ナタリー PowerPush - 阿部真央
愛と感謝を込めた自信作「戦いは終わらない」
前作「素。」から1年。阿部真央の4thアルバム「戦いは終わらない」が完成した。初のセルフプロデュースに挑戦した本作を指して、彼女は「今後の基盤となるアルバムができた」と語る。音楽に向かう最大のモチベーションになっているというファンへの特別な思い、自分にとっての「戦い」、そして本作を作り上げたことで得た確信。阿部真央の「今」をじっくり語ってもらった。
取材・文 / 三宅正一(ONBU)
ファンに愛と感謝を伝えたい
──思いを届けることに強い力が注がれたアルバムだと思いました。完成した手応えはどうですか?
すごく好きなアルバムになりましたね。今、言ってもらったように、ファンの人に自分の気持ちをしっかり伝えたいと思いながら作ったアルバムで。そういうモードで曲を書いたのは、初めてでした。今回は、12曲中10曲をこのアルバムのために書き下ろしたんです。過去に書いた曲は「側にいて」と「18歳の唄」だけですね。
──これまでのアルバムはストック曲が数多く収録されていて。前作「素。」のリリースタイミングで話したときに「ストックが尽きました」と言っていたのをよく覚えてます。
そうなんですよ。それもあって、このアルバムは今の阿部真央が全面に出たんです。今年に入ってから、私の精神状態や音楽活動に対する考え方がかつてないくらいポジティブで、ピースになって。それから、ファンの人に感謝を伝えたい、リスナーに元気になってほしいという気持ちがより強くなっていったんですよね。
──ポジティブになれた要因はなんだったんですか?
きっかけは特にないんです。ただ、今年の始めにこのアルバムのリード曲であり、タイトルにもなっている「戦いは終わらない」という曲ができて。
──やはりこの曲の存在は大きいですよね。
大きいですね。この曲から全てが始まった感じがあって。今作は、セルフプロデュースさせてもらったんですけど。
──それも大きなポイントですよね。
はい。セルフプロデュースに至ったのも「戦いは終わらない」を書けたからこそで。デビューからここまで3年間やってきた自信と、ファンの人に対する感謝と愛情がどんどん深まってきていて。そんな中「戦いは終わらない」という曲が書けて。今だったら自分がどういう作品を作りたいのか明確なビジョンを持てるし、それをスタッフや参加していただくアレンジャー、ミュージシャンの方々に伝える術も身についてきたので。それで、自分から「セルフプロデュースさせてください」って申し出たんです。
たかがTwitter、されどTwitter
──これまで何回かインタビューさせてもらって、そのたびに「自分に自信がない」と言っていた真央さんですけど。
はい(笑)。
──今は違う?
もちろん、人間としてとか、女性としてはまだまだですよ。でも、阿部真央というアーティストの自信はファンの人が持たせてくれている実感はありますね。「阿部真央の変化が見たいんだ」とか「阿部真央がどういうことを感じているのか知りたいんだ」って言ってもらえる時点で、存在が認められている感じがするじゃないですか。それはアーティストとしてこの上ない幸せだから。そういった意味においては、自信もついてきているんだと思います。
──最近になって特にファンの人の声をストレートに受け止められるようになったんですか?
これまで以上にみんなの思いを信じられるようになったんですよね。それは、Twitterが大きいと思います。たかがTwitterかもしれないけど、私にとってはされどTwitterで。何かを発信すると、すぐにリアルな反応が返ってくるTwitterは私にとって大事なコミュニケーションツールになっていて。
──ネガティブな反応が来ることだってあるでしょう?
もちろんあります。
──そこに引っ張られることはない?
去年はわりとネガティブなほうに引っ張られていたんですけど、今年からそんなに引っ張られなくなったんですよね。「こういう意見もあるんだな」って思うくらいで。
──それも自信が芽生えたから?
