 2016年7月17日(日)
- 大阪府 大阪国際会議場 メインホール
- 2016年7月18日(月・祝)
- 愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
料金:全席指定 7020円(全公演共通)
一般発売:2016年4月23日(土)10:00~
茅原実里 ニューアルバム「Innocent Age」発売記念イベント
- 2016年4月6日(水)
- 東京都 ダイバーシティ東京プラザ フェスティバル広場
OPEN 18:00 / START 18:30
内容:トーク&ミニライブ / 特典お渡し会
観覧無料(優先エリアあり)
※「優先エリア券」および「特典お渡し会参加券」は東京・TOWERminiダイバーシティ東京 プラザ店でのアルバム予約購入者(全額前金)、もしくは当日イベント会場内特設ブースでのアルバム購入者に先着で配布。
茅原実里(チハラミノリ)
2004年4月にテレビアニメ「天上天下」棗亜夜役で声優としての活動を始め、同年12月にはアルバム「HEROINE」で歌手デビュー。2006年4月より放送されたアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希役で一躍注目を浴び、平野綾、後藤邑子と共に歌った同アニメのエンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」は大ヒットによりゴールドディスクに認定された。2007年1月にLantisより発売されたシングル「純白サンクチュアリィ」を契機に、本人名義による音楽活動を再開。以降、アニメソングを中心とした楽曲を数多く発表し、声優アーティストとして高い評価を集める。2010年5月には初の日本武道館ワンマンライブを大成功に収め、2011年3月には「第5回声優アワード」歌唱賞を受賞した。2014年9月にはデビュー10周年を記念したベストアルバム「SANCTUARY ~Minori Chihara Best Album~」を発表。同年11月には2度目の日本武道館公演を行った。2016年4月にはおよそ2年半ぶりとなるオリジナルアルバム「Innocent Age」をリリース。