コミックナタリー PowerPush - はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA」

プロデューサー東村アキコ、激賞! ヅカオタマンガの誕生と魅力語る師弟対談

宝塚歌劇団を中心に日々を送る人々、ヅカオタたちのおかしな日常を綴った「ZUCCA×ZUCA」。何かに夢中になったことがある人なら誰しも共感でき、オタ気質保有者の笑いのツボを押しまくる注目作だ。

コミックナタリーでは最新5巻の発売に合わせ、はるなと東村アキコの師弟対談をセッティングした。作家と元アシスタントという言葉ではくくれない両者の深い関係を振り返りつつ、はるなの持つ独特な作家性を掘り下げていく。

取材/大山卓也 文/井上潤哉 編集/唐木元

はるなさんの家、宮崎の実家の、めっちゃ裏なの(東村)

──まずは、はるな檸檬さんと東村アキコさんの関係から伺っていきたいんですが。

はるな檸檬が宮崎の絵画教室で、初めて東村アキコに出会った日の図。イラストははるなの描き下ろし。

東村アキコ もともとは宮崎の実家が近所なんですよ。はるなさんの家、めっちゃ裏なの(笑)。で、私が金沢の美術大学を出たあと、就職先がなくていったん宮崎に帰って、絵画教室でバイトしてたんです。「かくかくしかじか」(集英社)に出てくるあそこで。そのときの教え子なんですよ。

はるな檸檬 (通ってたのは)高校2年から卒業まで……。

東村 高2で入ってきて、受験まで教えてた子です。

はるな それで美術系の大学に4年行ったんですけど、就職活動がうまくいかず。何でもいいからって東京に出てきて、すぐ(東村)先生に「なんかわかんないけど来ちゃいました」って連絡したんです。ご出産されたばかりのタイミングで、生まれたてのごっちゃんを病院に見に行ったりしました。

──それでアシスタントに入ったんですか。

はるな いや、半年くらいは事務みたいなバイトをしていて。冬になるくらいに「もう辞めようかと思ってる」みたいな話をしたら、「じゃあアシスタントに来れば」って、入れていただいたんです。

東村 「(ママは)テンパリスト」とかに、黒髪ロングで目が吊り上がったかわいい子がよく出てくるんですけど、それがはるなさんですね。ごっちゃんが赤ちゃんのとき、私がいちばん大変だったときからずっと(アシスタントに)入ってもらって。でもそのときはマンガ描いてなかったよね。イラストレーターになりたいって東京出てきたんだもんね。

なんかつらいけどいつも笑ってた記憶があります(はるな)

「ZUCCA×ZUCA」1巻のおまけマンガより。

はるな 絵が描ける仕事ならなんでもいいって思ってたんです。けど、本当に仕事がなくって。先生の超人的な仕事ぶりを間近で見てたので、マンガ家にだけは死んでもなれないと思ってたんです。当時「ひまわりっ~健一レジェンド~」を週刊でやってたんですけど、子育てもあって、なんかもう先生が、疲労のあまり椅子に座る気力もなく、床に這いつくばってるみたいな(笑)。

東村 床で描く!みたいな。今はアシスタントさん増やせたからまだ楽になったけど、そのときは1人か2人かしか雇ってなくて。2人で「ひまわりっ」と「(きせかえ)ユカちゃん」と「テンパリ」やってた時代です。もう毎日毎日締め切りだからアシスタントさんもすごい徹夜させてたし、ほんとに大変だったと思います。地獄みたいな日々だったから、はるなちゃんは地獄を一緒に戦ってくれた戦友というか。

はるな でもなんか、楽しかったですね。徹夜明けでもうヨタヨタなのに、みんなで環七にラーメン食べに行ったり、明け方やってる回転寿しとか。なんかつらいけどいつも笑ってた記憶があります。

東村 ほんとにもう、はるなさんと、もうひとりのねぎっこっていう子と、ふたりがごっちゃんをすごい面倒みてくれて。ご飯食べさせてくれたし、オムツまで替えさせたり、そのおかげでなんとか私もこう(執筆できてた)。

──家族みたいな感じですか。

東村 家族ですね、完全に。もう妹のような感じで。だから「この子の将来どうしようか」とかはずっと思ってましたね。マンガ家志望の子なら「描け描け」って言って、マンガ描かせればどうにかなるんだけど、そうじゃないから私がもう「やめろ」って言ったんです。マンガ家になりたいんじゃないだったら、ここにいてもあんま意味がないっていうか……。

はるな 「飼い殺しになっちゃう」って。

はるな檸檬「ZUCCA×ZUCA」5巻 / 2013年4月23日発売 / 990円 / 講談社
「ZUCCA×ZUCA」5巻

業界初!? ヅカオタ(宝塚オタク)漫画!!
何かにハマったことのある方にはおススメです。
あーーある、アル、aruのオンパレード!
レッツ・エンジョイ・ヅッカヅカ!

はるな檸檬(はるなれもん)
はるな檸檬

1983年3月23日宮崎県生まれ。2005年より東村アキコのアシスタントを務め、東村のすすめで鑑賞したことから宝塚歌劇団にのめり込む。その後東村の助言を受け、宝塚歌劇団マニアを題材にしたコメディ「ZUCCA×ZUCA」で2010年にデビュー。モーニング(講談社)の公式サイトで連載中。

東村アキコ(ひがしむらあきこ)
東村アキコ

1975年10月15日宮崎県生まれ。1999年、ぶ~けDX NEW YEAR増刊(集英社)にて「フルーツこうもり」でデビュー。2001年、Cookie(集英社)で「きせかえユカちゃん」の連載を開始。ファッショナブルな登場キャラクターとライブ感のある話作りで人気を集める。2006年、モーニング(講談社)にて自身がデビューするまでの様子を家族のエピソードとともに描いた「ひまわりっ~健一レジェンド~」の連載を開始。その他代表作に「ママはテンパリスト」「主に泣いてます」など。Kiss(講談社)にて連載中の「海月姫」は、第34回講談社漫画賞を受賞した。また、ナタリーのマスコットキャラクター「ナタリー信子」と「マシュー」は同氏による描き下ろしである。