ナタリー PowerPush - CHI-MEY
“会いに行ける歌のお兄さん”が語る 彩り豊かな半生とは?
自分がその曲で楽しいかどうか
──そのショーを作る上では、どんなことが基本になってるんですか?
ステージに関しては、大学のころに舞台関係のチラシをお手伝いしたり、あと音楽をちょっとお手伝いしたりでミュージカルとか小劇場のスタッフに入ることが何回かあったりしたので、そういうものをヒントにしてますね。最初に「参考にすれば?」と教えてもらったのが米米CLUBさんなんですよ。当時は僕ひとりでやってたんですけど、「ああいうふうに大所帯でやったら面白いと思うよ」って。そこから15人ぐらい、ミュージカル上がりの子とか「一緒にやんない?」っていろいろ集めてたりしました。友達から舞台のことをたくさん教えてもらったり、自分でも観にいったりしたので、そのころのことがあって今がある、という感じです。それも見よう見まねで、自分で思考錯誤しながら作ってきています。「CHI-MEYではこのやり方がいいかもしれない」というふうにね。
──で、そういうアーティストとしての活動がありつつ、さまざまな楽曲提供をしたりしてますよね。
はい、機会があるときに書かせてもらっています。でも子供向けの曲を書くときも、大人向けの曲を書くときも、作ってる感覚は一緒なんですよね。やっぱり自分がその曲で楽しいかどうか、なんですよ。あとは、5歳だった当時の自分を思い出したりして……子供の目線ってけっこうヒネくれてるじゃないですか?(笑) 自分の親を思ったよりもちゃんと見てたり。で、あの頃の自分の感覚で、もしショッピングセンターに行って、お母さんに「何かやるから見てく?」って言われてCHI-MEYのショーを見たとき、「あ、ちょっと楽しいかも」と思って前のほうに行こうとするかな? とか……そういうことを想像しながら曲作りをしてますね。
子供の曲を作るときは当時の自分に戻る
──自分が子供だった頃の感覚って、よく覚えているほうですか?
僕、覚えてることは、すごい覚えてるんですよね。一番鮮明に覚えてるのは、シャケ弁事件(笑)。母親とおじいちゃんと僕でいたとき、家にあったのがシャケ弁、シャケ弁、ノリ弁だったんですよ。それで僕、シャケ弁がどうしても食べたかったんですけど、「いや、ちっちゃいからノリ弁だ」ってノリ弁を押し付けられて(笑)。それでどう怒っていいんだかわかんなくて「ウーン!」ってなっちゃって、そのノリ弁を手でグシャグシャグシャグシャ、ボーン!ってやって捨てたんですよ。それでめちゃくちゃ怒られて……(笑)。
──そりゃ怒られるでしょ(笑)。
あのときの「やったら怒られるけど、この気持ち、もうどうしたらいいんだかわからない! 押さえられない!」っていうときの感覚とか、「うわ、やっちゃったー! 怒られる、怖い!」と思う感覚とか……そういう自分を思い出したりしますね。
──リアルなエピソードですね。
あと保育園の頃、子供なのに「ナイトライダー」とか「西部警察」が好きだったんですけど(笑)、「早く車を運転したいなー。あと何年ぐらい待てばいいのかなあ?」みたいなことを、お昼寝の時間にひとり寝ないでずっと考えてたことを思い出しますね。大人から見る子供の世界と、子供が感じてる子供の世界って、全然違うんですよ。子供は、3歳児なら3歳児なりにそれが最高にイケてる自分なんです。それが年齢を重ねてくごとにまた新たな発見があるというだけで、大人が思っているような「子供」っていう感覚は、子供は持っていない。覚えてません? 初めてドキッとした保育園の先生とか(笑)。僕、初恋が保育園の先生なんですよ。顔も名前も全部覚えてて、でも結婚してアメリカに行っちゃったらしいんですけど……あの頃のことを思い出しますね。いじめっ子にいじめられてたときの感覚とか、「絶対俺が描いてる車のほうがカッケーよ!」とか思いながら、でもアハハハと笑ってた感じとか。
──なるほど。その頃の記憶というか感覚が鮮明で、「今思うと、実はあのときは……」というように考えられるんですね。
そうですそうです。だから子供の曲を作るときは、なるたけその頃の自分に帰って書いてますね。僕の好きな言葉に「子供は親の言うようにはならないけど、親がするようにはなる」っていうものがあるんですよ。親がああしろこうしろと言っても絶対そうなんないですけど、親がゴミを捨てればゴミを捨てる子供になりますし、拾う親だったら、たぶん拾う子供になると思う。そのぐらい子供は親の背中を見ているんですよね。それこそ「触っちゃダメ」と言われたら、触りたいじゃないですか(笑)。自分はそういうところに極力戻るようにしています。でもそれって、さっきも言いましたけど、別に大人の曲を書いてても一緒なんですよ。自分がその曲でテンション上がんなかったら、そんなものはなんでもないし。
CHI-MEY(ちーみー)
8月19日生まれの男性シンガーソングライター。学生時代より、さまざまなジャンルで音楽活動を展開する。バンドやクラブでのライブ活動を経て、ソロアーティストに移行し、同時に他アーティストへの楽曲提供も開始する。2008年には自身が展開する架空のテーマパーク・ジェイムランドを舞台にした初のソロミニアルバム「WELCOME TO J'AIMELAND」をリリース。2010年10月、NHK「みんなのうた」にも起用されたシングル「フレ!フレ!大丈夫!」でメジャーデビューを果たした。リリースと並行して、幼稚園やショッピングセンターなどで子供向けのライブを精力的に行っている。また、他アーティストへの楽曲提供やテレビ番組テーマ曲の作曲なども多数手がけており、新進気鋭の作曲家としても大きな注目を集めている。