コミックナタリー Power Push - 「遊☆戯☆王」

作品誕生から原作のその後を描く劇場版まで「遊☆戯☆王」の20年

1996年から2004年にかけて週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載された、高橋和希「遊☆戯☆王」。派生したカードゲームが現在でも世界中で人気を博し、新作アニメやスピンオフも制作され続けている同作が今年、連載開始から20周年を迎えた。

コミックナタリーではこれを記念し高橋へのインタビューを実施。「遊☆戯☆王」の成り立ちから、20周年に合わせ公開される劇場版「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」の裏話、約12年ぶりに週刊少年ジャンプに掲載された「遊☆戯☆王」の新作エピソードについて語ってもらった。

取材・文 / 宮津友徳

高橋和希インタビュー

当初は格闘もののマンガを描こうとして

「遊☆戯☆王」のカラーカット。

──「遊☆戯☆王」は今年連載開始から20周年を迎えました。まずは今の率直なお気持ちをお伺いできますか。

たくさんのファンの皆さんに支えられて、20周年を迎えることができました。この場を借りて、心から感謝したいと思います。アニメになったのももちろんうれしかったですし、カードゲームがこれほどまでにヒットするとは考えてもいませんでした。連載当初の僕自身に教えてあげても絶対に信じないでしょうね!

──「遊☆戯☆王」といえば、カードゲームでのバトルが象徴的ですが、序盤はカードに限らず毎話新しいゲームが登場して、闇遊戯が悪人と戦っていましたね。こうした1話完結のスタイルはどのように生まれたのでしょう。

「遊☆戯☆王」第1話より。悪行を重ねる風紀委員・牛尾に、闇遊戯は闇のゲームを持ちかける。

週刊少年ジャンプでの連載を目指していた当初は、格闘ものを描こうと考えていたのですが、当時、自分自身も格闘ゲームにハマっていて、ユーザー自身が格闘を体験できてしまうゲームにマンガは勝てないなと思いました。そこで、腕力を持たないいじめられっ子の主人公が、いろんな“ゲーム”で悪を倒すというコンセプトを思いついたわけです。主人公と敵が対面して闘うアナログゲームなら面白くなるだろうと。ただ、週刊連載で新しいゲームを考え続けるのは本当に大変でした(笑)。

最も想像力を刺激するのはエクゾディア

──その後、物語は「マジック&ウィザーズ」を中心に展開されるようになります。このカードゲームは単行本の2巻で初めて描かれた後、4巻で再登場していますね。

「マジック&ウィザーズ」の初登場は第9話。

連載を続ける上で、やはり一本筋の通せるゲームが必要と感じ、反響の大きかったカードゲームを描くことにしました。当初はモンスターを描くのが楽しかったですが、数限りなく登場するのでだんだんつらくなっていきました。カードのルールなどは今読み返してもはちゃめちゃすぎて、ビックリしてしまいますね!(笑) ただ本音を言うとOCG(オフィシャルカードゲーム)が出たことにより、マンガのデュエルが描きづらくなったのは確かですね。曖昧な部分を残しておかないと、ドラマチックな演出がしづらくなるからです。

──なるほど。カードが発売されたあと、原作でもルールがより精緻になった印象があります。やはりOCGが原作に与えた影響は大きかったんでしょうか。

当時からOCGは流行していましたが、連載中はそこはあまり意識せず、登場する人物をしっかり描こうと考えていました。カードはあくまでもツールであり、キャラクターを立たせてストーリーに興味を持ってもらうことが、作品として重要なことだと思っています。

「DEATH-T」での闇遊戯と海馬の決闘シーン。

──確かに「遊☆戯☆王」に登場するデュエリストは、どれも印象に残るキャラが多いです。物語を振り返ってみて、思い出深いキャラやエピソードといえば?

思いの強いキャラクターといえば海馬瀬人でしょうか。少年マンガにおいてライバルの存在は大切ですから。また「遊☆戯☆王」のカードの中でも、最も想像力を刺激するのはエクゾディアだと思っています。ポーカーでいうとロイヤルストレートフラッシュのような絶対勝利を確定させる役がある点が、「遊☆戯☆王」のいいところかなと。だから最初に海馬の青眼を倒すデュエルが描かれた、「DEATH-T」のエピソードはとても気に入っています。

「Vジャンプ6月特大号」 発売中 / 550円 / 集英社
「Vジャンプ6月特大号」

劇場版「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」公開直前号となるVジャンプ6月特大号は、特集冊子や付録のOCGカードなどが付属する「遊☆戯☆王」づくしの一冊に。
付属のOCGカードの「チョコ・マジシャン・ガール」は、高橋和希がデザインしたモンスター。特集冊子では、劇場版のストーリーについての初公開情報をはじめ、関連イベントやキャンペーンなど、映画に関するあらゆる情報を網羅。さらに映画に登場するカードをも紹介している。

「『DVD付分冊マンガ講座 ジャンプ流!』vol.8」 発売中 / 1393円 / 集英社
「『DVD付分冊マンガ講座 ジャンプ流!』vol.8」

「DVD付分冊マンガ講座 ジャンプ流!」第8号では「遊☆戯☆王」の高橋和希を特集。付属冊子「ジャンプ流!秘伝ガイド」には高橋へのインタビュー、「ジャンプ流!DVD」にはカラーイラストの作画風景などを収録。このほかカラーの複製原画、「遊☆戯☆王」のワンシーンを模写用紙にした「ジャンプ流!モ写用紙」、描き下ろしイラストを使用した「青眼の白龍」のOCGカードも付属している。

劇場版「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」2016年4月23日ロードショー
劇場版「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」

千年パズルを完成させたことにより、闇遊戯という、もう1人の人格を呼び覚ました武藤遊戯。 海馬コーポレーションの社長にして決闘者の頂点に君臨する海馬瀬人や、仲間たちと数々の死闘を繰り広げたが、過去との因縁により、もう1人の自分との闘いを余儀なくされ、遊戯と闇遊戯はついに決別し、別々の道へ旅立つこととなった──。
そうして、闇遊戯との最後の決闘を終えて、日常を取り戻したかに見えた遊戯たち。 その前に現れた謎の少年・藍神。そして、世界中で次々と起こる謎の失踪事件。 ただひたすら千年パズルを探し求める海馬。 すべてのピースが合わさるとき、再び決闘の幕が切って落とされる!

出演

風間俊介 津田健次郎
花澤香菜 日野聡 / ジャングルポケット
齊藤真紀 高橋広樹 近藤孝行 竹内順子 松本梨香
ケンドーコバヤシ
林遣都

高橋和希(タカハシカズキ)

高橋和希

1963年10月4日東京都生まれ。1990年に週刊少年ジャンプ(集英社)にて読み切り「闘輝王の鷹」を発表して以降、同誌を活躍の場とし、1996年に「遊☆戯☆王」の連載をスタートさせる。同作はアニメ化やゲーム化も果たし、派生したカードゲームは世界中で人気を博している。「遊☆戯☆王」の連載終了後には、シリーズ作品の原案や監修を担当。2016年、「遊☆戯☆王」の生誕20周年に合わせ、自身が製作総指揮を務める劇場版「遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS」が公開される。また同年には約12年ぶりとなる「遊☆戯☆王」の新作エピソードも週刊少年ジャンプに掲載された。

©高橋和希 スタジオ・ダイス/集英社
©高橋和希 スタジオ・ダイス/2016 劇場版「遊☆戯☆王」製作委員会