ナタリー PowerPush - AZUMA HITOMI
PART1:本人単独インタビュー PART2:西島大介「ハリネズミ」対談
音楽をやろうと決めたのは中学2年の2月1日
──AZUMAさんの楽曲って、コード進行やメロディに独特な切なさがありますよね。そこにルーツが?
AZUMA そうかもしれません。最近はダンスミュージックに寄った音楽性ですけど、以前はコード進行をカッチリと固めてから曲を作っていました。良いコード進行ができれば、良い曲はもうできたもんだって思っていたくらいなので、全体に漂っている雰囲気を大事にしていたのだと思います。
──作曲をLOGIC(アップル社製の音楽制作ツール)でやっているんですよね?
AZUMA そうです。中学生の頃から使っています。ベースやリズムからでも曲が作れるので、遊び感覚で使い始めたんです。私はいつも「歌が何より大事」と言っているのですが、オケを作るときも、歌を何より尊重して作るようにしているんです。とはいえ、作曲の過程において、ベースやリズムなどを考えながら「よし! 今度はこういう曲にしよう」と固まっていくときが一番興奮する瞬間だったりもするので、打ち込みというテクノロジーを使うことで、音楽自体を純粋に楽しめるようになったように感じます。たまに、シーケンスの棒を間違えたところに置いてしまうことで、予期せぬ良さが生まれることもあったりするので、LOGICを使い始めてからはすごく楽しみながら音楽と接していますね。
──初めから、作曲だけではなく自分の歌でやっていこうと思っていました?
AZUMA 音楽でがんばってやっていこうと思ったのは、中学2年の2月1日あたりです。私立の学校に行っていたんですけど、その時期の入試休みに「好きなだけ録音できる!」と思ったんですよね。その当時、1人だけ音楽をやっている友達がいたんですが、彼女と「この入試休みでデモを完成させて、レコード会社に送ろうね」なんて話していて。あのとき、私は音楽でやっていきたいと決めたんだと思います。あの当時はいつも自分で作った曲をバスの中で聴きながら「私って天才!」と思ってました(笑)。でも、他の人の曲を聴くとコード進行がかぶっていて打ちのめされたりしていましたね。
──出身は東京なんですよね?
AZUMA そうです。生まれも育ちも。
──東京の街が、AZUMAさんにとっては原風景であると。音楽性に影響がありそうですよね。
AZUMA 私からすれば、田舎に対する憧れが結構強くあるんです。上京してがんばっている人って、実家に帰ることを「田舎に帰る」って言うじゃないですか。すごくカッコいいなと感じてしまって。その人だけが持っている記憶や風景が、きっとあるんだろうなって。でも私は東京しか知らないので、すごく損した気分なんです。東京から出ていかない閉塞感みたいなものは、私の音楽性に影響を与えている気がします。東京という言葉もすごく多様化していて、「今、ここ」という意味の代名詞として使われているような気がするんです。だから、イメージがどんどんと更新されていってしまうし、留まってくれる風景が少ないんですよね。もちろん、いろいろな人のライブに行けるとか、どんなCDでも手に入るとか、メリットも大きいんですけど。
言葉の力を信じ切れていないから音楽をやっている
──マルチネ・レコードから音源をリリースしていますが、そのきっかけは?
