BiSH&渡辺淳之介(WACK)インタビュー|幕張7000人ライブはスタート地点 BiSHが見据える“最高のその先”

渡辺淳之介(WACK)インタビュー

自分の手から離れた気がする

──BiSH幕張公演、大成功おめでとうございます。

渡辺淳之介(WACK)

無事に終わってよかったです。今は安心してちょっと気が抜けちゃってるぐらいの感じなんですけど。

──今回のライブはどういうコンセプトを考えていましたか?

前回の「NEVERMiND TOUR」は生バンドと一緒にやって、バンドはバンドですごくよかったんですけど、今回は本人たちをもっと見せたいなっていう気持ちが強かったので6人だけでやらせてみました。基本的にはいわゆる正統派のライブを目指してたんで、そこはきちっとできたかなという感じです。あと売り切れてくれたんで演出もそれなりに派手にできたし。LEDビジョンとかは券売状況に応じてだんだん数を増やしていったので(笑)。

──特別なステージセットはなく、6人だけのまっすぐなパフォーマンスが印象的でした。

全国をずっとツアーで回って、彼女たち自身が成長したなっていうのをすごく感じてたんで、特にセットとかいらないよねって思って。歌ってる顔をLEDビジョンで映したりするのもホントはあんまり好きじゃないんですけど、まあステージと客席の距離が遠いし、お客さんは見たいだろうしみたいなとこで入れました。でもこれくらいの規模になると自分の手から離れちゃった気がしてちょっと寂しかったですけど。

──離れちゃったというのは?

以前BiSをやってたときは「俺がやってるんだ」っていう意識が強かったんです。でもBiSHは俺やエイベックスのサポートもありつつ、やっぱり本人たちのパワーでやってる部分がすごく大きいんだなって感じたんですよね。

──確かに今回のライブでは、いい意味で渡辺さんの影が見えないなと感じました。

幕張イベントホールより渡辺淳之介とBiSH。(撮影:音楽ナタリー編集部)

そうなんですよ。BiSの横浜アリーナ(2014年7月)のときは、俺どうしても横浜アリーナのステージに立ってみたくて松隈ケンタ(サウンドプロデューサー)と一緒に出ていって歌ったんですよ。で、今回も最初は出る気満々だったんだけど、直前で「やめよう」「俺らが出てもたぶんお客さんみんなポカーンってなるよ」っていう話になって。やっぱりこれぐらい規模が大きくなると、もう内輪ノリが通じないんですよね。BiSは最大規模の内輪ノリを延々やり続けたって感じだったけど、今はもうそこじゃないなっていう気持ちが強くて。

──BiSの横アリに来ていた人はみんな渡辺淳之介という存在を知っていたけど、今回のBiSHは渡辺さんを知らない人もいたかもしれない。

いや、もう大多数が俺のこと知らないだろうって感じがしてます。だから寂しいかって聞かれたらまあ寂しい(笑)。でもこれがきっと“売れる”ってことなんだと思うし、BiSHは俺が仕掛けて売るというより、彼女たちのやりたいことをやると売れるみたいな状況に、もしかしたらなるのかもしれないなっていう期待があります。

──メンバー6人の中に、渡辺さんの仕掛けを超える何かがあるということ?

そうですね。何がすごいのか俺はちょっとわかんないんですけど、でも全国どこのライブハウスに行っても、そこのスタッフさんたちがみんな彼女たちのことを好きになるんです。別に媚びを売るとかでもないんですけど。どうしちゃったんだろうなって思いますよね(笑)。

リンリンとハシヤスメの成長

──アンコールの個別MCの内容については何か指示をしていたんですか?

いや、内容は事前になんとなく聞いたんですけど、基本的に「いいんじゃない?」としか言ってないです。でもちょっと真面目すぎましたよね。あそこでもっとふざけられたらたぶんロックスターになれると思うんだけど、まだそこまでの器量じゃないのかもしれない。

──それで言うとハシヤスメさんはちゃんと笑いを取ってましたよね。

あそこでトボケられたのはよかったですね。やっぱりリンリンとハシヤスメが入る前の4人がけっこう優等生だったんですよ。ヘンなやつらだけど基本は真面目にやれる子たちだから。だからリンリンとハシヤスメっていうのはBiSHをぶっ壊してくれそうだと思って採ったんです。

──実際加入してみてどうでしたか?

