ナタリー PowerPush - BEATRAM MUSIC FESTIVAL 2013

路面電車がステージになるフェス、その魅力

10月12、13日に富山・富山市内で野外フェス「BEATRAM MUSIC FESTIVAL 2013」が開催される。昨年産声を上げたばかりのこのフェスは、市街地の中心部での開催や路面電車をステージにしたライブなど、ほかの音楽イベントとはひと味違った特色を打ち出し注目を集めている。今回ナタリーでは、同フェスに出演する佐野史郎、南壽あさ子の2人と、ビートラム2013実行委員会事務局の梶原徳行氏にイベントの魅力を聞いた。

取材・文 / 加藤一陽 インタビュー撮影 / 長江佳美

 
mixiチェック

路面電車でライブをやるってほかにはないんじゃないかな

左から梶原徳行、佐野史郎、南壽あさ子。

佐野史郎 このフェスって、始まって何年目なんですか?

梶原徳行 去年始めたばかりなので、今回で2回目です。スタートのきっかけは、会場の富山城址公園の活用方法について行政側と話していたときに、「富山市の中心市街地って秋にお祭りがないよね。何かやりませんか?」って投げかけられたことです。そのとき僕の中にあった「フェス」っていうアイデアを企画書にして出したら通って。

──このフェスの特色はいろいろありますけど、中でもステージの1つが路面電車であるという点は独特ですよね。

梶原 京都をはじめ他県にも路面電車があるのは聞いたことがありますけど、路面電車でロックやポップスのライブをやるのって、おそらくほかにないんじゃないかな。フェスをやることが決まったときに、全国にたくさんあるフェスの中から多くの人に気付いてもらうために何か特色が必要だなと思っていたんですが、その一方で、最近はアーティストがライブハウス以外の場所で演奏したがっているという声をよく聞いていたんです。それで富山には路面電車があるから、電車でライブをやってもらおうって考えたんですね。普段は交通手段でしかない電車とライブをあわせることで、何か別の価値観を表現できるんじゃないかなと。

佐野 路面電車では、1ステージでどれくらいの時間ライブをやるんですか?

梶原 富山の路面電車は2009年から環状線になっていて、1周を20分くらいで回るんです。だからライブも1ステージ20分ですね。アーティストはそれまでに演奏を終えなければならないので、少し大変かもしれません。

佐野 けっこうすぐですね。

南壽あさ子 私は「BEATRAM」のテレビCMに出演させていただいていて、その撮影で実際に路面電車に乗ったんですけど……けっこう揺れますよね?

梶原 揺れますね。去年はASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤(正文)さんに弾き語りで出ていただいたんですけど、「演奏する場所としては、笑えるくらい揺れる」って言っていて……若干演奏しづらそうではありました(笑)。

南壽 「BEATRAM」って言葉の由来にもなっているんですけど、電車の音がビートを刻んでいるみたいというか……それがすごい素敵なんですよ。

梶原 路面電車が富山の街を走り出して、今年でちょうど100年なんですね。だから、あの電車が刻む音は100年間ずっと街の中で鳴っているんです。それって生活の中に根付いたリズムみたいなものなんだろうなって。その“ビート”に路面電車を意味する“トラム”をくっつけたのが、このフェスの名の由来です。市内をグルグル回っているっていうのも、レコードを想起させてどこか音楽的だなって。

佐野史郎

──ちなみに佐野さん、電車の中でのライブの経験は?

佐野 ないですよ(笑)。ないけど、電車って昔からけっこう音楽のテーマになっているんですよね。僕が音楽と電車と聞いて思い出すのはエンケン(遠藤賢司)の「夜汽車のブルース」。1970年代に岐阜・中津川で行われた音楽イベント「全日本フォークジャンボリー」での「夜汽車のブルース」をレコードで聴いてぶっ飛んだんです。あとははっぴいえんどの「抱きしめたい」とかね。ほかにも(高田)渡さんとかフォークの人たちも電車をテーマにしていたりしましたよね。小坂忠さんの「機関車」や、今だとくるりもそうだし。

南壽 私が去年の11月にリリースした「Landscape」というミニアルバムに「冬の旅人」っていう曲があるんですけど、この曲は一番初めに列車の走るサウンドを入れていて。さらにビデオクリップは、ツアーの帰りに高速道路から見える海辺の景色に魅了されて、半分富山で撮影しているんですけど、電車に乗っているシーンもあるんです。電車って独特の風情がありますよね。

市街地の中心部で大規模フェス

──といっても、「BEATRAM」は電車に縁のあるアーティストのみを集めたフェスというわけじゃないですよね。

梶原 ええ。そこで縛ってしまうとフェス自体が続かないですから(笑)。ライブ会場はメインステージ、プラタナスステージ、路面電車のトラムステージ、そして無料でライブが観られるフロントステージの合計4ステージです。去年より1ステージ増やしています。

佐野 市街地から歩いて行ける距離でこの規模のイベントをやるってすごいですよね。そうないと思う。

左から佐野史郎、南壽あさ子。

梶原 会場の富山城址公園は市街地の真ん中にあって。フェスのチケットがあれば路面電車の乗車が無料になるので、富山駅からすぐに会場まで来れるし、路面電車の沿線上に宿を取ってもらえばより便利だと思います。

