新ガールズユニット・名称非公開が始動した。メンバーは元BiS、NARLOWのムロ葉菜子、YouTuber / TikTokerの古森もぐ、BiSの3期メンバーだったヒューガー、歌い手のいかさんの4人で、楽曲を手がけるのはサウンドプロデューサーとして活躍するANCHOR。「ANCHORの曲を世に広めたい」という思いを抱いたムロがANCHOR本人に声をかけたことが結成のきっかけだ。
異なるキャリアやバックグラウンドを持つ4人は、何に共鳴し、ともに歩むことになったのか。音楽ナタリーではグループの始動に合わせてメンバーにインタビューし、結成の経緯や、「中指立てろ」など歌詞な強烈が並ぶ初の楽曲「事勿れ主義イズダウト」について話を聞いた。
取材・文 / 森朋之
ANCHORの曲はきっとほかの誰かにも必要
──名称非公開の初インタビューということで、まずは自己紹介からお願いします。
ムロ葉菜子 ムロ葉菜子です。アイドルグループのBiS、NARLOWで活動していました。
いかさん いかさんです。ふと思い立ってインターネットに歌を投稿し始めたのが中学2年のときで、そこから動画投稿者として活動していく中でEXIT TUNESというレーベルにお声がけいただいて。コンピレーションアルバムに参加したりツアーをやったり、歌い手として長く活動してきました。その後、役者やモデルの仕事も始めて、今では「自分はこうです」と紹介するのが難しいくらいマルチにやってます。
ヒューガー ヒューガーと言います。BiSの第3期メンバーとして2年半くらい活動していました。グループは今年1月に解散してしまったんですが、先輩のムロさんに誘っていただいて、今は名称非公開のメンバーとしてここにいます。
古森もぐ 古森もぐです。私は歌ったり踊ったりしていた経験はないんですけど、小学生の頃からずっとそういうことに憧れがあって。紆余曲折あり、結局活動ができないままだったんですけど、このままじゃダメだなと思って、20歳のときにSNSでの発信を始めました。“女子高生あるある”とかコメディ系の動画を中心にして、いろんなSNSに投稿しています。
──この4人が名称非公開として集まった経緯は?
ムロ NARLOWの活動は前期と後期に分かれていたんですけど、前期の楽曲を手がけていたのがANCHORさんで。すごく簡単に言うと、私がANCHORさんの曲を世に広めたいと思ったんですよね。まずANCHORさんに「新しいグループを始めませんか?」と相談したことから、このプロジェクトの準備が始まりました。
いかさん 僕はANCHORさんと以前からつながりがあって。「ムロ葉菜子という人がいて、『一緒にやりませんか?』と言ってきたんだよ」という話も聞いてたんですよ。アーティストからプロデューサーにアプローチしてくるって、なかなかないよねって。
──ムロさんが「ANCHORさんの曲を広めたい」と思ったのは、どうしてなんですか?
ムロ NARLOWのときも感じていたんですけど、ANCHORさんの楽曲は人の心に寄り添うような印象があって。人それぞれの気持ちや生き方、その人自身が決めたことに対して否定も肯定もしないんですよね。そのスタンスは自分に必要なものだと思ったし、きっとほかの誰かにも必要なんじゃないかなって。
──いかさん、ヒューガーさん、古森さんも当然、ANCHORさんの楽曲に共感したからこそ、このグループに参加したんですよね。
いかさん はい。自分はANCHORさんに声をかけてもらいましたが、ずっと前からANCHORさんの曲が好きだったし、勝手にカバーもさせてもらっていて。名称非公開にお誘いいただいて、直近のANCHORさんの楽曲のプレイリストを送ってもらったんですけど、夜中にヘッドフォンで聴いてるときにポロポロ涙が出てきたんです。気持ちがかなり落ちていた時期だったから、余計に刺さったのかもしれないですけど。
──落ちていたというのは、どういう状況だったんですか?