ちょっと時間はかかったけど、最近はハシヤスメがわけのわからないコントをやり始めたりとか、リンリンがどんどんパンクな方向に行ったりとかして面白いです。リンリンなんて最初は髪染めたこともないぐらいの感じだったのに、いつのまにか戸川純みたいになってきて、すごくいいアイコンになってくれてますよね。

BiSH

去年の夏に会場を押さえた

──そもそも今回ツアーファイナルの会場に幕張を選んだのはなぜだったんですか?

ずっと人気よりも小さな会場でやってきたのですごく大きな会場でやりたかったんですよね。じゃあどうしようって考えてたときにたまたま幕張を押さえることができて、それが去年の夏ぐらい。

──去年の夏の時点で幕張イベントホールが埋まる目算があった?

なかったです(笑)。まだ日比谷野音もやってなかった時期だし、むしろ直前まで埋まるわけないと思ってて。だから会社的にもかなり危険な賭けだったんですけど、BiSHの勢いを信じて、もう思い切って飛び込んでしまおうと。

──失敗したらWACKの存続に関わるくらいの挑戦だったわけですね。

ホントそうですよ。なんで幕張でやろうと思ったんだろう。無事に終わったんでもういいんですけど(笑)。

BiSHが目指している場所

──BiSHの次の展開についてはどのように考えていますか?

こういうときに思いっきり攻めて失敗してる人たちをけっこう見てるんで、もう1回地道にやりたいなと思ってます。だから無闇にキャパを広げていくんじゃなく、またライブハウスツアーをやろうか、みたいなことは考えてて。BiSHを長く続けるためにどういうスタンスがいいかは、ちょっと慎重に見極めたいとこですね。

──話題作りのための変わった企画みたいなものは?

たぶんもうやらないかな。ライブではカッコいい路線で攻めてちょっと手の届かない存在だって思ってもらいたくて、その一方で握手会とかではただの女の子っていう形が理想かなと思ってます。そのギャップを強化していきたいんですよね。

──バランスが難しそうですね。

でもAKB48がそれを完璧にできてるんで、俺としてはそこから逃げられないなっていう気がしてるんですよ。だからBiSHが目指している場所は、ももクロやでんぱ組.incとはちょっと違うのかもしれない。

──渡辺さんにとっては、規模的にも方法論的にも未踏の領域ですね。

そう、どうしたらいいのか全然わかんないんですよ。でもだからこそ楽しいし、寂しいし、いろんな感情が混ざってます。あとはせっかくBiSHが売れてきたんで、もっと音楽業界に牙をむいて爪痕を残したいなって気持ちもあって。

──具体的には?

アルバム無料配信とか値段の高いVIPチケットとか、俺ずっとやってるけどまだあんまり浸透してないんで、なんでなんだろうと思ってるんですけど。海外では当たり前のことが日本ではまだまだだったりして、BiSHを使ってそういうのをもっと広めていきたいなと思ってます。需要と供給が合ってればお客さんも喜んでくれるだろうし。まあ結局俺が目立ってカッコいいと思われたいっていうだけなんですけどね(笑)。

BiSH
BiSH「GiANT KiLLERS」
2017年6月28日発売 / avex trax
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BiSH(ビッシュ)
BiSH
アイナ・ジ・エンド、モモコグミカンパニー、セントチヒロ・チッチ、ハシヤスメ・アツコ、リンリン、アユニ・Dの6人からなるアイドルグループ。BiSを作り上げた渡辺淳之介と松隈ケンタが再びタッグを組み、彼女たちのプロデュースを担当する。2015年5月27日に1stアルバム「Brand-new idol SHiT」をリリース。同年5月には東京・中野heavy sick ZEROにて初のワンマンライブ「THiS IS FOR BiS」を開催し、以降のライブは各所でソールドアウトを記録する。2016年1月に2ndアルバム「FAKE METAL JACKET」を発表。同年5月にはメジャー1stシングル「DEADMAN」をリリースしavexよりメジャーデビューを果たした。さらに6月から10月にかけて全国ツアー「BiSH Less than SEX TOUR」を開催し、ツアーファイナル「帝王切開」では東京・日比谷野外大音楽堂で単独公演を成功させた。同年10月にメジャー1stアルバム「KiLLER BiSH」を発売。2017年1月から全国6都市を巡る「BiSH NEVERMiND TOUR」を実施した。同年3月にメジャー2ndシングル「プロミスザスター」をリリースし、6月にミニアルバム「GiANT KiLLERS」を発表。7月22日には千葉・幕張メッセ イベントホールにてグループ史上最大規模のワンマンライブを行った。