南壽 去年「BEATRAM」を観に行ったんですけど、富山城を臨んでライブができるロケーションが素晴らしかったです。そのとき、1日目の最後に飛び入りで歌わせていただいたんですね。タイムテーブルにも載っていないし、誰も自分のことを知らなかったと思うんですけど、帰り際のお客さんがたくさん振り返ってくれて。そういう思い出もあるので、今年改めて出演できてすごくうれしいです。あれ以来富山でライブをすると、「『BEATRAM』で初めて知りました」って言ってくれる人が一番多いんですよ。

梶原 南壽さんはライブを観て知っていたので、その魅力を伝えたくて歌ってもらいました。「BEATRAM」はよく「ユルフェス」って言われるんですけど、まだ生まれたばかりの柔らかい状態だから確かに自由度は高いと思います。

佐野 ユルいと言えば、僕、16歳の頃にギター1本持って「全日本フォークジャンボリー」の事務局に行って「出してくれ」って言ったら、誰も知らないのにウエルカムだった(笑)。しかも地元の高校生の家に泊めてくれたり、その家のお母さんが朝ごはんを作ってくれたりってそれくらいヒッピーな感じでやっていたんだけど。でも最後の開催になった1971年の「フォークジャンボリー」では、メジャーレーベルのアーティストがたくさん出てきて。さらにテレビの中継が入って、それにあわせて進行するようになったんだよね。そういうふうにビジネスが絡んできたら、とたんに客が怒っちゃったんです。「せっかくビジネスとか関係ないところで楽しみに来てるのに」って。それが最後の年でした。でも僕にとっては、少年時代の「フォークジャンボリー」の経験は大きいんだよね。ミュージシャンになろうとは思わなかったけど、当時のアンダーグラウンドやサブカルチャーへの思いみたいなものが、役者の仕事につながっているのは間違いない。

BEATRAM MUSIC FESTIVAL 2013

2013年10月12日(土)

富山県 富山城址公園芝生広場 / 富山市内電車環状線車内

<出演者>

メインステージ

COMEBACK MY DAUGHTERS / FRONTIER BACKYARD / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS / OGRE YOU ASSHOLE / Soggy Cheerios(鈴木惣一朗&直枝政広)/ 黒猫チェルシー / ジョン・B&ザ・ドーナッツ! / フラワーカンパニーズ

プラタナスステージ

SALU / Wienners / ザッハトルテ / セプテンバーミー / ゼラチンシルバーミュージッククラブバンド(佐野史郎BAND)/ チャラン・ポ・ランタン / Special Guest

トラムステージ

KONCOS / 荒井岳史(the band apart) / カジヒデキ / ザッハトルテ / 堂島孝平 / 南壽あさ子

フロントステージ(無料ステージ)

関取花(ヤイリステージ) / ノンブラリ / [lifter] / YOCO ORGAN / W.C.カラス

2013年10月13日(日)

富山県 富山城址公園芝生広場 / 富山市内電車環状線車内

<出演者>

メインステージ

→Pia-no-jaC← / BIGMAMA / THE STARBEMS / ZAZEN BOYS / 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 / 堂島孝平 / 怒髪天 / 南壽あさ子

プラタナスステージ

OLDE WORLDE / OTOTOI GROUP / smoug / アシガルユース / オワリカラ / 黒木渚 / ピロカルピン

トラムステージ

LOW IQ 01 / YeYe / 奇妙礼太郎 / ジョン・B&ザ・ドーナッツ! / スネオヘアー / 日高央(THE STARBEMS)

フロントステージ(無料ステージ)

菅原龍平(ヤイリステージ)/ HAPPY / トレモノ / 挫・人間 / THE TON-UP MOTORS / スカーフ

中夜祭 よふかしBEATRAM

2013年10月12日(土)富山県 富山MAIRO

<出演者>
カジヒデキ / FRONTIER BACKYARD / KONCOS / LOVEBUZZ DJ(COICHI、BOB、CHIGON)

佐野史郎(さのしろう)
佐野史郎

1955年生まれの俳優、映画監督。1975年に劇団シェイクスピアシアターに設立メンバーとして参加する。1980年に唐十郎主宰の劇団・状況劇場に入団すると、ドラマ、映画、舞台と幅広く活躍。1992年にTBS系で放送されたドラマ「ずっとあなたが好きだった」に出演しブレイクした。またタイムスリップやsanchといったバンドを結成し音楽活動も行う。現在はゼラチンシルバーミュージッククラブバンドでギター&ボーカルを担当している。さらに小泉八雲に精通していることでも知られ、作品の朗読や解説、小泉八雲に関するトークショーなども行っている。

南壽あさ子(なすあさこ)
南壽あさ子

1989年千葉県佐倉市出身のシンガーソングライター。幼少の頃からピアノを始め、大学時代に軽音部に所属。2010年より都内を中心にライブ活動を行い、2012年4月にライブ会場と一部店舗でデモ音源「回遊魚の原風景」を300枚限定でリリース。約2ヶ月で完売。そして同年6月に湯浅篤をプロデューサーに迎えたシングル「フランネル」でインディーズデビューを果たすと、11月には1stミニアルバム「Landscape」を発表。2013年10月23日にシングル「わたしのノスタルジア」でTOY'S FACTORYよりメジャーデビューすることが決定している。