音楽ナタリー PowerPush - ACIDMAN
死を超えるアルバム「有と無」
ACIDMANがニューアルバム「有と無」を11月19日にリリースする。
生命や宇宙といった深遠なテーマを独自の音楽に昇華し奏でてきたACIDMAN。彼らにとって10枚目のアルバムである本作は、“死を超える”が大きなテーマになっているのだという。
今回は3人に、ニューアルバムについて、今の音楽シーンについて、そして彼らが目指すものについてを語ってもらった。
取材・文 / 柴那典 撮影 / 小原啓樹
「今年は死を超えたい」
──今回の「有と無」は“死後の世界”がテーマになっているということですけれども、何を発端にこのテーマを設けたのでしょうか?
大木伸夫(Vo, G) 最初からそういうテーマがあったわけじゃなかったんです。今回もいつも通り“命”のことを歌っていこうと思っていたんですけれど、急に“死後の世界”に興味を持ち始めて。
──死後の世界に興味を持ち始めたのはいつぐらいのこと?
大木 前のアルバム「新世界」が去年の2月に出て、それから数カ月後くらいだったと思います。興味が出てきてからは、ほとんどブレることなくそのテーマに沿って曲を作っていきました。
浦山一悟(Dr, Cho) 今年の年始に大木くんから届いたメールに、「今年は死を超えたいと思います」って書いてありました。
──すごい抱負が正月に届いた。
浦山 そう(笑)。「こっちも気合いを入れていかないといけないぞ」って。
佐藤雅俊(B, Cho) びっくりしましたね。「すごい年が始まった」と。
──その時点で大木さんの中では「こういうことをやるんだ」というイメージは固まっていた?
大木 そうですね。ただ俺、もともと「死後の世界」なんて信じてもいないし興味すらなくて、むしろちょっとバカにしてたぐらいで。でもいろいろ調べていったらとても濃くて深いし、かなりリアリティを感じたんですね。それで「一生かけて研究してもいいんじゃないかな」って。
死ぬことが怖くなくなってきた
──そう思うようになったのは、どういうところが大きかったのでしょう?
大木 そもそも俺が死について考えるのって、何かの影響でそうしているっていうよりも、“知りたい”って欲求があるからだと思うんです。この宇宙のことを知りたいし、世界のことを知りたいし、人間のことを知りたい……そう思っていろいろ探求してきて、その延長として死についても知りたくなった。今までは「人は必ず死ぬから、生を美しくするべきだ」と考えていたんですけど、死について考えているうちに生と死だけじゃない世界があるんじゃないかと思うようになりました。オカルト的な捉え方をされたら困るんですけど。
──なるほど。
大木 結局人間って死にたくないし、死んでほしくないって思っていると思うんです。自分が永遠に生きたいとは1ミリも思わないけど、人に死んでほしくはない。家族や友達が死ぬのはイヤだし、見ず知らずの人が死んだニュースを聞くのも、交番の「今日の死亡者数」って貼り紙を見るのもイヤ。でも死後の世界と向き合っていると、そういう感情が少し楽になる。ウチのばあちゃんも死んだんですけど、そのときに思ったより悲しみが少なかったんです。それで死について考えることが死の恐怖を超えるきっかけなるような気がしてきたんですよね。不思議な魔法のような感じ。死ぬことが怖くなくなってきた。
──もし大木さんがロックバンドや音楽をやってなかったとしても、そういうことを考えていたと思いますか?
大木 間違いなく考えていたでしょうね。音楽をやっていなくても今と同じことを考えて、いろんな本を読んで勉強していると思います。こういう哲学みたいなことの追求を始めたのって、バンドでデビューしてからで。それまでは単純に音楽が好きで、表現が好きで、アーティスティックなものが好きで……っていうだけだった。「生きる、死ぬ、宇宙みたいなことをテーマにしてみよう」みたいな軽い感じで。でも、どんどんそういうテーマに魅了されていって「これは面白い。やめられない」みたいになっていった。それが今中心になっているという感じです。
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- ニューアルバム「有と無」 / 2014年11月19日発売 / Virgin Music
- ニューアルバム「有と無」
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 3780円 / TYCT-69075
- 通常盤 [CD] / 3024円 / TYCT-69076
CD収録曲
- 有と無(introduction)
- 永遠の底
- EVERLIGHT
- Stay in my hand
- star rain
- EDEN
- 世界が終わる夜
- ハレルヤ
- en (instrumental)
- your soul
- 黄昏の街
- 最期の景色
初回限定盤DVD収録内容
scene of 有と無
- EVERLIGHT(Music Video)
- EVERLIGHT ~Animation Ver.~(Music Video)
- Stay in my hand(Music Video)
- 世界が終わる夜(Music Video)
- Document2014
ACIDMAN LIVE TOUR “有と無”
- 2015年2月6日(金)東京都 Zepp Tokyo
- 2015年2月8日(日)香川県 高松オリーブホール
- 2015年2月11日(水・祝)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2015年2月15日(日)沖縄県 桜坂セントラル
- 2015年2月20日(金)熊本県 熊本B.9 V1
- 2015年2月21日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
- 2015年2月28日(土)広島県 広島CLUB QUATTRO
- 2015年3月1日(日)岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
- 2015年3月6日(金)宮城県 Rensa
- 2015年3月8日(日)宮城県 BLUE RESISTANCE
- 2015年3月11日(水)福島県 いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場
- 2015年3月14日(土)北海道 Zepp Sapporo
- 2015年3月20日(金)新潟県 新潟LOTS
- 2015年3月22日(日)石川県 金沢EIGHT HALL
- 2015年3月28日(土)愛知県 Zepp Nagoya
- 2015年4月2日(木)台湾 The WALL台北
- 2015年4月4日(土)香港 MUSIC ZONE
- 2015年4月11日(土)大阪府 なんばHatch
- 2015年4月12日(日)大阪府 なんばHatch
- 2015年4月18日(土)東京都 日本武道館
ACIDMAN(アシッドマン)
1997年に結成された、大木伸夫(Vo, G)、佐藤雅俊(B, Cho)、浦山一悟(Dr, Cho)の3人からなるロックバンド。2002年に限定シングル3作(「造花が笑う」「アレグロ」「赤橙」)を連続リリースし、2002年10月にアルバム「創」でメジャーデビュー。2007年7月に初の日本武道館公演を開催し、2009年のアルバム「A beautiful greed」発表後には、2度目の日本武道館単独公演を実施する。生命や宇宙をテーマにした独特の詞世界、静と動の両面を表現する幅広いサウンド、映像とリンクした演出を盛り込んだライブなどが高い評価を得ている。2013年6月、自らのマネジメントオフィス「FREESTAR」を設立し、2014年11月には10枚目のアルバム「有と無」をリリース。2015年2月にはアルバムを携えた全国ツアーをスタートさせ、ツアーファイナルは5度目の日本武道館公演となることが決定している。