いかさん どこまで言っていいのかな……。まず、僕はいろんなものを自分の中に閉じ込めてしまうところがあって。自分の心の奥にあるものをできるだけ表に出さずに生きてきたんです。それがどんどん溜まってきて、落ちていたときは「全部終わりでいいか」みたいな気持ちだった。ずっと音楽に生かされてきたけど、「本当に音楽が好きなのかな」と思う自分もいたし、けっこうグチャグチャでした。それでも「歌って生きていきたい」という気持ちもあって。このグループに参加できるのはすごく光栄だし、今の自分だったら胸を張ってANCHORさんの曲を届けられるかもしれないなと思いました。
本当に歌いたいことを歌える
ヒューガー 私は何から話していいかわからないですけど、まず、ムロさんからお話をいただいたときに「やりたいです」ってすぐに言ったんですよ。
ムロ うん。
ヒューガー 人生の節目節目で、なぜか直感が冴えることがあるんですけど、そのときもまさにそうで。その日のうちに事務所に連れていってもらって、ANCHORさんにもお会いしました。そこで聴かせてもらったプレイリストに「大人に為ってしまった行儀良いわたしへ」という曲が入ってたんです。前から知っていた曲なんですけど、改めて歌詞を読みながら聴いていると、自分の心の中で「ここは開けないようにしておこう」「外に出さないようにしよう」と思っていた部分に沁み込んできて、気付いたら泣いていました。自分でもびっくりしつつ、「ここだったらヒューガーとしてではなく、本名の自分が思ってることを歌える」と思ったんです。
──タイミングもよかったんでしょうね。BiSの解散したあとのヒューガーさんのモチベーションと名称非公開のコンセプトが合っていたというか。
ヒューガー いい巡り合わせをいただいたと思ってます。BiSが1月に解散して……ムロさんには「いろんなところから誘われてるよね」と言ってもらったんですけど、そんなことは全然なくて、「どうしようかな」と考えていた時期だったんです。私はBiSに入りたくてWACKのオーディションを受けたし、解散したからといって「次はここに入りたい」みたいな考えにはまったくならなくて。手当たり次第にオーディションを受けるなんてこともなかった。ただ、1人で歌うのもいいけど、やっぱり誰かと一緒にやりたいなと考えていたんです。みんなで一緒に何かを成し遂げるのが好きなんですよね。ムロさんはBiSの先輩だし、ずっと憧れていた人だから「一緒に音楽をやろう」と言ってもらえたのは本当にうれしかったし、運命的だなと思いました。
古森 私は正直に言うと、これまでANCHORさんの曲をがっつり聴いたことはなかったんです。アニメの主題歌とかは知っていたんですけど、しっかり聴いたのは名称非公開のお話をいただいてからで。もちろん「本当にカッコいいな」と思ったし、歌詞もすごく刺さりました。何よりもまず、ムロちゃんの「ANCHORさんの曲を必要な人に届けたい」という思いにめっちゃ共感しました。
ムロ 最初に声をかけたのが、もぐちゃんだったんですよ。私が「ANCHORさんと一緒にグループを作りたい」と思ったとき、ヒューガーはBiSとして活動していたし、いかさんとはまだ知り合ってなくて。
古森 声をかけてもらえたのもうれしかったし、さっきも言ったように、私は小さい頃から歌うことへの憧れがあって。音楽をやりたいとずっと思っていたけど、そういうことを話せる人が周りにいなかったから、ムロちゃんと話していて、こんなに熱い人と出会えたことが本当にうれしくて……(泣き始める)。
ムロ いろいろ思い出しちゃうよね。わかるよ。
古森 ごめんなさい……ムロちゃんやみんなとの出会いに感謝したいし、自分の過去も背負いながらがんばっていきたいと思っています。
──とにかく音楽に対する思いが強かったんですね。
古森 それもそうだし、グループで活動したいという気持ちもありました。悔しいとか悲しいとか、楽しいとかうれしいとか、感情って誰かと共有することで実感に変わると思っていて。私はずっと1人で活動してきて、人と感情を共有することがなかったから、悲しさや悔しさがずっと残ったまんまだったんですよ。メンバーと一緒に音楽ができれば、ステージというオフラインの空間でいろんな気持ちを共有できるはずだし、誰かの孤独にも寄り添えるんじゃないかなと思って。
ムロ もぐちゃんはずっとアイドルになりたいと言っていて。今はフォロワーや登録者数などの数字さえ持っていればどんどん声がかかるけど、もぐちゃんが今までアイドルにならなかったのは、やりたいことがしっかりあったからだと思うんです。そういうもぐちゃんに共感してもらえたのは私もうれしいですね。
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「クソ野郎」という気持ちをガソリンにして生きるしかない