ナタリー PowerPush - CHI-MEY
“会いに行ける歌のお兄さん”が語る 彩り豊かな半生とは?
自分がキャラクターになっちゃえばいろんな曲が作れる
──その時期はもう音楽の道に進もうという意識があったんですか。
あ、ありました。「何かするんだろうな」ということはありましたけど、ただ、自分の中ではいろんなタイプの曲を作れることがネックだったんですよ。「たぶん売りづらいんだろうな」とか「『こっちの路線に行け』とか言われんのかな?」とか、そういうヘンな心配ばかりしてて(笑)。
──自分で「これをやる」とは決められなかったということですか?
うん、全然ですよ。作る曲もしっちゃかめっちゃかだったんで(笑)、それがすごいネックだったんです。そのときにヒントになったのがミッキーマウスなんですよ。正月に東京ディズニーランドに行くとミッキーが袴着てるじゃないですか? アメリカ人なのに(笑)。ああいう感じで「自分がキャラクターになっちゃえば、衣装や演出を変えていろんな曲をやっても別にいいじゃん」と思えて。それに音楽だけじゃなく、もともと“創る”ということが好きで、ほかにもいろんなものを作ったり描いたりしてたんです、趣味程度ですけど。そういうのを全部まとめちゃえばいいんだと思って、ジェイムランドという島を作ったんですね。
──CHI-MEYさんの想像の世界ですね。
はい。そうすると、曲から派生して物語のキャラクターが生まれて、それがグッズになったりアニメになったりするかもしれないし、逆にキャラクターが生まれてからその人たちの主題歌が生まれたり、ということもあるじゃないですか?「そういうふうにやっているアーティストさんっていないなぁ」と思って。でも大学を出る時に、ほんとに先生になりたい気持ちと音楽を目指したい気持ちと両方あって、悩んでたんです。教育実習の生徒からは「いつ先生になるの?」ってチクチク言われて(笑)、「うんうん」って答えてたんですけど。でも気持ちは、もう音楽に行ってて……。
──子供たちにはウケがいい先生だったんですか?
はい(笑)。いやあもう、僕も好きだったし、子供たちもワーッて寄ってきてくれてたんですよ。それで「試験を全力で受けて、受かったら先生になろう」と決めたこともあったんですけど、ただ……ヘンな言い方になっちゃいますけど、試験官の先生たちはちゃんと見てたんだなっていう(笑)。僕の気持ちが、やっぱり音楽のほうに向いてたことをね。それと、父親の一言が最後の後押しだったんですけど……「お前にできることをお前がやりなさい」と。「その役割を受け止めて、全うすることが最高の社会貢献につながる」って。先生という仕事は、自分がどうしてもやりたければ、別に60歳になってもできるじゃないですか? でも、今やりたいなと思ってるこのCHI-MEYという形はやっぱり今やるべきだし、ここに賭けたいなと思って。それで思いきって飛び込んだんです。ただ「音楽で何かできるようになったあかつきには、子供たちのところで何かしてみたいな」と思っていたので、結果的に今こういう形でそれが実現してるんですよね。
子供たちのショーと大人のショーの違い
──学校の先生になりたかったことも含めて、昔から子供にまつわる何かをしたかったみたいですね。
そうですね。僕、5人兄弟の真ん中で、下に弟が2人いるんですけど、それこそ弟たちに算数の宿題を出して、丸つけてやるのが大好きだったんですよ。それは母親が「先生っていう仕事は楽しかったよ」って食事を作ってるときにずっと話してくれたのを聞いていたから、「ああ、そんなに楽しいんだったらやってみたいな」と思ったところから始まったんですよね。
──お母さんの影響だったんですね。
ただ厳密に言うと、なろうと思っていたのは小学校の教諭ですけど、いま僕が対象にしてる子供たちは未就学児童なんですよ。その時点でまったく世界が違うので、最初に未就学児向けにショーをやるときは本当に緊張したんです。でも、やってみると未就学児童に向けてやるのも好きだな!と思って。それに対して、小学校から上の子たちは、皆さんと同じ大人として扱ってショーをやっていいんだな、ということをつかんできたところがあります。
──そんなに違うんですか。
はい。今は、子供たちのショーと大人のショーと、あえて2つに分けてやっています。まず子供たちとお母さんがショーを見てくれて、そのお母さんたちが今度は大人のショーにも来てくれたらいいな、と。それで次は大きくなった子供たちが今度は大人のショーに一緒に行ける日がくるといいな……っていう感じでやってくと、将来的に家族で楽しんでもらえるアーティストという形が作れるんじゃないかなと(笑)。それはジェイムランドを作るときに思っていたことなんですけど、少しずつですがそういう形が見えてきてるんで、楽しいですね。
CHI-MEY(ちーみー)
8月19日生まれの男性シンガーソングライター。学生時代より、さまざまなジャンルで音楽活動を展開する。バンドやクラブでのライブ活動を経て、ソロアーティストに移行し、同時に他アーティストへの楽曲提供も開始する。2008年には自身が展開する架空のテーマパーク・ジェイムランドを舞台にした初のソロミニアルバム「WELCOME TO J'AIMELAND」をリリース。2010年10月、NHK「みんなのうた」にも起用されたシングル「フレ!フレ!大丈夫!」でメジャーデビューを果たした。リリースと並行して、幼稚園やショッピングセンターなどで子供向けのライブを精力的に行っている。また、他アーティストへの楽曲提供やテレビ番組テーマ曲の作曲なども多数手がけており、新進気鋭の作曲家としても大きな注目を集めている。