「あなたは私の事をどう思っているんだろう」

──アルバムを通して聴いて、最初の曲（「Aka」）と最後の曲（「自転車」）に共通のフレーズがあるのが気になったんですが。

「あなたは私の事をどう思っているんだろう」っていうところですよね。私もあとで知ったんです。気付いてなかったの（笑）。

──そうなんですか！ 意図的かと思っていました。この言葉はaikoさん自身の気持ち？

そうですね。私、普段から“もしも妄想”をめっちゃしちゃうんですよ。なぜかマイナス方面の。一番よく思うのは、廃業しなければならなくなったらどうしよう。

──ないと思いますよ（笑）。

あるって！ 本当にいつも心配なんです。仕事で関わる人もそうだし、ファンの皆さんもそうだし、恋愛もそうだし、「私のこと嫌いになってるかもしらん」って思っちゃうんです。だからそういうところが無意識に歌詞に出てしまったんだと思います。

──どうしてそう感じてしまうんでしょうね？

多分、育った環境が影響してるのかもしれないです。子供の頃、家庭環境が少し複雑で、周りの大人に思ってることが言えなくて。学校でははしゃいでるけど、家帰ったら部屋でずっとラジオ聴いてるっていう生活が中学、高校と続いたんです。そういう中で、愛されたいっていう願望がすごく強くなったのかも。

──でも、今は大人になって当時の自分が愛されていたことがわかるようになった。

はい。当時は「なんでなんだろう？」って思ってたけど、今は誰も悪くないと思ってるし、ああじゃなかったらこういう感情も知らないまま育ったかもしれない。そしたら、私は今の場所で歌を歌えてないですから。全くつらかった思い出ではないです。むしろ感謝してますね。

楽しい時間を作るには、“愛”がないと伝わらない

──そういう不安な気持ちの一方で、aikoさんって愛情も人一倍強いですよね。

なんかどこかで全部に命があると思ってるんです。あとやっぱり、そういう気持ちがないとモノや人ってつながっていかないと思うんですよね。音楽をやるにあたって、いろんな人がちょっとでも楽しいと思ってくれる時間を作るには、その"愛"っていう感情が一番初めにないと、伝わらない。それから前提として、自分の感情のメモリが動かないものをやっても仕方がないなと思うし。ちゃんと自分が納得した上でやりたいから。

──自分の活動に関しては厳しいほうだと？

かもしれませんね。これに関しては終わりがないと思いますよ。もっと丁寧にやっていきたいし、ハタチくらいの体力やったらもっとがんばれるのにって思います。全部自分の手が加わってないと嫌なんですよね。デビューしたての頃は自分でメディア用のチラシを作ってたんですよ。で、それ持ってラジオ局に行って、DJの人たちのロッカーに貼って宣伝してました。私もラジオDJやってたからわかるんですけど、1日に何十枚も似たようなチラシが届くわけだから、渡された人が面白いと思うものを作らないと、何回も見ちゃうようなパンチ効いてるものじゃないと。それをやり続けることに意味があるし、自分で責任も持たなあかんから、それで厳しくなるんです。

──完璧主義ですね。

ホンマですか？ でも私なんてまだおならプーやと思ってて。

──そんな（笑）。

私の目標とする完璧な人がおるんです。それは一緒にやってるプロデューサーとアレンジャーとエンジニア。音作ってる3大柱が超完璧主義なんです。イチからミックスをやり直すなんて普通やし、何時間もかけて録ったものをもう1回別の日にやりましょうとか言うし。たまに私は「ひぃー！」ってなるけど、誰も「えー？」って言わないし、そんな姿を14年ずっと見てるんで。そして、テレビに出て歌ったり、雑誌に載ったり、サイトに出させてもらったりするのって私だけやから、私の一言一言で伝わり方が違うって考えると、もっといろんなことできひんかと思うんですよね。