AZUMA 私がコバルト爆弾αΩを知って良いなあと思っていて、そこからマルチネにたどり着いたという感じです。マルチネがCDをリリースしたときにApple Storeでイベントをやったんですが、その時にtomad君に自分の歌ったCDを手渡したんです。そしたら、後日連絡が来て。
──配信レーベルのマルチネにCDを手渡しって、すごいですね(笑)。そして、その後アニメ「フラクタル」のオープニングテーマ「ハリネズミ」を担当することになるわけですね。
AZUMA 監督の山本寛さんから「力強くて、すこしやけっぱちっぽくて、アイルランドっぽいもの」という指定があって、そういう楽曲を作ったら、ありがたいことに採用されたんです。でも、アイリッシュっぽさをどう出すかというのが結構難しくて。それっぽい楽器を入れてしまうのが一番楽なんですが、私がやっているダンスミュージック的な音楽性でそれをどう再現すればいいかすごく考えました。あと、私のデビュー曲でもあるので、自分の持っている音楽性とかけ離れてしまっても良くないなと思って。アニメの設定のひとつに退廃的な世界観があったので、そこからハリネズミに自暴自棄のイメージを重ね合わせて作った曲です。
──そうして生まれた「ハリネズミ」ですが、歌詞が非常に印象的ですね。
AZUMA でも私、言葉の力を信じ切れていないから音楽をやっているというか、言葉の拙い部分を、音楽に助けられているような気がしていて。歌を大切にしているので、言葉である歌詞も大事にしていると思われるんですが、あくまでも音楽の中で生きてくるわけであって、音の景色が言葉を助けてくれているのだと思ってるんです。世の中には胡散臭い言葉があふれているから、自分の言葉もそうなってしまうんじゃないか?っていう恐れをいつも抱いているんですよ。本当は「大丈夫だよ」とか、そういうことも歌いたいし、せっかく発信できる立場にいるのであれば、そういうシンプルな言葉で人を元気づけたりしたいんです。でも私が今「大丈夫」と歌っても、私が全然大丈夫じゃないし(笑)。だから、音楽の見せる景色の作り方は、歌詞と同じかそれ以上に重要視していますね。
──先程ダンスミュージックとおっしゃっていましたが、この曲からはその範疇に納まらない奥行きと横幅を感じます。それがこの歌詞と融合することで立体的な空間を生み出しているし、なおかつ「フラクタル」の主題歌にふさわしい、幸せな表面だけではない、奥底にある「何か」を強く感じさせてくれている気がして。
AZUMA ありがとうございます。そうなんです、そこなんだと思うんです。日常とか生きることって一面的ではなくて。笑いも涙も全部一緒になった歌詞を書きたいと思っていて、そのすべてを含んだ先にある幸福を音楽で描きたいんです。しかも、自分の体に直接働きかけてくる音楽はすごく信頼できる。だから、ダンスミュージックのフォーマットにこだわっているのかもしれません。
──そのエモーショナルさは、収録されている楽曲すべてからビシビシと伝わってきます。
AZUMA うれしいです。根本的な思いは、小学校の頃や中学校の頃につちかったものとそれほど変わっていなくて。自分の好きな歌を伝えて、人を感動させて、自分が感動する手段を、これからも追及していきたいですね。
AZUMA HITOMI LIVE "じっけんしつ vol.0" 開催決定!
日時:2011年4月4日(月)
OPEN 19:00 / START 19:30
場所:東京都 SHIBUYA BOXX
GUEST DJ : tomad(Maltine Records)
<ライブ参加方法>
下記対象店舗にて3月9日発売のAZUMA HITOMI「ハリネズミ」を購入した方に先着でライブ入場券が配布されます。
HMV 12店舗
HMVイオン浦和美園、イオン与野、ラゾーナ川崎、ららぽーと横浜、ルミネ池袋、立川、アトレ目黒、ららぽーと豊洲、ルミネエスト新宿、イオンモール武蔵村山ミュー、横浜ワールドポーターズ、モザイクモール港北
TOWER RECORDS 6店舗
タワーレコード新宿店、秋葉原店、渋谷店、横浜モアーズ店、吉祥寺店、池袋店
AZUMA HITOMI(あづまひとみ)
1988年東京生まれのシンガーソングライター/サウンドクリエイター。小学校高学年より曲作りを始め、中学生でデスクトップミュージック制作を開始。大学進学後にライブを中心とした本格的な音楽活動をスタートさせる。2010年には都市型フェス「KAIKOO POPWAVE FESTIVAL'10」に出演。同年12月にネットレーベル「マルチネ・レコード」より配信音源をリリース。2011年3月、アニメ「フラクタル」のオープニングテーマ「ハリネズミ」でメジャーデビューを果たした。