音楽ナタリー PowerPush - ASIAN KUNG-FU GENERATION

4人に立ち返ったアジカンが描く「Wonder Future」

7. Standard / スタンダード
[作詞:後藤正文 / 作曲:後藤正文、喜多建介]

──これはロスで録り直したそうですね。

Studio 606で録り直したら、よりいいものになるだろうっていう思いがあったんですよね。結果、かなりアメリカンな音になりました。

──力強くエネルギッシュな感じがより打ち出されていますよね。アレンジも若干変わってますし。

細かいところですけど、オリジナルと聴き比べると面白いと思います。

──歌詞は力強く前向きなものですね。

自分でもこの歌詞に勇気をもらうときがあります。何かを表現しようとしている人、何かを始めようとしている人たちへのエールになっていると思います。あと個人的には「僕」や「君」が出てこないのが気に入ってますね。

8. Wonder Future / ワンダーフューチャー
[作詞・作曲:後藤正文]

──貫禄と包容力のあるミディアムチューンですが、作ったときはどんなイメージを思い描いてましたか?

漠然と未来のことを考えてました。いいことも悪いこともひっくるめて未来のことを思い浮かべて……必然的に過去にも思いを巡らせたし。「生きる」ことを歌った1曲ですね。

──なるほど。歌詞の一節にある「ワンダーフューチャー 霧の先にどんな出会いが待ってるんだ 疲れ果ててしまうかな」というのは決して希望に満ちてはいないですよね。

悲しみについて歌ってもいるし、前向きな曲ではないんですよね。曲の中で、少年が沖に漕ぎ出すところを描いてるのが希望の部分ではありますけど。聴く人によっていろいろ解釈はあるでしょうね。

9. Prisoner in a Frame / 額の中の囚人
[作詞・作曲:後藤正文]

──これは美術館をモチーフにした1曲ですね。

美術館が好きなんですよ。人の作り出したもののフィーリングを感じるのが好きで。博物館も好きなんですけど、総じて作品や展示物に対するキャプションが増えている気がして。最近はどんな意図で、どんな文脈で作られたのか説明しないと作品が立ち上がってこないような構造になってるんじゃないかと。

──歌詞の序盤にある「流暢に語るキャプションを彼は冷笑に笑う」というところですね。

キャプションに埋め尽くされて、好きか嫌いかに回収できないような風潮になってるのが気になるんですよね。キャプションがあってこそ作品をより深く楽しめる面白さもわかりますけど、それが檻として働いてると感じる瞬間があって。僕らは言葉に縛られすぎてるんじゃないかとたまに思うんです。

10. Signal on the Street / 街頭のシグナル
[作詞・作曲:後藤正文]

──この曲は、ドライブ感のあるイントロをはじめ、非常にライブ映えしそうな1曲ですね。

キーが高いから歌うの大変そうだなとは思いますけど、作ってるときはライブのことは考えてませんでしたね。

──普段から曲を作るときにライブのことは考えない?

考えませんね。あくまでも曲を聴くリスナーに対して作ってますし、実際にライブで鳴らしてみないと反応はわからないですから。ただ、ライブでやってみての反応がどんなものなのか楽しみではあります。

11. Opera Glasses / オペラグラス
[作詞:後藤正文 / 作曲:後藤正文、喜多建介、山田貴洋、伊地知潔]

──ラストを飾るのは、再びメンバー全員が作曲者としてクレジットされている「Opera Glasses / オペラグラス」です。あまりアルバムのラストっぽくない、複雑な構成の実験的な曲ですね。

「ワンダーフューチャー」で終わるとバンドが解散しちゃうみたいだし、できすぎな気がして。この曲のアレンジは4人でよってたかってやった感じですね。ほかのメンバーが作ってきたメインリフの部分があまり好きじゃなくて、どうにかして自分の趣味をねじ込もうと思って、中盤にある「覗き込んでオペラグラスを」というフレーズから始まる展開をねじ込んだり(笑)。ラストっぽくはないけど、「街から街へと想いは連なって 網のように僕らの舞台を繋ぐんだろう」ってところがアルバムに入っている1曲1曲をつなぐように感じられるし。「その(曲の)中に君はいなかったかい?」ってリスナーに問いかけるような1曲になっていると思います。

──4人の共作であることを含めて、アルバムを総括するようなナンバーでもあると。ちなみに私は全編を通して「希望」が通底しているアルバムだと感じたんですが。

ああ、それは人によるかもしれません。ある人からは「辛辣な内容で、暗い気持ちになりました」って言われましたし。歌詞について言えば、自分が世の中をどう見ているのかが浮き上がってくると思います。一歩でも二歩でも前に進みたい人には、エールのように聞こえるだろうし。そのへんは自分としても聴いた人にどう響くか楽しみですね。

ニューアルバム「Wonder Future」 / 2015年5月27日発売 / Ki/oon Music
初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / KSCL-2587~8
初回限定盤 [CD+DVD] / 3996円 / KSCL-2587~8
通常盤 [CD] / 3146円 / KSCL-2589
アナログ盤 [アナログ] 3780円 / KSJL-6182
CD収録曲
  1. Easter / 復活祭
  2. Little Lennon / 小さなレノン
  3. Winner and Loser / 勝者と敗者
  4. Caterpillar / 芋虫
  5. Eternal Sunshine / 永遠の陽光
  6. Planet of the Apes / 猿の惑星
  7. Standard / スタンダード
  8. Wonder Future / ワンダーフューチャー
  9. Prisoner in a Frame / 額の中の囚人
  10. Signal on the Street / 街頭のシグナル
  11. Opera Glasses / オペラグラス
初回限定盤 DVD収録内容
  • 「Easter / 復活祭」ミュージックビデオ
  • 「Standard / スタンダード」ミュージックビデオ
  • アルバム「Wonder Future」のレコーディングに密着したドキュメンタリー映像
ASIAN KUNG-FU GENERATION
(アジアンカンフージェネレーション)

1996年に同じ大学に在籍していた後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)、山田貴洋(B, Vo)、伊地知潔(Dr)の4人で結成。渋谷、下北沢を中心にライブ活動を行い、エモーショナルでポップな旋律と重厚なギターサウンドで知名度を獲得する。2003年には、2002年にインディーズで発表したミニアルバム「崩壊アンプリファー」をキューンレコードから再リリースし、メジャーデビューを果たす。同年メジャー1stアルバム「君繋ファイブエム」を発表。2004年には2ndアルバム「ソルファ」でオリコン週間ランキング初登場1位を獲得し、初の日本武道館ワンマンライブを行った。

2010年には映画「ソラニン」の主題歌として書き下ろし曲「ソラニン」を提供し、大きな話題を呼んだ。2003年から自主企画によるイベント「NANO-MUGEN FES.」を開催。海外アーティストや若手の注目アーティストを招き、幅広いジャンルの音楽をファンに紹介する試みも積極的に行っている。2012年1月には初のベストアルバム「BEST HIT AKG」をリリースした。2013年9月にはメジャーデビュー10周年を記念して、横浜スタジアムで2DAYSライブを開催。2015年5月にロサンゼルスでレコーディングしたニューアルバム「Wonder Future」を発表した。