そうですね。このアルバムを完成させたあとは特にそうです。自分の中に揺るぎないものがあるから。
対誰かではなく自分との戦い
──話を戻すと「戦いは終わらない」ができて、そのあと順調に曲作りは進んでいったんですか?
そのあとに、シングルカットした「世界はまだ君を知らない」ができて。この曲ができて、改めて自分のモードを確認することができました。
──このアルバムの核になっているメッセージ性の強い2曲ですね。「戦いは終わらない」は内に向かった曲だけど、「世界はまだ君を知らない」は外に向かっている。でも、その核は同じで。
うん、そうですね。ここで言っている「戦い」というのは、対誰かではなく自分との戦いで。自分がこうしたい、こうありたいという思いを貫いていくには、絶対に守って向上させていかなければならないものがあるんですよね。
──そのための戦い。
そう。私にとってそれは楽曲制作でもあり。あきらめるのは簡単ですけど、それでは自分が本当にやりたいことは成し遂げられないから。その上で「世界」に向かっていくというか。
──そのメッセージをストレートに描くことが一番リスナーに伝わると思った?
そうですね。自分で歌詞を書きながら、私もこういう人でありたいと思った。自分をあきらめないで信じる人に。私がもし音楽の仕事をしてなくて、世の中にポンって放り出されたら、今の時代では未来に対する希望を持ちづらいし、なかなか自分で歌詞に書いてるような気持ちになれないと思う。でも、おこがましいですけど、曲を聴いてくれた人にこういう気持ちになってほしいという思いがすごくあって。今、私は22歳で。私たちの世代って、ゆとり教育とかに振り回されてきたし、自分の気持ちを表現するのがうまくないと思うんですよね。
──ゆとり云々の弊害っていろんなところで語られているけど、当事者として振り回された世代という実感が強い?
うん。成長過程の中で、急にゆとり教育が始まったと思ったら、終わって。外の世界ではインターネットを中心にコミュニケーションのあり方がバーッと広がって。私たちの世代って統一感がまるでないし、それによってすごく冷めた視点を持つようになったと思っていて。でも、青臭いかもしれないけど、本当に大事なのは、昔から誰かが歌ってきたようなことだったりするのかなって思うんです。それを現在22歳の私みたいな人間が歌うからこそ、伝わるんじゃないかと信じていて。私は音楽をやりながら、本気で願って努力すれば希望は叶うと信じているから。その姿勢を貫く意味は大きいなと思ってます。
──なるほど。今までの真央さんだったら、そこまで言い切れなかったと思う。
ああ、確かにそうだなあ。変わったんですね、私。
CD収録曲
- How are you?
- 戦いは終わらない
- 世界はまだ君を知らない
- 春
- 君を想った唄
- 側にいて(piano ver.)
- 嫌われてないかな
- Sunday morning
- プレイボーイ
- ここにいて
- 18歳の唄
- for you
初回限定盤DVD収録内容
- 側にいて (music clip)
- 世界はまだ君を知らない (music clip)
- 「世界はまだ君を知らない」&「戦いは終わらない」(ジャケット メイキング)
- 世界はまだ君を知らない(music clip メイキング)
- あべまおらじお【番外編】メイキング
- NHK「春ナビ」メイキング
- 側にいて(music clip メイキング)
阿部真央(あべまお)
1990年1月24日生まれ。大分県出身。2009年1月にアルバム「ふりぃ」でポニーキャニオンからメジャーデビュー。等身大の歌詞とポップなメロディ、表現力豊かなボーカルが、同世代を中心に支持を集める。2010年1月に2ndアルバム「ポっぷ」、2011年6月に3rdアルバム「素。」をリリース。全国ツアーや夏フェス出演、アヴリル・ラヴィーンのサポートアクト起用など精力的なライブ活動を展開する。2012年6月に4thアルバム「戦いは終わらない」を発表し、自身初の全国ホールツアー「阿部真央らいぶNo.4」を開催する。