コミックナタリー Power Push - 柳内大樹「新説!さかもっちゃん」

デフォルメとリアル絵が交錯する実験作 龍馬愛に溢れた入魂のギャグマンガ

とにかく新しいことをやりたかった

──「さかもっちゃん」を初めて読んだときは、4コママンガかと思って読み始めたら、急にキャラクターがリアルタッチになったりして……。「何だこのマンガは!」と驚きました。

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驚いたでしょ。とにかく新しいことをやりたかったんですよね。オリジナリティがないと言われてる今のマンガ界で、とにかく新しいものとは何だろうってずっと考えてて。まあ、こういう形式が本当に新しいかって訊かれてもわからないけど、僕の中では新しいような気がしてるんです。

──こんなデフォルメ絵を描かれるというのも意外でした。

たぶんほかの先生も、上手な絵が描ける人ってデフォルメ絵も描けると思うんですよね。ただメリットがないからあんまりやらないだけで。

──新しいことをするにしても、どうしてギャグマンガにしたんですか?

まあ単純に、連載始める時点で隔週連載の「ギャングキング」と、月刊連載の「ドリームキング」を抱えてて。ヤングジャンプは週刊だし、仕事量的にショートじゃないと無理だなと思ったんですね。それで6ページのギャグを描くことにしたんです。

──6ページで短い分、楽なんじゃないかと踏んだわけですね。

そう。ところがやってみたら、めっちゃくちゃ難しくて。描きたいことがいっぱいあるから、6ページ分まで削るのが大変。当初バーっと思いついたことを全部描くと18ページくらいになる。それを6ページまで削ると、いったん全然面白くなくなるんですよ。当然それじゃまずいんで、今度はさらに面白いと思えるように6ページの中で試行錯誤する。もう、素直に最初から18ページでやってたほうが楽だったかもしれないと思うくらいしんどいですわ。4コマとリアル絵の使い分けにしても、始めは4コママンガの部分をギャグ要素として使ってたんですけど、最近は展開を早めるために4コマを使ったりしてます。4コマにするとポンポン、とスムーズに話が進んでいくんで。真面目バージョンには、ぐっとこらえたりするシーンが必要になってくるので、そこでページを使ってしまった分、4コマで助けられたりする。

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──スピード感を出すために4コマを使うんですね。

当初の僕のやりたかったこととは違うんですけどね。4コマと真面目バージョンを、シリアスとギャグとでちゃんと使い分けたかったから。そういうところは妥協というか。でもまあ、実験ですね。いろいろ試してみないと。

──インド人の女性が出てくるあたりから、1話完結ではない続きもので、しかもどんどんシリアスな展開になってきていますよね。もはや最初と最後しかギャグコマがないっていう。

担当さんが、「やっぱり柳内さんの良さは真面目な“アツさ”ですよ!」って洗脳するかのごとく言ってくるんで……(笑)。でもいろいろ試せればいいなと思ってます。6ページだからこそ暴れられるっていう利点もありますしね。変にルールを決めたくない。連載当初は1話につき1カ所でもいいから4コマいれなきゃってこだわってたんですけど、もういいやって。そのうちギャグコマが1コマもなくなっちゃうかもしれない。それでもいいくらいですね、もう。

週刊ヤングジャンプ連載 / 愛蔵版コミックス「新説!さかもっちゃん」(1) / 2010年7月16日発売 / 定価:780円(税込) / 集英社 / ISBN:978-4-08-782289-2

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あらすじ

坂本龍馬19才、剣術修行の旅に出る! 4コマギャグとリアルマンガで「新説!」の名に違わぬ新しい龍馬をゆる~く楽しく、格好よく描く、幕末青春ギャグストーリー。勝海舟、吉田松陰、岡田以蔵に高杉晋作……有名人多数登場!! こんな龍馬、見たことねェ!!!

柳内大樹(やなうちだいじゅ)

柳内大樹

1975年生まれ、富山県出身。1995年、ヤングマガジンエグザクタ(講談社)にて「別天地」でデビュー。その後、ヤングキング(少年画報社)にて代表作「ギャングキング」を連載。現在単行本累計760万部突破の大人気作品に。2010年1月、斬新なアイデアとマンガ技法をもとに、週刊ヤングジャンプ(集英社)にて「新説!さかもっちゃん」連載開始。新しい坂本龍馬像、新しい幕末青春マンガを執筆中。